【私小説】あわれな非日常 20100918 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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故あってか、その家では、かなり髪の薄くなった男が家事をしているようだった。

家には子どもがいるが、祖父と孫というには、男が若過ぎるから、おそらくかなりの年になってから授かった子でもあるのだろう。







うわあ、貴族の料理みたいだね。


子どもが、目を輝かせながら言った。

スーパーで安売りされていた牛肉。
タレの方が値が張る。

300グラムくらいの、ミディアムレア。



うわあ、旨い。

それにやわらかい。





まだ中学生になったばかり。はや160センチメートルを超えたが、体重は49キログラムしかない。
全身が筋肉という感じで、BMIの値はマラソン選手並みだ。








いいか、フォークはこう持つんだぞ。


老人になりかけの男が、聞こえないため息を吐きながら言った。




こんな食事、毎日できたらいいね。




あっというまに、秋が駆け込んできた。


夜風が肌寒いくらいだ。



しかし、まだまだ冬はこれからである。





すごく旨い。
味噌汁も旨い。

毎日、こんなの食べられたらいいね。

子どもが、また同じようなことを言った。






遠くで、季節はずれの風鈴が鳴っている。







おわり