私は田舎生まれですので、当時の田舎なら当たり前ですが、幼稚園や保育園には行ったことがありません。
バスで通えるところには、私のブログを時折見て下さっている、あるブロガーさんの親戚あたりが経営する幼稚園がありましたが、これはお大尽さまのご子息の通うところです。
今でもはっきり覚えていますが、幼稚園に入れる年になる前の秋。その幼稚園の園長先生だかが家にやって来て、“○野幼稚園に行こうね”みたいなことをおっしゃいました。
で、私の答え。
“オラ、○岡高校さ行ぐがら、幼稚園には行がね”
はい、小さい時から食えないヤツでしたな。
当時の私には、○岡高校が夢。
幼稚園に行くと、その高校には行けないと思っていたのです。
さて、幼稚園には行っていませんが、幼稚園時代の想い出話などをしましょう。
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通訳が3人付いた。
1人は、私たち2人に片言英語で直接話す男。
次の1人は、北部語を英語ができる男の、首都語に訳す男。
最後の1人は、原住民の言葉を、北部語に訳す男である。
タクシーという名前の軽トラックの荷台には麻縄が張られており、震度6くらいの揺れの中、これにつかまって山道を登っていく。
荷台には私たち2人の乗客と、通訳3人。さらにカラシニコフを持つ2人がいる。
車内には、ドライバーと、やはり小型銃を構えた男が座っている。
“いいですか、旦那方。滅多なことでタクシーから降りちゃいけませんぜ”
少し前までは、ココナッツに穴を開けて、呑気にチューチューやっていた通訳が、急に真顔で言った。
“ありゃ?桜が咲いている”
相棒が言った。
確かに、遠目には桜そっくりの薄桃色の花が見えた。
久しく味わっていなかった、朝の寒さ。
桜に似た花を付けた木。
これから行くところは、話に聞く桃源郷なのだろうか。
いや、虎だか龍の住むところという人もいる。
とにかく、やたら物騒な出で立ちの者に囲まれた旅であった。
“どうですか?やってみますか?私はしませんが”
片言英語通訳が言った。
“いやいや、遠慮しておきましょう”
私と相棒は顔を見合せる。
お互い、心の中でこう呟いていたはずだ。
日本ならともかく、ここでそんなことしたら、比喩ではなく本当に豚箱行きだせ。
クラバラ、クラバラ。
マイ・ペンラ~イ。
私が大好きな、この国の言葉。
しかし、それをしたなら、マイ・ペンラ~イではなくなるのだから。
遠い、幼稚園時代のお話でした。