「さいごのクリスマス」① | My-Hero

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ヒーローに憧れた夢。

カレンダーがだんだんと薄くなると、それとは逆に私達の着る服はどんどん厚くなっていく。半袖で暑いと嘆いているときは、汗をかいて嫌だなーと思っているけど。いざ肌寒くなると、薄着の夏が恋しくなる。

寒さは心を、不安でいっぱいにしてしまうから。どんなに重ね着をしても、夏の太陽には勝てなくて。いつまでたっても、気持ちは冷たいまま滞る。氷が心配に変わって、ずっと心に居座って。この空の厚い雲のように、私はどんよりと覆われてしまうのだ。


なに書いてるのかなー?

ひみつ。

えー、ママにも教えてほしいなぁ。

へへっ。あのね、サンタさんに、おてがみだよ。



サンタさん、ミユのおてがみよんでくれる?



ママ?

え、あ、そうだね。そういえば、もうすぐクリスマスだね。ミユちゃんは、どんなプレゼントお願いしたのかな?

あのね、ゆき。

雪?お空から降ってくる?

うん。ミユ、ゆきであそびたい。

そっかぁ…。

サンタさん、ミユのおてがみよんでくれる?

うん。明日靴下持ってくるね。その中に入れておけば大丈夫だよ。

やったぁ。ゴホゴホ

ミユちゃん、そろそろ横になろうか?少し疲れちゃったみたいだからね。

うん。おやすみ、ママ。

おやすみ。



ミユは、産まれてから一度もこの病院から出たことがない。そしてこれからも、この入院生活が終わる保証はどこにもない。産まれつき体が小さくて、呼吸も弱かった。ミユの泣き声を、その日私は聞いていない。

あれから、ずっと思っていることがある。元気に産んであげられなくて、ごめんね。ずっと思ってはいるけれど、ミユに直接謝ったことはない。言葉にしたら、泣いちゃいそうで。ミユの前では、絶対に泣かないと決めていたから。だから、今まで一度も謝れたことがない。ミユ、こんなママで本当にごめんね。





また つづく。