カレンダーがだんだんと薄くなると、それとは逆に私達の着る服はどんどん厚くなっていく。半袖で暑いと嘆いているときは、汗をかいて嫌だなーと思っているけど。いざ肌寒くなると、薄着の夏が恋しくなる。
寒さは心を、不安でいっぱいにしてしまうから。どんなに重ね着をしても、夏の太陽には勝てなくて。いつまでたっても、気持ちは冷たいまま滞る。氷が心配に変わって、ずっと心に居座って。この空の厚い雲のように、私はどんよりと覆われてしまうのだ。
なに書いてるのかなー?
ひみつ。
えー、ママにも教えてほしいなぁ。
へへっ。あのね、サンタさんに、おてがみだよ。
…
サンタさん、ミユのおてがみよんでくれる?
…
ママ?
え、あ、そうだね。そういえば、もうすぐクリスマスだね。ミユちゃんは、どんなプレゼントお願いしたのかな?
あのね、ゆき。
雪?お空から降ってくる?
うん。ミユ、ゆきであそびたい。
そっかぁ…。
サンタさん、ミユのおてがみよんでくれる?
うん。明日靴下持ってくるね。その中に入れておけば大丈夫だよ。
やったぁ。ゴホゴホ
ミユちゃん、そろそろ横になろうか?少し疲れちゃったみたいだからね。
うん。おやすみ、ママ。
おやすみ。
ミユは、産まれてから一度もこの病院から出たことがない。そしてこれからも、この入院生活が終わる保証はどこにもない。産まれつき体が小さくて、呼吸も弱かった。ミユの泣き声を、その日私は聞いていない。
あれから、ずっと思っていることがある。元気に産んであげられなくて、ごめんね。ずっと思ってはいるけれど、ミユに直接謝ったことはない。言葉にしたら、泣いちゃいそうで。ミユの前では、絶対に泣かないと決めていたから。だから、今まで一度も謝れたことがない。ミユ、こんなママで本当にごめんね。
また つづく。