アメリカの公的資金注入に対する米国内の空気 | SMART広報『蛙の目』

SMART広報『蛙の目』

株式会社シンクアップの広報を考えるブログです。

バーナンキ連邦準備理事会議長も同席した14日のアメリカのポールソン財務長官の記者会見の記事を注意深く読んだみるとちょっと興味深いアメリカの心理が見えてます。

金融危機対策について「我々が望んでいたことではないが、金融システムへの信頼を回復するために必要だ」とあくまで政府の市場への介入に抵抗感があることをにじませています。

しかし、「金融システムが凍りついたため米国民に影響が及んでいる。米経済を守るために決定的な行動をとる」と。

一方バーナンキ議長は「大手9行が資本を受け入れに同意したことを高く評価する」として「新規融資を行うための余力が生まれる」と述べ、銀行側にも強い抵抗があることをうかがわせる発言をしています。それとともに貸し渋りをけん制しているわけです。

日本の銀行がかつて不良債権処理で公的資金注入受けた時に銀行内部に政府の介入を嫌がるこうした抵抗はあったのでしょうか。

これに先立ちブッシュ大統領はホワイトハウスで「対策は自由市場を乗っ取るのではなく、維持するために必要だ」とのべているのも注目です。

血税を金融機関に投入することへの反発ということとは違う「自由市場に政府の介入を許してしまう」ことへの警戒感が強いわけですね、いまだに。このあたりがアメリカンです。

なんとなく盗人たけだけしいという言葉が脳裡に浮かびますが、まあどうなりますか。

【関連記事】

東京新聞:米『公的資金注入』 政府関与強化に反発も:経済 (TOKYO Web)
10月10日の記事ですが…。
「米財務省は、サブプライムローン問題が起きて以降、日本の不良債権処理を詳細に研究しており、ポールソン長官の念頭には、日本が行った銀行の優先株の取得による資本注入がありそうだ。」

NewsWeek日本版10/22
当初、不良債権買いとりという政策でしたが、ハーバード大学のグレゴリー・マンキュー(ブッシュ政権の元経済顧問)らが民間資金による増資も行うことを条件に政府が優先株を直接買い取るように主張。

日本など外国政府からも同様の要請があり、ブッシュ政権は先週、公的資金注入論に一気に傾いた。…とはいえ、一連の銀行救済策が特効薬とはかぎらない。不良債権買いとりと同様、資本注入にも多くの課題がある。

実施するには厳格な資産査定や経営責任の追及が不可欠だが、それでは銀行側が尻込みする可能性がある。国民や議会の反発も予測される。

米政府、25兆円の公的資金注入の意図 :NBonline(日経ビジネス オンライン)

この記事は読み応えがありますよ。なぜ一斉になのかの意味がわかりました!

>資本注入を受けると予想される米金融機関とその金額は次の通り。JPモルガン・チェース(JPM )、シティグループ(C )、バンク・オブ・アメリカ(BAC )がそれぞれ250億ドル、ウェルズ・ファーゴ(WFC )が200億~250億ドル、ゴールドマン・サックス(GS )とモルガン・スタンレー(MS )は各100億ドル、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BK )とステート・ストリート(STT )はそれぞれ20億~30億ドルだ。シティグループとゴールドマン・サックスの広報担当者はこの件に関するコメントを避けた。ほかの金融機関の担当者とは連絡が取れなかった。

>アナリストは、大手金融機関9社に一斉に資本注入を行うのは資本注入を自主要請する金融機関への悪印象をなくすためだと語る。大手金融機関の一部は 公的資金の受け入れに抵抗し、資本増強は不必要だと論じた(政府が株主になることも不必要だととらえていたかもしれない)。しかし、ポールソン長官は大手 金融機関各社が一斉に資本注入を受けることが必要だと主張した。

>米投資調査会社ストラテガス・リサーチ・パートナーズ の ワシントン駐在アナリスト、ダニエル・クリフトン氏は、どこか1社が単独で支援を要請した場合、その金融機関は自力では生き残れないことが市場に知れわた り、民間での資金調達ができなくなってしまうからだと分析する。いかに経営が深刻な状況でも、既に株価下落に見舞われている金融機関は、市場圧力がさらに 強まることを恐れ、政府への資本注入要請には尻込みする可能性がある。


<追記>


次の記事は示唆に富んでいます。

直接金融という神話 - 池田信夫 blog


週刊!木村剛 powered by ココログ: [ゴーログ]偉そうな国ニッポン!