
いいですか。50過ぎた爺さんが、バラでも片手に街に出てみなされ。1分もしないうちに職務尋問されますぞ。
かと言って、家の周りをうろつけば、翌日から白い視線を浴びますわい。いや、その前に、ヤブ蚊にさされて痒くて我慢できなくなるでしょうな。
そうしますと、よほど昔にワープして考えるしかありませんでしょう。
まあ、若い時なら自分より、相手の浴衣姿にうっとりしてしまうんではないですかなあ。
とくに、襟合わせあたりの微妙な浅暗さ、カージオイド曲線のおりなす甘く秘密めいたハーモニーに、自然と体が熱くなるでしょう。
本来、浴衣は暑さを和らげるための服装なのですが、かえって暑さを増長するかも知れませんね。
さて、話は変わりますが、富士山と筑波山にまつわる話をしましょう。
昔、神様が一夜の宿を借りようと富士山にお願いしました。
ところが富士山は、なにかと口実をつけて断ります。
一方、筑波山は快く宿を与えます。
こんなことがあり、神様は富士山を瓦礫地にし、夏でも雪をかぶせ、人が近づきにくい山にしたと言います。
一方、筑波山には常に緑を繁らせ男女の出会いの場を作ったというのです。
昔から筑波山は歌にも詠まれる、男女の愛をはぐくむ山でした。
八溝山系南端に位置するこの筑波山の近くには、昔から須佐之男や稲田姫、聖徳太子などゆかりの地が多く、日本で唯一の出雲大社の別社があります。
筑波山で舞い、愛を語り合った男女たちは、今でいう浴衣に似た服装であったと思われます。
浴衣姿に色を感じてしまうのは、太古からの記憶が、脳のどこかに少しずつ蓄積されているからかも知れませんな。