えっ? !
今、どうしていますか?
とお聞きしたら、カオリ、サツキと一緒ではないかとおっしゃった。
うゎ、カオリも一緒なの?
チーママだったカオリは、私なんかには高嶺の花。遠くから見るだけだったが。
いや、一度だけドライブに付き合ってくれたかなあ。
しかし、サツキって誰だ?
うーん、数百年前のことなので、やはり忘れてしまったのかもしれない。
で、私はミドリを求めて放浪の旅に出たのである。
彼女の背丈は546.1ナノメートルだ。
路傍で探すのは難しいかも知れない。
いや、難しいからこそ探すのだ。
と、若い頃なら思っただろう。
が、今は、ただただあてもなくうろつき、ミドリですかい?と尋ねるばかりである。
そのうち、桜マークから不審尋問を受けるか、徘徊爺がいますよと、病院に通報されるかも知れないなあ。
とにかくこの年で、藪山に入り、腹這いになって携帯で写真なぞ撮っているんだから、事情を知らなかったなら、私でも引きますなぁ。
あなたはミドリですかい?

いいえ、私は黄緑です、との答え。
うん、言われてみれば、確かにどこか違う。
背丈も 560ナノメートルはありそうだ。
次に出会ったのがこの娘。
あんたはんはミドリかねぇ?

いいえ、わたしは若草ですわ。
うーん、かなり似ているのだが。
じゃあ、あんたでしょう。
違うなあ、とは思ったが、隣の娘に声をかけた。
違うと分かっていて話しかけるあたりが、我ながら年を感じて、なんともあさましい。

ウグイスですの。残念ですわね。
と、背中がブルブルッとくるような澄んだ声。
もう破れかぶれである。

いいえ、わたしは深緑。
はい、出会い頭に。

あたしゃ、浅葱(あさぎ)だよ。どこ見てんだ、スケベジジイ。
失礼しました。また、ご指摘ありがとうございます。 はぁ。

若菜ですの。ごめんなさいね。

ワタシハ モスグリーン デス。
あっ、北欧の方でしたか。
失礼をば。

ジジイ、わざと間違えたな。
枯緑で悪かったわね。
で、やっと出会えたのが、この二人。
しかし、どちらがミドリなのか、いや、本当にミドリなのかどうかは、いまだに分からないのである。

