ミーユ!
パパーぁ。
いい子にしてたかな?
うん。
偉かったねぇ。そんないい子のミユには、じゃーん!靴下持ってきたよぉ。
わー、おっきい。
これに、お手紙入れて、ここに飾っておこうね。
うん……
ミユ?どうしたの?
…ママは?
今日はね、ママにはお家でお留守番してもらってるんだ。
そうなの?
うん。明日またママ来てくれるからね。
ママ、おねんねしてる?
え?起きてると思うよ。何で?
つかれたらね、おねんねしないとだよ。
…大丈夫だよ。ママ元気だからね。……ごめんね、ミユ。
パパ?
そうだ、お手紙!早く入れて、サンタさんに読んでもらおうね!
うん。
隆行からきいたミユの言葉に、また私の涙腺は刺激されてしまった。ミユ、ママのこと心配してくれたんだ。ごめんね。やっぱり今日も行けば良かった。ミユに気遣ってもらっちゃうなんて、ママ失格だね。
ミユは優しい子に育った。私たちにだけでなく、先生や看護師さんたちにもとっても優しくできる。だから周りから愛されていて、自慢の娘だけど。見ていて、ちょっと可愛そうかなと思うことが時々ある。
入院生活に文句も言わず、辛い治療にも黙って耐え。まだ、たったの五歳なのに。言いたい我が儘まで我慢させて。一体どれだけたくさんのことを、ミユに諦めさせなければならないんだろう。これから、どんなことをミユから奪ってしまうんだろう。
ミユ、今日はごめんね。明日から、またちゃんと毎日会いに行くよ。だってママね、今日とっても寂しかったんだ。全然元気が出なくて、何にもやる気が起きなかった。
ミユに会って、元気もらってるのはママの方だったんだね。ミユ、いつもありがとう。
病院から急に呼び出され、隆行と二人で先生の話を聴きに行ったのは先月のことだ。必ず二人揃って来るようにとのことだったが、こんなことは初めてで変な胸騒ぎがしたのを今でも覚えている。
あれから、クリスマスのことは考えないようにしていた。お互い約束した訳じゃなかったけど、隆行も話題に出すことはなくなった。
でも、ミユはちゃんとクリスマスの日や、サンタさんに手紙を書くことを覚えていたんだね。どんどん成長していく小さなミユに、私も負けてちゃだめだ。もっと強くならなきゃ。ね?ミユもそう思うよね。
今度のクリスマスが、例え最後のクリスマスになったとしても。楽しかったって思い出を、やっぱり残してあげなきゃ。絶対迎えられるって願掛けして、明日からミユの部屋を少しずつクリスマスモードに飾り付けよう。
ミユのこと考えてたら、自然と笑顔になってる私がいた。ミユ…。ねぇ、ミユ、覚えていて欲しいことがあるの。ママね、ミユに会えてとっても幸せ。ママのところにきてくれた赤ちゃんが、ミユで本当に嬉しい。産まれてきてくれてありがとう。
また つづく。