
はい、大好きですよ。
いや、大好きでした。
数年前に体調を崩し、内臓をやられてからというもの、ダメですなあ。
まあ、こんな生活をしていたら、治るものも治りませんがね。
まあ、昔は治癒力はロボット並みでしたから、多少骨にヒビが入ろうと医者には行きませんでしたし、スキー板にバッサリやられた時(かわいい子だったのでぶつかってこられてスキー板がスーッ、ブスッでしたが「ごめんなさい」と泣きべそ顔で言われて「なんでもないよ」と答えてしまうあたり、見栄の島ちゃんです。スキー場の医務室に着いた時には、自分でも驚くくらいに真っ赤というか、ウェアから絞れるくらい出血していた)も、縫うのはさすがに医者にやってもらいましたが、抜糸は自分でやってしまいましたなあ。
モンブランの中腹にある、007の舞台にもなった氷河が見えるレストランからは、なんとしても自分の手で氷河に触れたいと、なんと革靴で膝までつかる雪の中を歩いたりしました。
これって、自殺行為に等しいことだったのですが、若くこわいもの知らずだった島ちゃんには、当たり前の行動。とにかく、なんでも肌で感じることが大切なんて考えておりましたから。
ところが、と言いますか、やっぱりと申しましょうか、氷河に降りる断崖で足を滑らせ、私は思わず両手を広げとにかくつかまるものを探しました。
どっちの手だったかは忘れましたが、幸い突き出た岩に救われました。
バカでしたなあ。
まあ、私は荷物を手に行動するのが苦手で、通勤でも特別な場合以外はメモとボールペンだけ。鞄は持ちません。雨の場合も、どしゃ降りならともかく、多少の雨なら傘もまず持ちません(これは、電車やお店に、自分の意志ではないにもかかわらず《寄付》してしまうことが多いからでもあるが)。
その時も、パスポートと免許証などを内ポケットに入れ、両手は空いていました。
まあ、多少はハイキングをして丘登りにも経験があったものですから、このへんは自然に両手を空けるクセができてしまったのかも知れません。
しかし、今考えますと、あそこで《bye-ナラ》していても不思議ではなかったですね。
おバカな島ちゃんも、それ以上革靴で氷河にチャレンジする勇気はなく、あえなく退散しました。
知床の絶壁、礼文桃岩で高山植物を追いかけ、似たり寄ったりのこともありました。
台風が吹き荒れる中、男体山に登った時は、一歩一歩が、百メートルくらいに感じることもありましたなあ。
まあ、この時は、前日寒くてほとんど寝られなかったこともありますが。
いやあ、それが今やさっぱりです。
数年前、体調を崩した時は、ちょっと歩いただけでめまいがしました。
その時になって初めて、中学生の時古文で習った、吉田兼好の「友達は、元気なやつはやめた方がいいでっせ。あやつらは体の弱い者のことなど分かりませんからなあ」という言葉を理解することができたのです。
私は長い間、兼好さんを理解しえない男、あるいは、兼好さんには好かれぬタイプの男でした。