芝神の都瑠香 2 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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ススキが赤茶色の穂を膨らませ、ワレモコウは頭を紅色に染め始めた。


最仁は芝神(しばやま)に分け入り、ムカゴやアケビを求め傀儡師たちが住む谷あいの村落近くにまで、足を伸ばしていた。


水を求めにガンガ谷に降りてきた、


と、


向かいの岸、谷が大きく流れを変え、そこだけ淀みができた浅瀬で、うら若い女人が今まさにハラリ衣を脱ぎ捨て、その淀みに身を浸そうとしていたのである。



吹く風にすらうすら寒さを感ずるというのに、女は躊躇する素振りも見せない。



最仁は、そんな女の存在が目に入らぬかのように、ゆっくりと竹筒に清水を入れ始める。



一方、

女も、男が目の前にいるのだから、気づかぬはずはない。




いくばくかの時が流れた。




女が、ザバッとわとらしい音をたてながら淀みから立ち上がった。


無論、その肌を覆い隠すものなど何一つない。


押さえていた何かをはきだすかのように、


女がややかん高いで言った。



「坊主・・・・・・、ぬしはめしいか」



最仁は、やおら竹筒の栓をして顔を上げ、じっくりと声の主を見た。



「ほう」


と、やや間の抜けた声をだす。



最仁の目が、雫の滴り落ちる髪からゆっくりと下の方に移動し、淀みに隠れた爪先あたりにまで動いていく。




その間、女は微動だにせず男の視線を受け続けているのであった。



ただ、その目からは青紫色の挑発と挑戦的な何かか、痛いほどに投げ掛けられている。



「坊主、否、男。ぬしはめしいか」



女が、また同じ言葉を投げ掛けた。