彼の指が好きだった。
彼の背中が好きだった。
彼と何度も抱き合い、
何度も愛を確かめ合った。
夫を裏切り、
彼女を裏切り、
得たモノは何もなかったのかもしれない。
あの頃、
抱き合う姿を鏡で見るたび、
私は、
生まれてきたことへ何度も何度も感謝した。
自分の体が、
こんなにも反応し、
絶頂を味わい、
興奮と、快感に満たされる日が来るとは思ってもみなかった。
あの時、
私はこの愛が本物ではないことは、
わかっていた。
その関係にどっぷり浸かり、
彼と離れられなくなっていたのは、
心ではなく、
体のほうなのは、
十分にわかっていた。
体は正直で、
彼から書類を渡される時も、
彼が患者さんに話しかけるときも、
仕事をしている間、
四六時中、
彼の動き一つ一つに、
魅了されていた。
そして、
彼が欲しくなる。
頭でも、
心でもわかっているのに、
体が彼を欲しがっていた。
彼を一日に、
5回求めたこともあった。
それでも、
まだ足りなくて、
彼の体が欲しくて欲しくて、
眠れない夜もあった。
私たちは、
どこででも抱き合った。
まるで、理性を失ったかのように、
昼でも夜でも、
砂浜でも、車でも、
同僚が寝ている横でも、
時間があれば、抱き合った。
彼との関係は、
その一つ一つを思い出すには、
時間がかかる。
それは、
私が、人生の中で、
一番
消したいと思っているから・・・。
でも、
あまりにも自分が夢中になったあの出来事を、
無理やり消そうとするにはパワーがいるから、
消してしまう前に、
思い出すたびここに綴っていこうと決めた。