文部科学省「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について (答申【案】)」 の「はじめに」を読んでみました。
これに今回の答申の重要部分(キモ)が書かれていると思います。
以下引用
>危機は今、我々の足下にある。その危機とは、急速な少子化に他ならない。少子化は、我が国の産業・経済、文化・学芸などあらゆる分野の繁栄と、都市と地方の均衡ある発展を大きく減速させる。これは目をそらすことのできない事実であり、我々はまず、この現実を直視すべきである。
昨年の日本人の年間出生数は、72 万 7,277 人となり過去最少を更新した。出生低位推計によれば、我が国の総人口は、2052 年に1億人を割り、2070 年には 8,024 万人になるものと推計されている。これは、今高等教育を修了しようとする者が社会の中枢で活躍するような近い将来である。我々は急速に 進展 する少子化へ の対 応という避け て通 ることのでき ない 課題に真正面から向き合い議論を重ねてきた。教育の現状を変革できなければ、国力 は著しく低下することとなる。したがって、少子化へは決して規模や活動の縮小といった後ろ向きな対応ではなく、この危機を、大学をはじめとする高等教育機関の活動を強じんなものとし、様々な社会課題の解決に貢献することにより、社会全体の活性化を促す好機とと捉え、これまでの約●か月間、正に新たな我が国社会の将来を方向 づける最大の国家 プロジェクトの一 つという強い認識 の下で議論を重ねてきた。
大学をはじめとする高等教育機関の役割は、学修者一人一人の可能性を最大限伸ばすことによって社会の発展の原動力となる優れた人材の育成、人類の知的資産の継承と未来を拓く新しい知の創造、知的資源を活用した社会の発展や文化の創造、国際協力への積極的な貢献等幅広いものであり、個人のみならず社会全体にも価値あるものである。このような役割を担う我が国の高等教育に関する政策は、近年、「計画と規制」から「将来像の提示と政策誘導」への時代と転換してきた。その中で、大学への入学定員は増加し続けるとともに、進学率も上昇してきた。しかし、これから先の急速な少子化は、中間的な規模の大学が 1 年間で 90校程度、減少していくような規模で進んでおり、定員未充足や募集停止、経営破綻に追い込まれる高等教育機関が更に生じることは避けられない。高等教育の規模が縮小するということは、特に地方とにおいては、質の高い高等教育へのアクセスが確保されない事態も想定される。これらへの対応は待ったなしとも言うべき状況にある。
そして、高等教育機関の偏在と学びたい学問が学べないという影響を直接受けるのは、未来を創り出す若者であり、高等教育機関の卒業生の規模縮小と人材不足の影響を受けるのは、我が国の社会全体である。若者の夢を止めることはもちろんのこと、社会全体の希望を失わせることは決してあってはならない。全ての人が、我が国で暮らしていてよかったと感じることができる社会を創っていくことが求められる。
大学をはじめとした高等教育機関の在り方の見直しは、その場しのぎで対応で きるものではない。正に今、我々の世代で解決する姿勢が求められる。そのためには、これまでの発想を大きく転換することも求められる。国や大学等の高等教育機関関係者はもちろん、地方公共団体や産業界、初等中等教育関係者、高等教育機関への進学者やその保護者等、ひいては社会全体が、高等教育に対するマインドを変えていかなければならない。
本答申が、今後の高等教育、ひいては我が国の未来を創造していくに当たっての羅針盤となることを願ってやまない。
引用終わり
特に気になるのは中間的な規模の大学が 1 年間で 90校程度、減少していくような規模で進んでおり、定員未充足や募集停止、経営破綻に追い込まれる高等教育機関が更に生じることは避けられない。という部分です。
ここの部分には「2040年度頃の大学・短期大学への進学者数の増減が年間23,355人の減少と推計される一方で、2023年度の大学・短期大学の入学定員の中央値が270人であることから推計。」という脚注が付いています。正直に言って、270×90₌24,300という計算式から90校が消えるということが言えるのかよくわかりません。随分と乱暴な推計のように思えます。
そもそも中央値が270人が本当なのか検証してみなければなりません。どう見ても小規模大学・短大の中央値を取っているように見えます。ところがこの「大規模、中規模、小規模」というのがよくわかりません。ここでは「中間的な規模」となっています。
にもかかわらず「一年間で90校程度」というのは十分にセンセーショナルな表現で、一人歩きしそうな危険な香りがします。これは文科省当局の願望あるいは計画なのではないかと疑ってしまいます。
ことほど左様に今回の答申案は冒頭からよく読まないと落とし穴があると私は感じました。答申としては、長いものになっているので、読み込みが必要ですので、しばらくこのブログで取り上げていきます。
ChatGPTを使って要約をするのもいいですね。