国鉄民営化とは何だったのか? 第3次長期計画とローカル線 | 鉄道ジャーナリスト加藤好啓(blackcat)blog

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福祉と公共交通の視点から、鉄道のあり方を熱く語る?
blackcat こと加藤好啓です。
現在の公共交通の問題点などを過去の歴史などと比較しながら提言していきます。
随時更新予定です。

昭和39年、国鉄の決算は赤字を記録

 

昭和39年の国鉄決算は、再び赤字決算となりました。

当時は高度経済成長のさなかであり、鉄道輸送は右肩上がり、第2次長期計画もその変更を余儀なくされ第3次長期計画が実行されることとなりました。

当然こうした費用は全て国鉄が自前の資金として計画することとなっていました。

新幹線建設然り、5方面作戦と言われた山手貨物線の旅客線化や横須賀・東海道線分離などもその計画の一環であり、通勤・通学輸送の改善などに積極的に取り組むこととなるのでした。

地方ローカル線の建設は、新たに設置された、日本鉄道建設公団(現在の、 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 )に任せる事となったのです。

ただ、ここで注目しなくてはいけないのは、現在の湘南新宿ラインが走る区間はこうした時代に整備された国鉄の遺産と言えるものなのですが、本来であればこうした改良はインフラ整備ですので、国費として賄うべきなのですが、こうした改善費用は国鉄ニヨルジマエ資金で調達するとされていました。

財政投融資もありましたが、多くは利用債というかたちで発行された債券によることとしていました。

国債同様、政府保証が付くと言うことですから購入する方は安心感があるわけです。

さらに、鉄道建設公団は独立した法人で、その目的は鉄道建設なのですが、鉄道建設公団が建設する路線は4つに分類されていました。

  • A線  地方開発線
  • B線  地方幹線
  • C線  主要幹線
  • D線  大都市交通線
以上の4つに分類されていました。
これ以外にも、海峡線 通称E線 新幹線鉄道 G線、民鉄線のP線が追加されますが、基本は上記の4線でした。
A線、B線が地方開発路線として、無償譲渡路線、C線、D線が有償譲渡路線とされていました。
当然のことながら、無償譲渡路線のAB線が増えると言うことは国鉄にしてみれば運営するだけで経費をまかなえない路線が増えることであり、更に経営を圧迫することとなるのですが、こうしたことに対する補填は独立採算制の建前から国鉄の内部補助によることとされていました。
 
国鉄は赤字83線の廃止に取り組むが
国鉄では、昭和43年以降不採算のローカル線を選定して、廃止する方向で動き出しますが、路線を廃止すると言いながらも新線が開通するという矛盾から廃止交渉は進まず、鉄道を廃止して道路の改修用地にするなどとする自治体は少なく、結局有耶無耶のうちにローカル線廃止は立ち消えとなってしまいました。
 
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鉄道建設公団とはもう一度整理すると
結局ここで選定された赤字83線の殆どは、第1次・第2次地方交通線の指定を受けることとなり、廃止の憂き目を見ることになりますが、これ以外にも鉄道建設公団に関して国鉄の矛盾はありました。
それは、上記の鉄道建設公団のスキーム(枠組み)は、国鉄と国が折半で出資金を出すというものでした。
出資金と言っても一時的なものでは無く毎年払う会費のようなものとなり、毎年出資金という名目で支払い、かつCD線にあってはさらに分割で譲渡されるというのもいささか不可解と言えそうです。
なお、鉄道建設公団の建議として、以下のように書かれていましたので抜粋してみたいと思います。
 
2.鉄道新線の建設は、日本国有鉄道の公共的使命から、従来、その負担のみにおいて実施されて来た所であるが、独立採算制の建前から、とかく企業性の範囲内に制約され勝ちであつて、これを被極的に推進し得ないのが実情である。
しかるに鉄道新線の建設は一般国民に与える有形無形上の便益の増大と国家経済に与える効果の多大なるとに鑑み、国家的な政策上の見地から論ずべきであり、日本国有鉄道の企業的立場からのみこれを論ずべきでないことは明らかである。
従って、この矛盾解決の方法としては、鉄道新線の建設を道路、港湾整備等と同様に政府の公共投資とする以外にないものと思料せられる。
よって、今後の新線建設については、政府が公共事業として、その主たる財源を負担すると共に、日本国有鉄道はその公共性の立場から、地方公共団体はその受益の立場から、それぞれ財源の一部を負担するを当と認める。
なお、「日本国有鉄道研究家 加藤好啓 日本国有鉄道 備忘録」に以下の文言全文をアップしましたので、併せてご参照ください。
 
国鉄では、赤字必須の路線も、運営しなくてはならない反面、当初の建設計画には無く、国鉄側輸送需要の必要性から計画された根岸線など、公団に分離することで、建設が進んだ例もありましたが、これらはむしろ例外で多くの不採算路線が国鉄に押しつけられることとなるのでした。
 
続く
 


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日本国有鉄道研究家・国鉄があった時代

 

 

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