2013年1月2日午前3時頃、ハッと目が覚めた。4時にセットしておいたアラームを尻目に、ワクワクが眠気に勝った瞬間だ。しかしそこはこれから長い一日が始まるわけで、4時のアラームが起動するまで横になっていた。
4時と同時に犬も起こす。起きてたまるかという目で見られ、二度寝に入った。冷凍のバジルのパスタを食べ、テレビをつける。特に見たいものはやっておらず、何となくテレ東にした。
トイレに向かい爆弾を処理する。爆弾とはつまり大きい方のアレ。いつもと異なる時間帯に行動するため、体内のルーティーンも崩れる。ゆえに朝家にいるうちに処理することが難しく、昼に爆発してしまうことも珍しくない。ただ今年は処理が順調に進んだ。しかしそれでも完璧とは言えず、時限式爆弾のコードは切っても、実は真犯人が遠隔操作をしているみたいなドラマでよくあるパターンのそんな気分だった。
湯船に浸かり体を芯から温める。起きた瞬間から何となく今日は暖かいなという感覚があった。それでももうベテランの域に達してきた箱根観戦。ぬかりなく防寒対策を重ねていく。例年通りエンジのスタジャンで行く。そろそろダサいんじゃないかと頭をよぎり始めたが、もう引き返せない。去年は、下半身にレギンス、ヒートテック、トレーニングスパッツ、黒のパンツ、靴下2枚。上はアンダーアーマーのような生地のナイキのアンダー、ロンT、野球用アンダー、シャツ、パーカー、スタジャンというラインナップで着込んだ。今年は最後の抵抗でシルキードライのシャツも中に重ね、さらにパーカーに替えコロンビアのピンクのアウターを採用した。このアウターが実に温かく目立つ。購入の際店員さんに「冬山でもこれ1枚で大丈夫」と言われたがさすがにそれは盛りすぎだと思う。
5時20分頃、リポDをクイッと空け、前日父からもらった使用期限2009年のカイロを持ち、いざ8年連続8回目の芦ノ湖観戦へ。
いつものように僕が5時47分成城学園前発の急行に乗ることで全てが始まる。箱根湯本へ向かう中、その先頭車両にメンバーが乗車していくというわけだ。だがその前にファミマに寄り道。ファミマにしたのはTポイントを溜めているから。こだわりの焼きそばパンとホットコーヒーを購入。そんなに食べたい気分じゃなかったが、まぁ他に食べたいものもなかったので消去法で決めた。さらに今年はサッポロビールも4人分購入という初の試み。スポーツマンシップに乾杯したいじゃないですか。
電車に乗り込む前、実は不吉なメールがメンバーのケンチから届いていた。“体調を崩してしまい、参加を見合わせる。トイレから出られず、回復したら向かう”という内容。ただ去年も、爆弾処理に手間取るというハプニングがあったりしても何だかんだしっかり来たので、多少の不安はあったがさほど心配はしていなかった。
しかしこれが今年の波乱の1日の幕開けを意味しているとはまだ誰も知る由もなかった。
登戸でシゲと合流。爆弾は未処理のようだ。そして隣の向ヶ丘遊園に到着。本来だったらケンチが乗り込んでくる場所だがその姿はない。そのままドアは閉まった。
町田で長島さんも合流。去年のスーパールーキーはエースとなり、不動のメンバーとなった。ただここでもケンチは乗ってこず、回復を信じ僕らは先に歩みを進めた。
箱根湯本までは休みなく駅伝トークが繰り広げられる(ケンチの心配もしながら)。印象的だったのが、
「駒大の後藤田くんって議員さんみたいな名前だね」
というわけであだ名が後藤田議員になった。
小田原に到着し電車を乗り換える。ただ電車が来ていない。記憶は曖昧だが、ここでこんな時間の間があったっけ?と些細な疑問と違和感が生じる。どうでもいいことではあるが…
小田原から箱根湯本までの区間で最近僕の身に起きた奇妙な出来事の話をする。内容は言えないが、ある手紙が送られてきたという話。笑い話で話したつもりが、逆に重い空気になった。2013年何かがおかしい。
そういえばここで使用期限2009年のカイロを開封した。普通に使えた。これは本当にどうでもいいか。
湯本からはタクシーで芦ノ湖へ向かう。今年はスタートに余裕を持って到着できた。スタート前に先にトイレに行っておこうか迷えるほどに。今年からテントやインタビュー台の配置が変わっていたが、いつものように日の当たるオーロラビジョンの右側を陣取る。センターにはエスキモーのようなおじさんが座っていて邪魔だった。例年に比べ暖かいように感じる。風が少し強いのが気になるくらい。だがこの風が後にレースに大きな影響を及ぼしていくわけだ。
そんなこんなで89回目の継走が始まった。
ふと横を見るとあの中央学院の人たちがいる。中央学院の人たちとは、中央学院をワイワイ応援する迷惑な人たちだ。今までで一番接近している。
駒大OBの長島さん、駒大ファンの僕、東海大ファンのシゲ。今大会、東海大は出場しない。予選会で敗退したときシゲからメールが来た。
