
5、6000万年前の話になりますが、当時、私らの祖先は、やっとネズミくらいの大きさになり、恐竜の餌食にならないよう、彼らが寝静まる夜中に、こそこそと動きまわり、昆虫だのミミズだのを捕まえておりましたなあ。
だから、元来臆病で自分より強そうな動物に出くわすと、電光石火隠れたり逃げたりしていたもんです。
そんなわけで、逃げるのはもともと得意なんですよ。ほ乳類の動物は。
こうした野生の本能を強く引き継いでいる私は、追いかけられると、とにかく逃げてしまうんですな。
たとえそれが、甘く魅力的な匂いを発していても。
それからしばらくしまして、隕石による気候変動だか被子植物の食い合わせによる影響だか忘れましたが、とにかく恐竜連中がいなくなりますと、ご存知おいらの世界でしたわな。
体もどんどん大きくなり、同じほ乳類を追いかけるもんも出てきました。
私らの祖先は、調子に乗って、自分の体重の200倍も300倍も重いマンモスまで、つい1万前まで追いかけていたりもしていたもんです。
ですから、野生人たる私には追いかける本能もあるはずなのですが、ひ弱なほ乳類として、追いかけられる期間のが長かったせいか、この習性は消えているか隠れてしまっています。
まあ、最近足腰が弱くなり、すぐ息があがってしまうということもありますがね。
で、結局、追われれば逃げる。追うこともしない。
うーん、これでは、やっぱり恋愛を語る資格はありませんなあ。