「おいしいかどうか」というのは個々人の主観によるもの。だから今回のブログはまさにblackheathの主観に基づいたものです。「こんな考え、おかしいわー」という反対意見も大歓迎です。その際はコメントでなぜ、どんな風になど皆さんのご意見やお考えを詳しく教えて下さいね。
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うちの母から彼へのバレンタインギフトは英国屋 のフレーバーティでした。英国屋 は関西を中心に展開している、いわゆる昔ながらの喫茶店で、そこのオリジナルティーがうちの彼の大のお気に入りだからです。
なにゆえに英国人が「英国屋 」という名の日本の喫茶店の紅茶を愛すのか。そしてわざわざ日本から送ってもらうのか。日本の人は理解に苦しむに違いない。だって、日本の人は「英国はおいしい紅茶の国」って信じてるでしょ?
紅茶の国なのはそうなんだけどね。みんな、一日中、ティーをがぶがぶ飲みまくってるんだけどさ。でもおいしいかと言われると微妙。
こっちのティーもそれはそれでおいしいっちゃ、おいしいんだけどね。でも日本でフォションだ、フォートナム&メイソン、レシピエ、マリアージュ・フレールなどなどと、薫り高い、一杯を楽しむ紅茶の味を知ってしまった舌からすると、一般的に英国の紅茶はおいしくないんよー!そんなんと比較すること自体、間違ってる?
昨年、日本からmarilatteちゃんが遊びに来てくれた際、うちで「お紅茶飲んでもいい?」って聞いてくれた時ほど、恥ずかしい思いをしたことはありません。
この国の一般家庭には、基本的にそんな「お紅茶」って呼べるような代物ないねーん。絶対、日本人の方が紅茶の味とバラエティーに対する思い入れが深いです。
スーパーの紅茶コーナーを見ても、日本のそこらのスーパーの方が選択肢が多くて、充実しているんじゃ、と思わないこともない……。いや、これは哀しくなってくるから、考えないようにしています。
まず第一に、こっちでは大体がティーバッグです。リーフティーも売っていることは売っているけれども、この1年の間では、ひとまずそんなんを淹れている英国人にはお目にかかったことがない。
茶葉の種類にもこだわっているようには思えません。イングリッシュブレックファースト、セーロン、アッサム程度かな?フレーバーティは基本、存在していません。
こっちの人はあの葉っぱというよりは、粉と化した茶葉が詰まった丸いティーパッグを数秒マグカップに浮かせて、それにミルク入れたら終わりだよ。「葉っぱの薫りを楽しむ」とか、「ジャンピング具合を見て数分待つ」なんかじゃないです。
まあ、これはこれでおいしいとも言えるけど、日本で慣れ親しんでいた、楽しんでいた「紅茶」とは別の飲み物だなあ。ティーです、ティー。日本の家でむっちゃ適当に淹れる緑茶と同じ扱いと思ってもらったらぴったりかも。
私の職場が入っている建物の同じ階に、こちらの大手スーパーであるセインズベリーズにセインズベリーズブランドの紅茶を卸している会社Finlays が入っています。うちがいつも買っているセインズベリーズのフェアトレードティーもよくよく見たら、ここが生産しています。
Finlays にはティーテイスティングのラボラトリーがあって、いつも白衣を着たティーマイスターのおじさんやお姉さんがいろんな紅茶のテイスティングをしています。ガラス越しに見ているだけでも面白いよ。
Finlays にお呼ばれして、お邪魔したそのラボラトリーでのティーマイスターの説明を受けつつのティーテイスティングでのこと。
ここのティーマイスターが「うちが取り扱っている茶葉はこのランクのです。これより良い物は英国では望まれていないんです。商売になりません。本当はミルクも入れない方が茶葉の味が引き立っておいしいけど、英国人にそんなことは言っても無理ですね。」と差したのは、むっちゃ中庸も中庸、味重視っていうラインよりはお値段重視ライン寄りの茶葉でした。
この話を聞いた時、「はあー、そっかー。国民自体がそんなものを望んでないんだから、仕方ないのかー。おいしいお茶を飲みたかったら、わざわざ高級食材店に行けって話なんだなあ。」と現実が見えたように思いました。
テイスティングテーブルにはずらっとかなりの種類の茶葉が並べられていて、圧巻でした。一番最初に一番高級なお茶を試し(普段の業務のテイスティングでは登場しないクラス)、最後に行き着くのがこの世で出回っている一番ペーなお茶だったんだけれども、テイスティングしている間はそんな説明は受けず。
そのど真ん中より多少下ラインが普段、英国のスーパーで私たちがお目にかかるティーとのこと。
一番高いお茶は中国のホワイトティーというので、薄い黄色っぽいお茶でした。そこはかとなくあまーい味がしたなあ。
玉露も最初の方に出てきました。紅茶と緑茶自体、「発酵」という差異があるから当たり前なんだけれども、品質が下がってくると、だんだん味が渋めになってきてました。
ちなみに、最後のぺーなお茶は本当に葉っぱの形はなく、砂より小さいような粉だった。ティーマイスター曰く「他のティーバッグに入れた茶葉のさらに残りカスです」だって。衝撃!
元々、ティーバッグに使われてるのって、ふるい分けの最後に残った、等級で一番低い粉のように細かい茶葉でしょ?それのカス……。苦いはずだよ。
緑茶、紅茶、ハーブティなんであれ、お茶をがぶがぶ飲むよりは、一杯を味わいながら飲みたいと思っています。その時点で英国の人とは趣向が違うのかなあ。
今は昨年の夏、パリのマリアージュフレールで 買った「マルコポーロ」を朝一番で楽しんで飲んでいます。おいしい一杯の紅茶は、それだけで朝の慌しさを半減させてくれるようなところがあるように感じます。
えらく長くなってしまったけど、最後に。日本では結構、定番のお稽古事である「紅茶」も、こちらでは存在すらしていないって、知ってた?紅茶を勉強したいなんて英国人に言ったら、「はあ?」って変な顔をされるのがオチ。
それならいっそのこと、日本の人に習ってみるのも、状況を逆手に取った感じで面白いかな?日本でたくさん紅茶本を出版されているスチュワード麻子さんのやっている紅茶スクール、インフューズ に行ってみるのも、英国にいるからこそ出来ることかなあ、なんて思っている今日この頃です。
*お茶と紅茶についてのウィキペディアの記事も、知識として結構面白いです。ご参照まで。