小説 ♪絶唱♪

小説 ♪絶唱♪

ドキメンタリ-風小説絶唱
epilogue《エピローグ》小説それから
第3部 こころ 75歳になった男が感じる天の役事
第2部 共鳴太鼓 未来を背負う若き世代の物語
第1部 やまぶきの花 戦後まもなく生まれた男が生きた昭和、平成、令和の物語。

  

凡人が世俗の波の中から抜けきるにはもう少し時間が必要だった

 

 東京高等裁判所は「昨年年2025年3月、東京地方裁判所が出した解散命令を支持する」として2026年3月4日世界統一家庭連合に対して解散命令を下した。

 翌日、橘良助は車で教会の建物の前を通過した。

 車の出入り口のシャッターは閉鎖され、入り口のガラス扉には

「閉鎖」の文字が有り玄関ロビーの照明はすべて消えていた。

 

 未知の世界への扉が開いた!!

 荒漠たる地平が拡がる・・・

 目印になる山も、川も無い

 だが、空に煌めいている多くの星の中に北方を示しているという北斗七星が・・・

 

 昨日、東京地方裁判所で解散命令が決定されて間もなく清算人から要請された人たちが訪問してきたと聞いた。その時立ち会った職員から連絡が有った。

 『15時ころ清算人4人が到着、18時関係施設車両などの鍵、公的所有物、会計資料と現金などすべて引き渡し職員全員教会か退出。以降出入りは出来なくなりました』と

 

 世界日報は翌日5日付けで堀会長の声明文を掲載した・・・

 

 東京高裁が4日、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の宗教法人解散命令を決定した同地裁の一審決定を維持する決定をしたことについて、家庭連合会長を務めていた堀正一氏が5日、個人として声明文を発表した。この中で堀氏は、決定は算証拠裁判主義に反するとして最高裁への特別抗告を準備すると表明。「清業務には誠実に対応していく」と述べた。また、信者への人権侵害が生じないように求めた。堀氏は高裁決定による清算手続き開始で会長職を失った。声明文全文は以下の通り。

高裁決定を受けての声明文

 ご承知の通り、3月4日午前11時に東京高裁にて決定が下され、家庭連合の抗告が棄却されました。抗告審では家庭連合の主張が認められず、極めて遺憾です。特に原決定の東京地裁決定について、宗教の自由という優越的人権をはく奪するものであるのにもかかわらず、長年定着してきた法解釈の恣意的変更が安易に追認されて遡及適用されることは憲法違反・国際法違反であります。更には事実と証拠に基づかない恣意的な推測は証拠裁判主義に反するものである旨を高裁では主張しました。また、昨年10月に国連高等弁務官事務所がプレスリリースを発し、東京地裁決定は国際法違反であると警告を発していました。しかし東京高裁は、上記主張を退け、国際社会からの警告を一切無視して今回の決定を下したことになります。さらに、家庭連合は2022年以降、献金確認書の取得や認定相談員の設置などの教会改革を進めており、2023年に不当寄附勧誘防止法が制定された後、消費者庁の勧告または命令を受けた案件は1件も生じておらず、最近では集団訴訟の当事者の方々との和解や補償委員会を通して、法の枠を超えて多くの被害を訴える方々への対応もなされておりました。そのような改革・改善の努力が認められず、具体的な法令違反の証拠もないままに和解・示談を主な根拠として地裁の解散命令決定が支持されたことは、誠に遺憾としか言いようがありません。早急に弁護士とも協議の上、最高裁に向けて準備を進めてまいりたいと思います。
 一方、3月4日当日に裁判所が選定する清算人が決定いたしました。清算業務には誠実に対応していく所存です。

 また、非常に残念ながら、安倍元首相暗殺事件直後や地裁解散決定の際には、教会員やそのご家族に対する差別、偏見、誹謗中傷などの人権侵害が数多く発生しました。今後、教会員およびそのご家族に対する人権侵害が生じないように、皆様に心よりお願いいたします。
 なお、私たちは純粋に天の父母なる神を信奉し、神の願いを実現するために活動する団体ですので、法人格を否定されたとしても、引き続き、天の願いの実現を目指して宗教活動を行っていくことに何ら変わりはありません。むしろ今回のことを契機に、更に、私たちの活動の真実を多くの人々に知っていただくべく、伝道、布教活動に従事していきながら、広く社会の信頼を勝ち取るべく取り組んでいく所存です。
 令和8年3月5日

 堀正一

 

 橘良助の内面は静かだったが気分は淀んだ。

 

 昨年は世間で言う金婚式だった。

 その時、聞かれたね『よく金婚式まで信仰を守ってきたね・・?ところで愛唱歌はなんですか?』って

 答えたね「まず”昭和枯れススキ”♪

 その次は井沢八郎の”ああ上野駅”、それに舟木一夫の‶高校三年生”などかね。・・・古い歌だね。我ながら思うね」

 

 自分でも思うよ。55年間信仰をよくも続けてこられたなぁ」と

 世間は言う『洗脳されているんだ』と・・・

だが俺はいつも言っていたよ『賛同してきたんだ。その生涯の歩みに、時には一緒に歩み、時には現地に行って活動した先輩たちの口から聞いた内容からね・・』

 

またこうも言うよ『洗脳されて高額献金させられて』・・・

『俺は毎年、信仰を積み重ねてきたね。55年間。献身生活十年、その後一般企業に勤めて40数年間・・18歳で覚えたタバコも止め、宴会での付き合いや御挨拶の一杯のお酒も”父に代から身体が受け付けないモノです”と詫びを入れて御勘弁願ったことも・・・

 俺だって寄せ集めれば献金総額は2000万弱にはなるだろう・・。これが俺が賛同したという、俺に対する実体証明書だね・・・』

 

『だが、多少兄弟の間の付き合いや親族の往来が疎遠になったのは申し訳ないと思っているね。

 これは余談かもしれないが、今まで刃物沙汰になるような痴情話は私にもありません。また、親の遺産相続で親族を巻き込んでの積年の恨みも無く、平和にお付き合いしていただいていますね。つい最近訪問した時も玄関の敷居につまづく事無く招き入れられたことは本当に感謝しています。ここまで生きてこれたのもこうした親族の支えが有ったならこそと思っています・・・』

 

 『言っときますが解散命令を受けた宗教団体に、私の席が有ったって、55年間を決して後悔しているわけじゃありませんぜ。

 むしろ今日の今日まで生きてきて、この教会の玄関のロビーのガラス戸を見つめるとグッと込み上げてくる思いが有るんです。たぶん解ってはもらえない思いますけれどね・・・」

 

 未経験の世界への扉が開いた。

 荒漠たる地平が拡がる・・・

 目印になる山も、川も無い・・

 空には無数の星が煌めいているがその中に北方を示しているという北斗七星がある事を教えてくれた古人(いにしえひと)に感謝しているね・・

 

 次回の続く