最仁は芝神(しばやま)に分け入り、ムカゴやアケビを求め傀儡師たちが住む谷あいの村落近くにまで、足を伸ばしていた。
水を求めにガンガ谷に降りてきた、
と、
向かいの岸、谷が大きく流れを変え、そこだけ淀みができた浅瀬で、うら若い女人が今まさにハラリ衣を脱ぎ捨て、その淀みに身を浸そうとしていたのである。
吹く風にすらうすら寒さを感ずるというのに、女は躊躇する素振りも見せない。
最仁は、そんな女の存在が目に入らぬかのように、ゆっくりと竹筒に清水を入れ始める。
一方、
女も、男が目の前にいるのだから、気づかぬはずはない。
いくばくかの時が流れた。
女が、ザバッとわとらしい音をたてながら淀みから立ち上がった。
無論、その肌を覆い隠すものなど何一つない。
押さえていた何かをはきだすかのように、
女がややかん高いで言った。
「坊主・・・・・・、ぬしはめしいか」
最仁は、やおら竹筒の栓をして顔を上げ、じっくりと声の主を見た。
「ほう」
と、やや間の抜けた声をだす。
最仁の目が、雫の滴り落ちる髪からゆっくりと下の方に移動し、淀みに隠れた爪先あたりにまで動いていく。
その間、女は微動だにせず男の視線を受け続けているのであった。
ただ、その目からは青紫色の挑発と挑戦的な何かか、痛いほどに投げ掛けられている。
「坊主、否、男。ぬしはめしいか」
女が、また同じ言葉を投げ掛けた。
