冷凍のライスバーガーをチンして食べ、風呂に入る。これから向かう芦ノ湖は想像以上に極寒なため、ここでまず身体を芯まで温めないと命取りになる。
風呂場のテレビをつけると「お願い!ランキング」の「ベストカップUSA」がやっていた。ベストカップUSAとは、あるアーティストの人気曲ベス ト5を紹介していくコーナーで、今回は米米クラブだった。他の歌紹介番組と何が違うのかというと、曲を紹介してくれるのがセクシーな女の子なのだ。しかも 上位にいくにつれ胸の大きい娘が出てくる。だから「ベストカップ」なのだ。ただ勘違いしてほしくないのが、女の子目当てでこれを見ているんじゃないかと思 われているということだ。あくまで米米クラブというアーティスト性に惹かれた上でのアレなわけで決してそういうやましい気持ちはないのだ。そして気になる 順位は3位「愛してる」2位「君がいるだけで」1位「浪漫飛行」だった。ただ、映像を見ながら僕の米米とクラブも浪漫飛行しそ…言わせねぇよ!
昨年の観戦記に前回何を着ていったか書いてあるので、それを参考に着替え始める。ただ今回はさらにパワーアップして厚着した。リュックには毛布とホ カロン。上はアンダーアーマー、ロンT、野球用アンダー、今年はこの上にもう1枚シャツを加えた。そして青学パーカー、エンジのスタジャン。下はスパッツ 2枚にさらに太陽の光を吸収するようにジーパンではなく黒いパンツに変更、最後に厚手の靴下とその下にもう1枚重ね完了。
エンジのスタジャンは全然暖かくないのでできればダウンを着て行きたい。しかし一つのこだわりと宣言してしまったので今さら変更するわけにはいか ない。男の意地とプライドとロマンとあといろいろなのだ。みんなの期待も裏切るわけにはいかない。誰も期待していないことは重々承知なのでツッコまなくて 大丈夫です。
芦ノ湖観戦は今回で5回目。1年目にいた選手はみんな去年卒業しており、もう誰一人残ってない。そんな時の早さを改めて実感する。ただ1年目は朝 から行ったわけではなく、実はゴールシーンすら見ていない。朝から眠い目をこすって行ったのは2年目からで、そのときの1年生が今の4年生。あの初々し かった彼らもとうとうラストイヤーなのかと感慨深くなった。
家を出たのは5時15分頃。しかし忘れ物に気づいてすぐ引き返す。サングラスを忘れた。実際サングラスなんて必要ないのだが、なんとなくしたい気分だった。
途中コンビニに寄ると、中で店員が変な踊りをしていた。客がいないからって気を抜きすぎである。焼きそばパンが食べたい気分だったが、昨年同様なかった。
午前6時6分町田発の1両目が僕らの集合場所。誰一人遅れることなく合流できた。ただシゲがサングラスをしていた。カブった。
ここからしばらく駅伝トークに花を咲かせ、議題はいよいよ「今年のテーマソング」へ。毎年何かしらの曲が僕らの中で流行り出す。流行り出したらその日1日頭から離れなくなってしまう。だから面白い。そして思い出に残るのだ。
そして僕がある歌を口ずさんだ。
「♪ランランラン ランドセルは テンテンテン 天使の羽~」
今年のテーマソングは満場一致でこれになった。しかしこの先この曲が歌われることはなかった。
箱根湯本の駅に着いたのは7時30分頃。ずっと座っていたため足腰が痛くなる。実はこの前日と前々日に、気合いを入れるため20キロほど走ってきた。走ったからといって特に何も起きるわけではないのだが、おかげで気合いは入った。その代わり激しい筋肉痛も残った。
ここからはタクシーでゴールを目指す。バスを使うと8時のスタートに間に合わないのだ。タクシーの中ではシゲが運転手さんにこの辺の宿のことをし きりに聞いている。来年を見据えた情報収集だ。そして何度かこっちに「それ良くない?」と振り、僕も一応うなずきはしたが正直何も聞いていなかった。
芦ノ湖のゴールにはしっかりスタート前に着いた。快晴。富士山も凛々と目の前にそびえ立つ。改めて自分の晴れ男っぷりには驚かされる。晴れていて も寒いのに、もしこんなところで雨なんて降ろうものなら、それこそ本当に死んでしまうかもしれない。だから天気の良し悪しは文字通り死活問題なのだ。
僕らはオーロラビジョンの前を陣取り、号砲を待った。そして86回目の継走は始まった。
1区、僕が応援している駒大とシゲが応援している東海大が揃って遅れた。お母さんの買い物についてきた子供のように早くも集中力はなくなり興味は 別のところへ。最近修得したものまね「駅伝解説・瀬古利彦」と「福山雅治が絶対言わなそうなこと”チンチンかいぃ”」を披露したら好評だった。
2区、東海大のスーパールーキー村澤くんと駒大のエース宇賀地くんが揃って猛追。集中力回復。
しかし3区は駒大、4区は東海大がブレーキ。
もうええわ。どうも!ありがとうございました~!
そういえば毎年来ていると変な顔馴染みができる。いつも中央学院大のタオルを巻いている連中がその一例。このおっさんらがマジうるさくて邪魔くさ い。ただそれは去年までの話で、大エース木原くんが卒業してしまった今、もはや彼らに盛り上がる瞬間は訪れることなく中央学院は下位での争いを強いられて いた。ヘッ!
