魁エール | My-Hero

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ヒーローに憧れた夢。

拝啓 羽ばたく後輩様

10年以上前の話。

可愛がっていた後輩が
他の部活に移籍する。

初めて本人から告げられたとき
私の口から零れたのは
「おめでとう」という言葉だった。

良くもあんな台詞が
サラサラと出てきたものだ。
我ながらつくづく感心してしまう。


自分の可能性を見つけ
夢に向かう後輩に
「おめでとう」を贈るのが
合っていたのか、間違っていたのか
10年経っても分からない。


ただ1つだけはっきりしていること。
それは本心ではない。

辞めてほしくなかった。
同じ部活でしか
一緒に頑張れないと信じていた。
寂しくて寂しくて仕方なかった。

しかし、引き留める勇気はない。
応援する勇気もない。
終わりにされるのが怖かった。

自ら発した言葉と気持ちに
大きな溝を抱え、逃げ出した。

後輩の前では大人でいたかった。
子供じみた先輩を見せたくなかった。

理想と現実に押し潰され、ただただ逃げた。
後輩から逃げることで
小さな小さな自分自身から
脱け出したかったのかもしれない。


10年という時を経ても
正解を見つけることは出来なかったが
逃げたのが間違っていたことは分かる。
後悔している。

逃げることで得られたものは何もない。
何1つとして解決しなかった。


あの頃より、少しだけ大きくなった
自分がいる。
いまならどんな言葉を贈るだろう。

まず、寂しいことを真っ直ぐに伝えたい。
全部本音を曝したい。

そして、応援したい。
違う世界を覚悟した後輩を
羽ばたく後輩を
精一杯応援したい。



10年後の自分から


あの頃の後輩と


自分に


魁エールを贈る


これからもつづく、共に頑張れ。



では いってきます。                           敬具