
私が、まだ中学か高校の頃の話でございます。
暴走族と言われる人たちが我が物顔に走り回り、夜中ともなりますとクラクションやら爆発音を出しまして、片田舎の人たちさえ睡眠不足に悩まされていた頃のことでございました。
さて、そんな怖いもの知らずの暴走族たちでさえ、通らない山道があったのでございます。
どことは、はっきり申し上げられませんが、昔から朝日夕日峠伝説という、それは恐ろしく悲しいお話のある山道近く、とだけ申し上げておきましょうか。
田舎では、お天道さまと一緒に起き、日が落ちる頃には寝る算段をいたします。
ですから、秋も半ば、そう今頃の季節ですと、午後七時ともなりますと、あたりは真っ暗。
ましてや、山あいの道はとても灯りなしで歩くことなどできません。
ずいぶん前置きが長くなってしまいました。
さて、これからが本当に怖い話なのです。
お寺の鐘がゴ~~~ン
と鳴り、カラスがとっくに家路についた後。
くねくねとした山道のなかで、かぼそいチラチラとした光が、くねった道に沿って動いて行きます。
いや、光だけではありません。
暗闇でも浮き立つ白い塊も動いているのです。
時折、キラッキラッと光るものも見えます。
そう、これは若い女がハチマキをした上に蝋燭を付け、両手には鎌を持って山道を歩く姿なのです。
まるで映画の八墓村の世界。
しかし、この女はキ違いだというわけではないのです。
実は、深い、妖しい色恋に関係しているらしいのですが、まだ私には教えてもらえませんでした。
が、どんな理由があろうと、これは怖いですよね。
暴走族も近寄らないわけです。