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ホワイトデイ。

かなり過ぎてしまいましたが、いつもぺたぺたして下さる皆さんへ♪



ホワイトチョコが微妙なようです。
クリームとスポンジの間にはブルーベリージャム。

ま、フツーに食べれたので良しとします(´∀`)b
「あ」
 ヨウスの土産は何にしようかと話している時。
 トルクが突然、声を上げた。
 何事だろうかと二人も振り返る。

「ランディック!」
 トルクが手を振って人込みに駆け出す。
 残された二人も後を追うと、トルクが青年と握手をしていた。

「西寮にいないものだから、驚いたよ」
「東寮が気楽で良いんだよ」
「ウェデルク直下の家柄だろうに……」
「田舎貴族だよ、ウチは」

 追いついた二人に気付いて、トルクは紹介した。
「オレの同室生のルフェランだ。
 こっちの小さいのはティセット。
 ランの前の同室生だったんだ」

 小さいのは余計だ、と思いながらティセットはルフェランに続いて頭を下げた。
 西寮ということは、上等生だ。

「で、こちらは、昨日見ただろ?
 ロスクル子爵家のランディックだ」
 やっぱり、と心中でティセットは思った。
 貴族嫌いなトルクがわざわざ紹介するなんて、そうそうない。

「ルフェランにティセットか。
 覚えておくよ」
 止めてくれ。
 なんて言えるはずもなく、二人はありがとうございますと口にした。

 ただ、二人を見る目に嘲りの色もなく、横柄さも感じられない。
 好青年なのかもしれない。

 貴族だろうと、すべての人間が権力を傘に着ているわけではない。
 トルクが良い例だ。
 初等生とも気軽に話すので、擦れ違えばあいさつが飛んで来る。

 ランディックもそんな人柄なのかもしれない。



「ホントはもう一人ツルんでるのがいるんだけど、今日はいないんだ」
「それは残念だな。
 授業で会えるかい?」
「武科以外はオレと一緒だ。
 楽しみにしててくれよ!」

「もしかして、こっちで見つけた彼女かい?」
「ざぁんねん!
 男だ。
 美人だけどな」
「へー……。
 それはそれで楽しみだ、な……っと。
 こっちも連れが来たようだ」

 ランディックがティセットの頭を通り越して、遠くを見た。
 手を振ってやけに嬉しそうな笑みを浮かべる。
 ティセットも振り返ると、女の子がこちらに駆けて来るところだった。



 少女はティセットたちを通り越し、ランディックの腕にしがみつく。
「すっごい人込み!
 エリーを置いて来ちゃったわ!」
 ランディックは苦笑した。

「フィーナ。
 ご挨拶が先だろう?」
 ランディックの窘める声に、何のことだろうかと少女が振り返る。
 背後の三人に気付いて顔を赤らめた。

「すまない。
 妹のフィオナだ」
「初めまして、フィオナです。
 ごめんなさい、皆さん。
 お話しの途中だったのでしょう?」

 紹介されて、兄と同じ濃い金髪を急いで整える姿が愛らしい。
 十五・六歳くらいだろうか。
 浅黄色の長衣の裾がフワフワと膝を撫でている。



「兄様、そろそろ行かないと」
「あぁ、そうそう。
 これから芝居を見に行くんだ。
 良かったら来ないか?」
「どうせ『ふた名の英雄』だろ?」

 ここ数年、芝居と言えばそればかりで、さすがのトルクも飽きている。
 同じくティセットも、見せ場の台詞を覚えてしまったくらいだ。

「いいえ!
 今日だけ『北のアキシュ』なんです!」
「!」
 三人の目の色が変わる。
 聞いたことのない表題だ。

「行く!」
 トルクの声に、ティセットたちも大いに賛同した。
 六年前。
 東大陸の南部で一つの抗争が終わりを告げた。
 その時に総大将として立っていたのが、“ふた名の英雄”と称される人だ。

 まだ十代という若さで一つ目の称号シュークの名を。
 二つ目は先代のウェデルク皇帝からフェンの名が与えられた。
 故に、“ふた名の英雄”。



 小さい頃は誰もが夢見る英雄称号。
 もちろん夢見たことがある青年二人は、穴が開くほど熱く見つめた。

「本来なら、鞘は黒地に青色の蔦が装飾されとる。
 柄は鱗柄に漆塗。
 長さはなんと、二メルト近付くあるそうじゃ」
「デカ!」
 二メルトといえば、トルクより大きい。

「そういえば、“ふた名の英雄”だって二メルトあるって言うから、かなりの大男だよね」
「南大陸人だっけ?
 向こうの人は巨人だらけなんだろ?
 俺たちなんて子ども同然なんだろうなぁ」

「今どこにいるんだろうね」
 会って見たいなぁ、とルフェラン。
「遠目でもいいから見てみたいよなぁ」
 ティセットも賛同した。

 実は二つ目の称号を得る前には、ここラディンネル国にも立ち寄ったらしい。
 残念ながら、庶民が軽々しく会うことはできなかった。
 元の出身や身分が何であれ、英雄称号を得た途端、貴族も同然になるのだから。



「なんじゃ、ティセット。
 おまえは文官になって、使節にでも選ばれたらよかろうに」
「…………」
「父さん!」
「な、なんじゃ!?」

 ティセットは苦笑いをして、学舎を辞めることを告げた。
 そうか、とシドル氏がため息を付いて椅子に深く座る。
「惜しかったのう。
 あとは算学と史学と……」
「法学です」

 仕方ないんです、とティセット。
 心中でもう一度同じ言葉を繰り返した。
 自分に言い聞かせるように。

 シドル氏は息子を見て大きなため息を付いた。
「このバカも早く辞めんかのう。
 検品のときに限って居らんとは……」
「…………」
「学費を止めてみるか」
「怖いこと言わないでくれる、父さん?」


   *  *


 僧侶にとっては祭りは一日だけだが、一般人にとっては翌日であっても祭りの延長だ。

 トルクを叩き起こして風呂屋に行き、サッパリした三人。
 出店を冷やかしながらも、美味しそうな匂いに釣られて空腹を覚えた。

 腹拵えをしながら歩いていると、学生と遭遇して立ち話などした。
 昨日のトルクの大声でかなり目立ったようで、その話題が多かった。

 もちろん、上等生を見掛けたら隠れた。
 こんな日に嫌な思いはしたくない。