
私は、江戸時代の風習、慣習が残る北関東の片田舎に生まれましたから、若い時は当然のように、『男が払うもの』と思っていました。
が、最近は考えが少し変わってきています。
人類みな兄弟とか、天は天の下に云々、とかは言いませんが、ここは経済的に豊かな方が率先して払うべきでしょうな。
つまり、男とか女とかいう問題ではないと思うわけです。
ところで、香港やシンセンなどの広東地方では、お勘定のことを『マイタン』と言います。
このマイタンにはいろんな思い出がありますが、いかにも!と驚いたというか笑ってしまう話。
(これは妄想ではなく、実際私の目の前のテーブルで起こったことです)
あるホテルのコーヒーハウスに、男3人組がやって来ました。
広東語を話していましたから、中国南部の方たちのようです。
3人がそれぞれサンドイッチを頼み、1人だけがコーヒーをオーダーしました。
コーヒーは飲み放題の定額、まあ、日本でいうドリンクバーとかいうやつです。
と、その男がコーヒーをどんどん注いできては、他の2人のコップに入れます。
3人がそれぞれ何杯かのコーヒーを飲んだ後『マイタン』となりました。
さあ、どんな問題が起こったかお分かりですよね。
客は私と彼らだけでした。コーヒーハウスの店員は、コーヒー3人分の請求をしてきました。まあ、状況からみて当然ですわな。
ところが、お客は怒り出します。俺たちは、1人しかコーヒーを頼んでいないと。
しかし、あなたたち3人が飲みましたよね、と店員。
いや、1人が何杯でもおかわりできるはず、とお客は言う。
はい、確かにそうですが、それは1人で飲む時です。あなたたちは、みんな飲みましたよね、と甲高い声になる店員。
いや、あくまでオーダーは1人だし……。
こんな会話が何分も続く。
どう決着するか最後まで見たかったが、延々と続きそうな鶏と卵どっちが先?みたいな口論に付き合っいられるほどの暇はなく、残念ながら席を後にした。
ところで、このマイタン、っまりお勘定の時には、国柄いろいろな仕方があるようだ。
西欧、あるいは西欧植民地であった国などでは、目があった時、あるいは手を上げて、何かサインでもする仕草で十分だ。
ブラジル暮らしが長い先輩がやって来た時は驚いた。
彼は口をとがらせ『プシュー、プシュ』て、若いお嬢さんに音を飛ばす。
これがサンパウロ流らしいが、東南アジアでこれをやられますと……。
まあ、ところ変われば、何かと違うもんですな。