労働基準法改正案で有給休暇を会社側から取得させるように働きかけることが義務付けられる可能性があります。

ソース

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150107-00050071-yom-soci


読売新聞は見出しを時期指定義務付けへ」

と題していますが、正しくは時季指定義務付けへ」だと思います。

なぜなら、以下のような条文になっているからです。


現労働基準法39条

1項~4項省略

5項

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。


これとは違う意味でやはり「時期」という言葉をあえて使うならそのような説明が必要だと思います。


さらに、記事では、


「有給休暇は、休んでも賃金が支払われる制度で、勤続6か月以上で、定められた勤務日の8割以上出勤した従業員が原則として年間10日から20日間取得できる。勤続年数に応じて日数は増える。パート従業員でも、週5日以上勤務などの要件を満たせば、取得することができる。

と書いていますが、これを法律を知らない人が素直に読めば、パート従業員は週5日以上働かないと有給休暇を取得できないのではないかという誤解を与えます。


正確には「パート従業員でも、週5日以上勤務などの要件を満たせば、正社員と同様の日数を取得することができる。」としなければなりません。


極端な話週1日勤務のパートさんでも有給休暇は8割出勤の6か月継続勤務で1日の有給休暇が発生します。これを「比例付与」といいます。


法律の専門家ではないとは言え、不正確な記述は書かないことよりも有害になる恐れがあることを肝に銘じてもらいたいものです。


新聞の夕刊には1面で掲載されていました。




新聞批判はここまでとして


労働者にとって朗報と言ってよいでしょうか。

私は少し疑問に感じています。


現実問題として労働者の側から請求することがなかなかしづらいというのはよくわかります。しかし、会社から働きかけて取得させるというのはあまりにも過保護だと思いますし、濫用のおそれがあります。



過保護だというのは、最近の労働相談には会社が○○してくれない。という類の会社の不作為を訴えるものが割合といて多くなってきているという点です。

「休憩時間を与えてくれない」「○○さんが挨拶をしてくれない」「病気で休んでいるのに会社からお見舞いの電話をくれない」などです。


労働基準法は使用者と労働者が対等な関係であることを謳(うた)っています。


労働基準法2条

労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。

ただ、実質的に交渉能力や知識において労働者が劣勢であることを考慮して労働者保護の規定を置いているのが労働基準法です。

先ほどの相談では自分から権利を主張しなければ、天から降ってくるものでもないのでできないというのは厳しい言い方ですが、いささか子供じみています。
中には「そろそろ休憩をとったらどう?」と言ってくれたり、積極的に挨拶をしてくれる上司や同僚がいることもありますが、それはその人が「いい人」なだけで全員にそれを期待してはいけません。
これはいわゆる今の「ゆとり世代」の人を責めるものではなく、どの世代にもみられる傾向があります。


他方会社の濫用の危険ですが、会社側から有給休暇の時季を指定することができるとすると、必ず会社に都合のいい日に取得するように誘導するでしょう。先ほどの記事の図にかっこ書きで「希望はきく」とありましたが、それでいいのであれば、希望はきくがそれに従わないということも当然可能です。私が会社の顧問であれば、「労働者の希望を聞くだけ聞いてあとはこちらの都合のいい日に指定すればいいです」と答えます。
もっと悪く使おうと思えば、会社側が気に入らない従業員を仕事上重要な時に有給をとりなさいといい、仕事からはずす運用をするかもしれません。そして仕事上の成果を上げさせず評価を低いものにして退職に追い込むというやり方もあるかもしれません。

本来有給休暇は労働者の疲労を回復させるためにあるものです。そして疲労のたまった時にリフレッシュのために旅行に出かけたり、家でのんびりしたり過ごすためのものです。ばりばり働きたい人はあえて取得せずに働けば言いわけです。そのような人を会社が評価するというのも自由です(ただし、有給休暇を取得する人を不利益に扱ってはいけません)。

正月休みのように多くの人が希望するしないにかかわらず休日が続くと体調を崩すという人も多いのではないでしょうか。

私は、会社側であれ労働者側であれ「自立」と「自律」を基本に労働問題をとらえています。いつ、どれだけ、どのように休むかというのは自らの意思で決定してこそ有意義に過ごせるし、自立した大人であると思います。