「今年は駒澤応援する。駒澤とっぴ」
ヤバい駒大取られた。と焦ったが別にみんなで応援すればいいじゃんということで結局3人仲良く駒大を応援することになった。初めての試みである。
1区 大東大の市田くんと東農大の木村くんをみんなで気に入る。坊主だから。ここで満を持してスポーツマンシップに乾杯をした。8年目で初めてアルコールが登場した記念すべき年となった。そういえば1年目のときは未成年だったんだなぁ。
2区 駒大のエース窪ちゃま(窪田くん)登場。そして東海大(学連選抜)の早川くん登場。さらに國學大の持ってる男・僕似の寺田くん登場。とりあえず早川くんに並走し水を渡す村澤くんという光景を見てうるうる。やっぱり彼らの走りを最後に見たかった。シゲは早川くんが走り終わるのを最後まで見届けていた。その間ずっとトイレを我慢していたらしい。そして寺田くん、2年前に10区で最後の最後にコースを間違え茶の間を爆笑の渦に巻き込んだ彼だ。今年は中大の選手がフラフラになり今にも倒れそうでハラハラしている横を、彼がスーッと通り過ぎていった。笑ってはいけないがつい笑ってしまった。この区間は日大のベンジャミンくんや山梨学院のオムワンバくんの快走が目立った。あまりにあっさり抜いていくため、「みんなサングラスしてるから見えないのかな」というシゲの発言がツボに入った。それぐらい格の違う走り。やっぱりアフリカンの血には勝てないのかなぁ。日本人が世界に勝つためにはやはりカリウキ元気くんみたいなのが出てこなければならないのか。
3区 そんなこんなでディーン元気くんが登場。早稲田の大迫くんに水を渡していた。何か知らないけど得した気分になった。さらにここでゴール芦ノ湖の様子が映される。2年振り3回目、しっかり映された。ピンクの目立つやつ着てきて良かった。

4区 駒大の湯地(ゆじ)くんについて長島さんから紹介される。田舎から出てきた健気な青年に僕らにも情が湧き、声援を送る。「がんばれー!ゆちー!」と。
5区 まさかの湯地くん大ブレーキのあと、山の神不在の山上りが始まる。まず、この区間はランニングでなくTシャツ、欲をいえばロンTで走ってほしいという変なこだわりを語り合う。そして日体大の服部くんの面構えを褒め、早大・山本くんのランニングに首をかしげる。先頭の服部くんが大鳥居をくぐった辺りでゴールの方へ移動する。
優勝の瞬間を見届けミーハー根性丸出しで追っかけ。なので何かしらのカメラに見切れているかもしれません。日体大の優勝インタビューを覗き、いろんなところに顔を出して楽しんだ。取材を受けている國學院・僕似の寺田くんもいた。近くで見るとそんなに似ていなかった。今年はシード落ち。頼むから来年本戦まで上がってきてくれ。


とにかく今年は風が強かった。選手もいかに大変だったかというのも2名の棄権と、去年より15分も遅い優勝タイムが物語っている。テントも倒壊したし、物もたくさん飛んでいた。例の中央学院の人たちが吸うタバコの煙も広がり、横のおばさんがキレていた。そしてタバコとは関係なしにシゲは中央学院を大声でディスっていた。
号外と記録を受け取りいつもの場所で記念撮影をする。だがまだケンチが来ない。連絡もつかない。仕方ないのでケンチのスペースを空けいつもの構図で写真を撮る。さらに長島さんを含めた3人バージョンでも撮った。撮ってくれた青年二人組は自転車でここまで上ってきたというからあっぱれ。
ゴールに向かって一礼し、また来年と、この地を去る。その直後、美人な係員さんが号外を配っていた。同じものをすでにもらっていたが受け取った。ただ勘違いしてほしくないのは、係員の人が美人だからもらったのではなく、あくまで記事の内容が訂正されている可能性があるということを踏まえた上でのアレで、箱根ファンとしては常に正しい情報を入れていなければならなく、決してそういうやましい気持ちで…とりあえず古い方は破棄した。
いつものそば屋・小松屋に向かう途中、関所(トイレ)に立ち寄る。シゲの爆弾が危ないらしい。ここで手を洗っていると、横に中央大学ののぼり旗が立て掛けてあった。白地だしどうみても「これで拭いてください」というフリ。んなわきゃない。
5区のコースをゴールから辿って歩いていると、各校のチアガールとよく遭遇する。その度にシゲが「Hey!Yo!」と声を掛ける。最初これを僕は、ナンパのつもりで言っているのかと思ったのだが、実はチアの掛け声のつもりで言っていたらしい。長島さんも分かっていたらしいが、僕は未だに分からない。
そして小松屋に到着。いつもの出入口が締まっていて潰れたのかと一瞬ヒヤっとしたが、逆側が開いていた。毎年言っていることだが、店員さんが可愛いからではなくあくまで食事を堪能するという意味でこの店を選んだわけで、決してそういうやましい気持ちは全くなく、あくまで…若干頭打ちかな?それよりシゲが焼きもち力うどんを注文する際、「誰に焼きもちするの?」と尋ね、彼女の笑いを誘った。2013年凄い進歩を遂げた。僕は例年通りカツ丼を食べた。勝ちたいんや。
