飛鳥河原では、ススキが穂を広げ、ワレモコウの赤い坊主頭があちこちに首を伸ばしていた。
男はいつものように、最近樫丘の上に建てられた宮に目を向ける。
あそこには、俺なんかが……。
晩秋の肌寒さを感じさせる風が、痩せた男の骨の中を通りすぎる。
樫丘の宮に、薄雲がかかり、一瞬、そこから白檀の香りが漂ってきたような気がした。
が、また男はため息をつき、飛鳥川に目を落とす。
水量が減り、カラカラと軽やかな流れの音が、いっそう男を陰鬱な気分にさせている。
すっかり緑が抜けたマコモがカサカサとなり、その間からカワウソが顔を出した。
が、そいつは男をサッと眺めると、すぐに、また枯れ色の草むらの中へと隠れ込んでしまった。
男は、また虚しく青空を映す川面に目を向ける。
と、男の目を何かが引き付けた。
鮮やかな紅(くれない)色の柿の葉が、マコモの根元でクルクルと回っている。
男は、くるぶしに伝わる痛さに似た水の冷たさよりも、何かしら暖かいものが心に湧き出てくる予感に、その柿の葉を拾い上げた。
つづく