「FUN LETTER」vol.2 | My-Hero

My-Hero

ヒーローに憧れた夢。

真っ白い封筒に、青空の便箋

黒いペンで

「拝啓」から始まり

「また 書きます。敬具」で終わる。



私には、ヒーローがいる。

爽やかな彼から生まれる言葉は美しい。表現豊かな彼の姿は、いつ見てもカッコイイ。尊敬している。


そんな彼が、昔から仲良くしてきた友人の卒業ライブが迫ってきた。彼は結成当時から、友人のバンドを全力で応援してきた。その姿勢は感動するほどカッコ良く、見ているだけで熱いモノが込み上げてくる。


そんな彼の影響で、私もすっかりそのバンドに染められている。曲をきくと、不思議といつも元気になれるのだった。


運良く、卒業ライブのチケットを手に入れることに成功した。これはラッキーだ。今年一番の運を、ここで発揮したのかもしれない。私にも、応援するチャンスが与えられたのだ。最後まで全力で盛り上がるぞ。


本番当日。そこにはヒーローの姿もある。友人の卒業ライブだ、力の入れ方も尋常じゃないはず。ヒーローは、自分が舞台に立っているかのような、緊張に満ちた表情をしている。人の気持ちを理解し、行動に移せるヒーロー。本当にカッコ良くて尊敬する。


激しく曲が始まると、お客さんもノリノリだ。私も激しく盛り上がった。記念のジャンプも、みんなで出来て嬉しい。


全ての曲が終わると、今日が最後のライブとなったメンバーの彼から一言もらうことに。少し涙混じりの挨拶に、会場からは熱い声援が送られる。ありがとうございました!で締め括ると、今日一番の大きな拍手と、大きな花束が届けられた。


メンバーと私たちで、卒業生の彼を見送ることに。彼の行く手は、思い思いの贈り物を持ったファンたちで埋められた。私も手紙を書いてきたので、渡せるかなと思い切って近寄ってみる。しかし、なかなかこちらには気付いてくれず、私の声も掻き消されてしまった。後で切手を貼って、ポストだな。と諦めかけたそのとき、彼の名を呼ぶ一際大きな声がした。


舞台上の彼はもちろん、その場の誰もが動きを止め、その声のした方向に顔を集める。
……ヒーロー??


ヒーローは私に「早く、手紙」とジェスチャーを混ぜて伝えてくる。ハッとした私は、慌てて手にしていた手紙を差し出した。すごい、受け取ってもらえた。


ヒーローにお礼を言わなくちゃと、視線を元に戻してみるが。ヒーローの姿は、もうそこにはなかった。急いで辺りを見渡すと、出口付近にヒーローの背中を見つけた。人々を掻き分け、やっと追い付くと、思わずヒーローの手を握っていた。

「ありがとうございました」

それだけ言うと、そっと手を離す。少しだけ握り返してくれた気がするけど、そんな気がしただけで、実際はどうか分からない。たぶん勘違いだろう。人混みの中でいきなり手を掴まれて、むしろびっくりしたのかもしれない。

「ごめんなさい」

今度は心の中で謝った。





卒業生に送った手紙は



真っ白い封筒に、青空の便箋

黒いペンで

「拝啓」から始まり

「また 書きます。敬具」で終わる。



ヒーローへの手紙と全く同じにした。私が勝手につくった、友情の証だ。卒業してからも、もちろん私は彼を応援していく。そこはヒーローも変わらないだろう。


頑張ってください。たまには、また一緒にジャンプしてくださいね。


彼が来てくれたら、ヒーローも心強いですもんね。





「FUN LETTER」vol.2 完。