ピンク薔薇                          


       『花を愛する君に、
                                  この花束を贈る』



           1774年 ルイ16世から贈られた
                      離宮小トリアノン



当初、午後の時間を過ごしていた
『隠れ家』は


第一王女が誕生してからは
夜もトリアノンに宿泊するようになる


ここには
王妃の特別な招待がなければ
入ることはできない


                      『ここが私の家』


            『ここに宮廷は持ち込みません、
          一個人としての生活をするんです』


                                  クローバー  


穢れのない、緑豊かな楽園
手つかずの農村


マリー・アントワネットは
小トリアノンに
想像力から具現化した
自然庭園を造り


そこで散策することを夢みていた



5月


春の散歩では


孤独の木立の一帯を
芳香を発する白い花が覆っていた


スズラン…


王妃の寝室は
簡素で素朴な雰囲気で


織物は
ジャスミンの枝と
スズランで飾られ


あまりに自然で
生き生きとし


まるで
香りがするかのようだったと




トリアノンの刈り込みの下に咲く
その香りを彼女は愛でていた


時折
友人への土産として
花の数株を摘みとったりもして


(彼女は友情を
何よりも大切にしていたから…)








昔から
復活と、春の訪れ
そして、幸福の象徴



天国の門の両側を飾り
優しさに溢れたひとが門を通ると
ベル型の花が鳴ってしらせたという







こころの中で
いつも香る


いちばんに
すきな花…



スピカ