

- 著者: 山田 詠美
- タイトル: 放課後の音符(キイノート)
それまで私が読んでいた本と言えば、「図書館にある本」だった。
良くも、悪くも、である。
小説といえば、何やら小難しいもので、"昔の人が書いたもの"だったし。
坊ちゃんがせいぜい、好感触だった。
そんな私が、地元の本屋の本棚に初めて立ったとき、この本が目に入ってきた。
漫画でもなく、雑誌でもなく、「ナツの1冊」なんていうフレーズに、ずらっと並んだ普段は手にしない文庫本のコーナーに立った瞬間だった。
表紙のデザインがちょっと可愛らしくって、「こんなものもあるんだ~」と。
目をやると、意外とすらすら読めるほど、平易な文章。
読み進めて見ると、なんだかちょっと胸がどきんとした。
「みんなと一緒はいや」と思っていた私@ブルーだから、そのシーズン流行のコートを選ぶときにも、「ブルーっぽさ」の選択をどこかに表現してみていた。
ボタンは普通より大きめのものを。
この裾は若干の広がりを。
襟の形は少し丸みを。
そんな風に、一歩先の私らしさを追求して、「みんなと違う」ことを探していた。
でも、みんなと待ち合わせると、なんだかみんな似たようなコートを着てくる。
がっかりのような、また集団に埋もれてしまう焦りを感じた。
それと同じ気持ちが、このストーリーの冒頭でも始まっていた。
気づくと、お財布の中を確認している自分がいたのだ。
これなら、お小遣いでも買えるかな?
ということで、初めて自分の意思で、自分のお小遣いで買った1冊。
すべて、大人の一歩は放課後にあった。
この1冊を読んで、私は堂々と背伸びをする子になった。
背伸びをすることは、今しかできないと言うことを知ったのだ。
謙虚に、でも無知に、背伸びをして良いのだと。
その時の放課後の積み重ねが、今の私にもなった。






