ヨミ(黄泉)という言葉があります。
これが、実に不思議な言葉であることが分かりますか。
黄という字は、音読み(中国語の日本語方言)では、“オウ”“コウ”。訓読み(古い日本語の意味に合わせた当て字)では“き”または“こ”です。
泉にしても、音読みでは“セン”、訓読みでは“いずみ”です。
ところが、これらが合わさって黄泉となるとヨミとなります。
何故でしょうか。
そのヒントとなるものが、『古事記』の序文にありました。
序文の中で、古事記編纂者である太安万呂(おおのやすまろ:呂は正しくは人偏に呂)がこんなことを述べています。
★
古代にあっては、言葉も内容も素朴で、文章化や句を作るのは大変だ。とにかく文字でどう書いたらよいか分からない。
(中略)
だから、一句の中に音訓文字をあわせて使ったりもした。
また、何故か分からないが日下を“くさか”読ませているようなものは、そのままにした。
(しま爺解説)
【参考文献】
角川文庫
新訂 古事記
武田祐吉 訳注
中村啓信 補訂・解説
ISBN4-04-400101-4
これを参考に、もう一度、黄泉という言葉を考えてみましょう。
安万呂は、ヨミという言葉が黄色い泉を意味することは分かっていた。
また、本文の中で、イザナギが黄泉の国のイザナミを訪ねていく文章でも分かるように、黄泉とは死の世界のことであることは明白。
さらに、黄泉の国が出雲あたりと記述していることから、黄泉の国は“西”にあると考えられていたことが分かります。
これらを考慮してヨミyomiを見てみると、ピンとくる言葉があります。
それは、エジプト新王国時代(約3000年くらい昔)のymです。
ym はセム語ymの転化のようですが、海のことです。
また、ymには西という意味もあります。
エジプト王家の墓は、ナイル川の西側、砂漠の中に造られていた時代でした。
砂漠は黄色い石・砂の集まりですが、蜃気楼で地上に泉が湧いたようにも見えます。
黄色い土地
泉のような幻影
西にある死者の国
これがヨミ(黄泉)なのではないでしょうか。
★備考
ヘブル語辞典によれば、YM(ヨッド→メンソフィート:ヨムというよりヤムに近い?)には、“海、西、大河”の意味が記載されている。
【参考文献】
旧約聖書ヘブル語大辞典
名尾耕作
聖文舎 1982