小松屋のもう一つの楽しみと言えば、高校サッカーを見ることであった。特に意識はしていなかったが、そういえば毎年ここで見ているねということでちょっとした恒例となっていた。だが、なんと今年はテレビがついていたなかった。まぁつければいいだけの話なのでシゲは例の店員さんに許可をもらってつけた。その後長島さんに「なんで『今年は見ないんですか?』って聞かなかったの?」と指摘され、常連っぷりをアピールするチャンスを潰しガッカリしていた。
高校サッカーは実践学園vs佐賀商。後半開始と同時にシゲはトイレに立った。すぐ帰ってきたが、実は試合はハイライトで、時計はすでに11分をさしており、「そんなにトイレ行ってた!?」と驚いていた。んなわきゃない。
トイレネタでもう一つ、小松屋のトイレが、小便器と大便器が隔離されていないようで、珍しくない?とシゲに主張されたがとてもどうでもよかった。
小松屋をあとにし、夕日で輝く湖畔を歩いて箱根神社に向かう。選手たちを苦しめた強風というより暴風に近い風は、当然のように湖にも大きな波を作っており、勢いは歩道の方まで及んでいた。ケンチの欠場もあり、2013年文字通り波乱の幕開けとなった。

箱根神社で初詣を済まし、いつものお守りを買い、おみくじで大吉をひき、甘酒を飲む。そういえばここを出る際、長島さんがさらっとダジャレを言った。あまりに寒かったのでこの場で晒そうかと思ったが、寒すぎて何と言ったか覚えていません悔しい。
そして元箱根港まで日の沈んだ湖畔を再び歩く。薄暗さは余計に波の恐ろしさを際立たせる。あまり近づくと波にのまれる危険性があるが、アホなので近づいた。自然の恐ろしさを身近に感じ、芦ノ湖に別れを告げる。
だがここからが長かった。帰りのタクシーが全く捕まらない。長島さんが念のためバス停の列で待ち、僕とシゲで両対抗車線のタクシーをケアする。30分ぐらい冷たい暴風の中に晒され、結局バスの方が先に来た。やはりどこかリズムがおかしい。
ユネッサン(ス)に着き、いつもの可愛い店員さんを確認し、森の湯に入る。携帯クーポンを進められ1800円を1000円にし、1年の疲れを癒す。このとき「ツォー」という言葉が僕らの中で流行り出す。ツォーとはトヨタ自動車に所属するランナーで、ただ音の響きが気に入っただけで特に意味はない。ニュアンスは“ヤバい”に近い感じで使うと良い。動詞としても使えます。
湯船の中で語り倒していたら長湯してしまう。上がって畳の部屋ですっかり待たせてしまった長島さんとコーヒー牛乳を飲み、今年もお疲れ様でしたと五息ぐらいついた。
そんなこんなで下山の準備。しかしタクシーを呼ぶも、出払っていて1時間以上来れないとのこと。しかも次に来るバスも40分後。どうもこうもないのでバスを待つ。時間潰しでお土産屋に行くとちょうど閉店とのこと。やはり何かがおかしい。
20時47分の終バスには無事乗れた。カーブが差しかかるたびに倒れて遊んでいたら酔った。気が付くともう1月2日も終盤である。現実世界が近づいてきたからか、仕事の話になる。現在小学校1年生の先生をしているシゲがいろいろと教えてくれた。1+1を教えるのも大変で、さらになぞなぞをやるにも、なぞなぞというものを教えるところから入る。またうんちとかおっぱいのワードで大爆笑で、子供たちになぞなぞを作らせると、活発な子が「赤ちゃんにとって大切なものはなんだ?」「正解はおっぱい!」これでドッカーンなるらしい。ここで僕は主張せずにはいられなかった。
「大人にとっても大切だろ」
バスは箱根湯本に到着。電車は行ったばかり。次は30分後。やはり少しずつリズムがズレているような気がする。中心のメンバーが揃わなかったため、真ん中で起きた狂いが徐々に周りの渦に影響を及ぼしていく。そんな感じだった。そういえばケンチのいなかった1年目は雨だった。ゴールにも間に合わず見届けられなかった。
最近読んでいるミステリー小説では奇妙な月が物語の一つのポイントだった。電車の窓から空を見上げると、月は不気味に赤く染まっていた。
なんて日だ!(cバイきんぐ)
今年はなぜか1日が特に早く感じられた。帰るのもあっという間だった気がする。二人とはいつも通り「良いお年を」でお別れした。こうして僕らの2013年は幕を降ろした。
波乱続きの2013年の2日目。
逆に悪いものを全て出し尽くしたとプラスに考えたい。
むしろ印象的な1日。
いい思い出となった。
来年はケンチも復帰するだろう。
だからこれからもずっと続けていく。
何が起こっても箱根駅伝だけは譲れんのです。
See You Next Year!
箱根駅伝観戦記2014~復帰と炎上~へつづく