例えば、太宰治の作品に“富士山には月見草がよく似合う”という言葉がでてきます。

そして多くの方は、この絵のような風景をイメージし、これが月見草だと思っていることでしょう。
しかし、これは月見草ではありません。
オオマツヨイグサという、アカバナ科の植物です。
おそらく太宰は、このオオマツヨイグサを見て、あの有名な言葉をはいたのでしょう。
ただし、現在でも多くの人は(テレビなどでも)、このオオマツヨイグサあるいはメマツヨイグサ(オオマツヨイグサより花が小さい)をツキミソウの名前で呼んでいます。
歌謡曲にある“宵待草”も、同様の勘違いでしょうか。
本当のツキミソウの花は純白で、明け方しぼむ頃にはピンクになるようです。
これにかなり近いものにヒルザキツキミソウがあります。
下記 参照

さて、このように名前は知っていても、いざ聞かれるとわからないもの、誤りがまかり通っているものが、結構あります。
例えば、“蓼(たで)食う虫も好き好き”ということわざを知っていたとしても、タデって何?という方も少なくないと思われます。
下の写真は、日本の野山や空き地によく見られるタデの仲間です。

なお、タデは上記のことわざにもあるように、あまり芳しからざる草の一つですが、この仲間を改良して私たちの食べているソバが作られたと思われます。
湿地に自生していたソバ。おそらく栽培されていたものの種が流されてきたのだろう。

アレルギー性鼻炎の方ではなくとも、ブタクサの名前くらいはご存知でしょう。
今日はまだ開花していませんでした。
ブタクサは、一時荒地に生える代表的帰化植物でしたが、最近減っているように感じます。
ところで、里の山にはブタクサと比較にならないほど強烈な低木があります。

これはウルシの木です。
そう輪島塗などの漆器のうわぐすりの原料は、この木を削って採れる樹液です。ちょうど、ゴムの木にキズを付けてゴムの原料を採取するのに似ています。
かつては、金や水銀同様(あるいはそれ以上の)貴重品でした。
が、これには相当な毒があります。
枝や葉に触れると、人によっては全身に湿疹ができて、かなりの時間治りません。場合によっては近づいただけで湿疹がでますが、これは心理的なものがあるかも知れません。
田舎育ちの私でも、いや、田舎育ちだからこそ、進んでこれには触れません。
子どもの頃、ある女の子はこれに触れて1週間学校を休んだことがあります。
なお、山菜の王者(私がそう思っているだけですが)ともいえるタラの木に似ていますが、自然のタラの木にはトゲがあるのに対して、ウルシにはそれがないことから比較的簡単に見分けがつきます。
ただ、慣れない人には、春先は区別が難しいかも知れません。
と、昨日は久しぶりにのんびりと散歩しておりました。
と、私の心臓がバクバクとし始めたのです。
それは、日陰に群生しているある植物を見つけたからでした。
それは遠目に、ムラサキツユクサに見えました。
が、なんと花が白いのです。
私は相当野草には興味があり、かつては、日本の平野に生える双子葉植物(草本)の半分くらい、単子葉植物(草本)の2、3割程度は見た記憶があり、小学生から高校時代にかけ1000種以上の標本を作ったことがあります。
が、ムラサキツユクサの白花、それも群生しているのを見たことはありません。
おおーっ、との思いで花に近づきました。
と、それはムラサキツユクサではなく、ツユクサでした。
ツユクサなら園芸植物ですから、白花のものがあってもおかしくはないでしょう。
おそらくあの群生は、誰かの花壇から飛んできた種が増えたものなんでしょうな。
しかし、ツユクサにしても白花のものは不勉強にして、初めて見ましたなあ。
野草は多少知っていましたが、園芸植物はさっぱりです。
追記
名前判明
トキワツユクサ。
なーんだ。私が不勉強だっただけでしたなあ。

インターネットで調べたところ、ムラサキツユクサの変種としてシロバナツユクサと称されるものがあるようです。