そしていよいよ5区。新・山の神(って書くと新おにぃみたい)東洋大・柏原くん登場。駒大はエース格の深津くん登場。ここで「私が駒澤の5区、深津だ。深津絵里だ」("ガキ使・笑ってはいけない"より)をやったらややウケだった。
とりあえずトップの選手が箱根神社の大鳥居をくぐったくらいにゴールに移動するとちょうどいいタイミングでフィニッシュの瞬間が見れるというのが これまでの経験で分かっていたことである。しかし今年は考えが甘かった。柏原人気は想像をはるかに超えており、今回この芦ノ湖に例年以上の数の人が詰め掛 けていた。特にゴール地点など人で溢れ返っており、日本人離れした僕の身長を持ってしても前が見えなかった。仕方がないので、片手を伸ばして写真だけでも 撮ってやろうとデジカメを持ち上げた。ただ、これまでの写真を見ていただければ分かりますが、そこはやはり「ゴールの瞬間を撮る天才」と呼ばれるだけあっ て天才的なゴールの瞬間を撮りました。
柏原くんのゴールと同時に僕はシゲたちから離れ一人別行動をとった。柏原くんを追跡し、潜入取材を試みた。というかただのミーハーだ。そしてちょ うどテントに引き揚げようとしているところに遭遇。ここぞとばかりにデジカメで撮ってやった。ばっちり右のエラを撮った。するとポケットの携帯が震える。
ぬまっちから「今映った」とのメールが。テレビに映ったらしい。どうやらデジカメを嬉しそうに構えている姿を全国のお茶の間にさらしてしまったよ うで、嬉しさ半面恥ずかし乙女。テレビに映すなら言ってくれればちゃんといい顔作るのに。このことをシゲたちに報告したら、シゲは最初は羨ましがっていた が「これからテレビがオレをほっとかなくなる」と言って強がっていた。
そしてここからもうちょい単独行動。早稲田の後輩である矢澤くんや八木くんに会いに行き、ダニエルくんを観察。
再びシゲたちと合流すると手には豚汁が。あっちでもらえるよとは言われたが「別にいらねぇし」と強がってみる。そのままいつもの感じで写真を撮り、ゴール地点をあとにした。
これから向かうのはいつものそば屋。もう常連だ。言っとくが店員さんが可愛いからではなくあくまで食事を堪能するという意味でこの店を選んだわけ で、決してそういうやましい気持ちは全くなく、あくまで…でもやっぱり可愛かった。去年は親子丼を食べていい年にならなかったので今年は山菜そばを食べ た。果たしてその結末は…。
食事を済ませ今度は箱根神社へ。湖に沈まんとする夕日を左に見ながら湖畔を歩く。このときにそれぞれが思い思いの歌を歌ったりネタをやったりする。そして今年はここである一大ムーブメントが巻き起こる。
「ねぇ、あなたのもあるんでしょ?どれ?」
「あれ」
「へぇ~すご~い。弾けるんでしょ?」
「まぁね」
「じゃあ聞かせてよ」
「あのなぁ」
「お願い!お願いお願い!お願~い!」
「よし!じゃあお前歌えよ」
「えっ、ダメよ。アタシ、音痴だもん」
「ちょうどいいじゃん。知ってる曲だから」
「♪テ~レテ~テレテテテ~(バイオリンの音)」
「♪ひ~と~りぼぉおちぃ~…」
「ガチャ(ドアの音)シーッ!」
「♪どんなさぁ~みしぃ~ときだぁ~って…」
「♪ズンチャ ズンチャ ズンチャ ズンチャ」
「♪カントゥリーロ~」
「ハハハッ!パチパチパチ」
「月島雫です」
「聖司くんにこんな可愛い友達がいたとはねぇ」
「聖司?あなた天沢聖司?」
・
・
・
とまぁこんな感じでこれが何のことか分かる?
そうです。耳をすませばの名シーン。これをおもむろにやったら思いのほかウケてしまい、僕らの間でハマりにハマってしまった。このときランドセル の歌は完全に頭に残っておらず、このカントリーロードが今年の象徴する曲になったことは言うまでもない。ただシゲが木村カエラの「Butterfly」が 頭から離れないとしきりにアピールしてきたが、全く流行らなかった。
箱根神社で初詣をし、お守りを買った。毎年ここで「勝守」を買っているのだが、去年はちょっと欲張って値段の高めのお守りを買った。そしてあまり いい年にならなかった。だから今年は勝守に戻し、勝ちにいく。そして早速おみくじで大吉を引き、パブロンもびっくりの即効性に今年はなんだか私の時代が築 かれるのではないかと確信させる一打となった。
ここからバス停に戻るため再び湖畔を歩く。毎年このとき日は沈んでおり、最も寂しく切ない時間だ。
例年通りユネッサンの温泉に寄り、2009年の疲れを取りきる。そして湯船でシゲとどぶろっくの名曲「放課後の純情」を熱唱した。
帰りは特急ロマンスカーを利用。初めて乗った。これがおれたちの今年の進歩だ。
という感じで今年の箱根駅伝も終わってしまいました。楽しい瞬間はあっという間に過ぎてしまう残酷さを毎年このときに感じてしまいます。実は前日 の夜中に目から涙が溢れてしまいました。楽しみな気持ちと寂しい気持ちの狭間に揺られて。だからこそこういう幸せなときを一つ一つ大切にしていきたいと思 いました。
毎年のことながらこの日たくさんの感動と笑いをもらいました。
ただ、一つ大事なものも失いました。
See You Next Year!
箱根駅伝観戦記2011~友情の崩壊を救った10区の奇跡~ へつづく
※この年は幼稚園からの付き合いであるケンチとの間に初めて亀裂が入った年でもありました。仁義を欠いちゃあこの人の世は渡っちゃいけねェんだぞといったメッセージ性を込め、本文に彼の描写がありません。今となっては笑い話であり、逆にいい思い出です。
