勇気、新宿駅にて。 | My-Hero

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ヒーローに憧れた夢。

甲子園へ遠征に行く為、今日はやけに荷物が多い。押入れから久しぶりにコロコロを引っ張りだし、3日分の荷物を詰める。予想以上に時間がかかる。


駅はまだまだ階段が多い。既に腕はパンパンだ。大荷物を抱え、日本で一番乗降する客が多いという新宿駅に着いた。さて、甲子園の前に、研究の成果を発表してくるぞ。


一先ず、このトランクなんとかしようか。目に留まったコインロッカーへ近付く。案外近くにあるもんだ。ラッキー。


しかし、よくよく見ると空きがない。思考停止。完全にフリーズ。他のロッカーへの案内図に、私は脆くも打ちのめされた。


途方に暮れていると、親切なJRの関係者と思しき方が声を掛けてくれた。

「それ、仕舞います?」

「あ、はい。」

「ちょっと遠くになってしまいますが、いいですか?」

「はい。」

わざわざ話し掛けて、案内まで買って出てくれるなんて。なんていい方なのだ。嬉しくなって、思わず人見知り治った!?と勘違いする程の明るい「はい」が口を衝く。


いや、実際コロコロしながら勉強会には出席できない。だから預けるしか道はなく、とても有り難い話である。有り難い話ではあるのだが。


後ろからついて歩くうちに、不安が押し寄せる。エスカレーターを降りるうちに恐怖に刈られる。今、何回曲がった?今、何階降りた?ここは何処?わたしはだあれ?


そう、何を隠そう、私は方向音痴なのだ。地図を読める脳は、産まれてからこの方一度も持ち合わせた試しがない。…でも、言えない。こんな親切な方に、「あの、やっぱり大丈夫です」なんて、口が裂けても言えない。


だがしかし、限界だ。絶対に覚えてないって私。そもそも何処からスタートしたの?あれ何処だったんだ?帰りは私、どっから来るの?ここでは無いよね。完全にここでは無いよね。


二度とお前をコロコロする日はやってこないかもしれない。私が迎えに来るまで、お前はここでじっと待っててくれるかい。会える保証はどこにも無い。それでも、待っててくれるのか。


正直に、今まで来た道を覚えられていないことを伝えようか。でも、せっかくの親切を無駄にしてしまうのではないか。親切だって勇気がいる。この優しい方は、勇気をもって話しかけてくれたんだ。


私も頑張ろう。なんとかなるさ。ハクナマタタ。


今時のコインロッカーってノー・キーなのね。さすが新宿。日本の最先端。使い方まで教えてもらうことに。何から何まで本当に有難うございます。この何分かで、大変お世話になってしまった。


上京して、心細い毎日の中。目を掛けてもらい、とても良くしてもらい。「東京の父」と呼ぶ間柄になる。そんなストーリーが頭に浮かぶほど、めっちゃ感謝してます。


親切な勇気に、心が温まる。新宿駅にて。





ヒーロー、

さてさて、待ちに待った研究成果を発表する時がやってきました。

ヒーローが本気だから

私ももちろん本気です。

では いってきます。