ここ何日かは大須先生と「おはよう」の挨拶からできて、とってもご機嫌の七江であったのだが。今日はと言うと、朝からどうしても寂しさを隠しきれないでいた。そう、大須先生に会える最後の日が今日だったのだ。
それでも、もしかしたら今日も校門前挨拶キャンペーンの先生は大須先生かもしれない。そう思うと、自転車のペダルを踏む足にも自然と力が入る。愛はすごい。
学校が見えてきた。最後のこの直線を真っ直ぐ進めば、そこはもう校門だ。あと100メートル。わ~、あのツンツンヘアーはやっぱりやっぱり…大須先生ー
おはようございます!
おはよー
七江の想いとは裏腹に、挨拶キャンペーンは早くも呆気なく終わってしまう。自転車に乗った七江は、大須先生のおはようポイントを一瞬で通り過ぎてしまう。
少し手前から気持ちブレーキをかけ、ペダルを漕ぐ力も緩めてはいるのだが。それでも挨拶するのさえやっとの刹那である。その瞬間に有りっ丈の気持ちを込めて、七江は「おはよう」を大須先生へ届けた。
終業式の今日、もちろん体育の授業はない。七江に残された大須先生との接点は、終業式の行われる体育館で先生を見付けることだ。
みーっけ。大須先生のトレードマークであるツンツンヘアーを見付ける作業は、一年近く続けてきた七江にかかれば朝飯前だ。驚く程のスピードで、こなせるようになっていた。
先生は自分のクラスの生徒たちに、まっすぐ並べよーと声を掛けながら歩いている。いいな~。大須先生のクラスの生徒になりたいなぁ。と、いつもの感想を最後の今日もやっぱり胸に抱く七江。
でも担任の中石先生のことも、七江は大好きだった。聞き取り調査の結果を大須先生に見せないでほしいと訴えに行ったときも、中石先生は関係ないのに七江の話を真剣にきいてくれた。根気良く七江の相手をしてくれた。七江は中石先生に本気で感謝している。
色々な想いに七江が浸っている間に、終業式は平然と開式された。然り気無く校歌を唄い、お構いなしに話す校長先生に顔だけ向け、上の空で冬休みの諸注意を耳に流した。七江のこの散漫具合は、ラストに控えるビック・イベントへの緊張からであった。
本日のメイン・イベント、名付けて「ラブラブ!大須先生とのツーショット写真をgetせよ‼~バスケットボールを添えて~」は刻一刻と七江に差し迫ってきているのであった。
また つづく。