前作の『The Blues Is Alive and Well』以来、4年振りに新作がリリースされました。現役バリバリのブルーズマン、バディ・ガイ(Buddy Guy)の『The Blues Don’t Lie』です。
元々の持ち合わせていたダイレクトでストレートな味わいはそのまま維持して、年輪を重ねて”深み”と”極太さ”をまとい、今や生きるブルーズのレジェンドにまで昇り詰めました!
86歳になりますが、相変わらず豪華なゲスト陣を招いて素晴らしいコラボレーションを聴かせてくれます。
アルバム・タイトルが全てを物語って言ますね、「ブルーズは嘘なんてつかない!」。
前作同様にドラマーであるトム・ハムブリッジ(Tom Hambridge)がプロデュースに当たり、メイヴィス・ステイプルズ(Mavis Staples)、エルヴィス・コステロ(Elvis Costello)、ジェイムス・テイラー(James Taylor)、ボビー・ラッシュ(Bobby Rush)、ジェイソン・イズベル(Jason Isbell)、ウェンディ・モートン(Wendy Moten)と言った幅広いジャンルのゲストが客演しています。
確か、年齢的な理由で大規模なワールド・ツアーからは引退しましたが、今年の6月から全米各地を回る”Buddy Guy Damn Right Farewell Tour”をスタートさせて、ラスト・スタンドにするようですね(残念ですが・・・・)。
今回のアルバム・リリースに際してのインターヴューでは、
「B.B.King、Muddy Waters、Sonny Boy・・・みんなに、俺が生きている限りはブルースを存続させるんだ」
と、約束したんだと話しています。
もちろん、86歳ですから”衰え”は明らかであり、本人曰く
「今の私はステージから歩いて降りることさえままならない。だけど、ベストなプレイを尽くす気は失っていないんだ!」
と言うことですが、少しでも長くあの姿を目に焼き付けたいと思います。。
とにかく、雰囲気一発というギタリストではなく、色々なオリジナル技を編み出しているプレーヤーですね。 長3度の域まで達するチョーキングを、スタッカートでピッキングしながらゆっくりとチョーク・ダウンさせ、敢えてピッチを外して独特のビビリ音を出すやり方。
また、異なった音やコードをピッキングせずにグリッサンドさせて得るレガート・スライドや、いわゆる連続チョーキング、アメリカでは”Milking the Bends”(搾乳チョーキング)と呼ばれています、はお得意技です。
□ Track listing;
*) All songs written by Buddy Guy, Tom Hambridge, except where noted.
1. "I Let My Guitar Do the Talking" (Buddy Guy, Tom Hambridge) – 4:26
2. "Blues Don't Lie" (Hambridge) – 3:54
3. "The World Needs Love" (Guy) – 5:30
4. "We Go Back" featuring Mavis Staples (Richard Fleming, Hambridge) – 4:39
5. "Symptoms of Love" featuring Elvis Costello (Fleming, Hambridge) – 3:37
6. "Follow the Money" featuring James Taylor (Hambridge, Gary Nicholson) – 3:41
7. "Well Enough Alone" (Fleming, Hambridge) – 4:12
8. "What's Wrong with That" featuring Bobby Rush (Fleming, Hambridge) – 5:25
9. "Gunsmoke Blues" featuring Jason Isbell (Fleming, Hambridge) – 3:08
10. "House Party" featuring Wendy Moten (Fleming, Hambridge) – 2:59
11. "Sweet Thing" (Joe Josea, Riley King) – 3:00
12. "Backdoor Scratchin'" (Hambridge, Nicholson) – 3:54
13. "I've Got a Feeling" (John Lennon, Paul McCartney) – 4:01
14. "Rabbit Blood" (Fleming, Hambridge) – 4:43
15. "Last Call" (Hambridge, Bill Sweeney) – 3:33
16. "King Bee" (James Moore) – 2:44
□ Personnel;
Produced by Tom Hambridge
Musicians;
Buddy Guy – guitar, vocals
Rob McNelley – guitar
Kevin McKendree – Hammond B3 organ, piano, Wurlitzer electric piano
Reese Wynans – Hammond B3 organ, piano, Wurlitzer electric piano, Fender Rhodes electric piano
Michael Rhodes – bass
Glenn Worf – bass
Tom Hambridge – drums, percussions, tambourine, backing vocals
Guests;
Mavis Staples,Elvis Costello,James Taylor,Bobby Rush,Jason Isbell,Wendy Moten
バディ・ガイ(Buddy Guy)は、音楽業界に対してブルースを除け者のように扱うことをやめるよう求めています。米国では特にラジオでは、ブルースは専門番組や公共放送、衛星放送に委ねられており、主流メディアのサポートがないことにガイは憤慨しています。
米ビルボード誌のインタビューの中で、こう話しています。
「ブルースは、今や除け者のようなものだ。皆に、マディ(Muddy Waters)やハウリン・ウルフ、B.B.キング ほか、すべての人たちを忘れてほしくないから、私はブルースをやり続けてきた。でも、大きなFМ局ではブルースを流さない。 もし流していたとしても、私はそれを聴いていない。 聴かれなければ...それは、ある料理について言われるようなものだ。 ルイジアナ州のガンボは実際に行って食べてみないと、その美味しさはわからない。 好きか嫌いかは君次第だが、少なくとも味わったことは確かだ。 ブルースもそのような扱いを受けている。 どんなにいいブルースを作っても、誰も聴かなければ、それはただそこにあるだけのものなんだ。私はブルースに人生を捧げてきたし、他の多くの人々もそうしてきたので、気になる。 そんな扱いを受けるなんて、私たちは何をしたんだろう? わからないけど、それを正してほしいんだ」
さて、アルバムのタイトル・トラックですが、歌詞にはソニー・ボーイ・ウィリアムソン(Sonny Boy Williamson II)やジュニア・ウェルズ(Junior Wells)の名前が出てきます。 そして、シカゴにあった有名な劇場、ザ・リーガル(the Regal Theater)が取り壊された事実が織り込まれています。 そう、あのB.B.キング(B.B.King)の名作、『Live at the Regal』がレコーディングされた舞台です。
□ “Blues Don't Lie” by Buddy Guy;
そして、4曲目の”“We Go Back"”では、メイヴィス・ステイプルズ(Mavis Staples)との掛け合いが何とも言えない深みのあるサウンドで心を鷲掴みにします。 心に刺さりますね、この歌詞は・・・。 1968年4月にメンフィスで公民権運動の指導者であった、マーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King Jr.)が暗殺されたことに言及しています。 そう言った時代を生き抜いてきた二人だからこそ、歌えるのだと思います。
On a balcony in Memphis
April 1968
I never will forget
What happened on that date
“We Go Back"とは、単に懐かしんでいるだけの意味ではなく、忘れてはいけないということを暗に訴えているのです。
□ “We Go Back" by Buddy Guy featuring Mavis Staples;
かつて、搾取されて正当な報酬を得ることができなった経験を反映しているかのような内容の歌詞ですね、ジェームス・テイラー(James Taylor)との掛け合いが聴けます。
□ “Follow the Money” by Buddy Guy featuring James Taylor;
”What's Wrong with That”では、ミシシッピ・ファンキー・ブルース界のドンであるボビー・ラッシュ(Bobby Rush)との掛け合いが聴けます、殆どアドリブのような感じですね。
そして、ルーツ・ロックを代表するシンガー・ソング・ライター&ギタリストであるジェイソン・イズベル(Jason Isbell)が登場する”Gunsmoke Blues”です。
□ “Gunsmoke Blues” by Buddy Guy featuring Jason Isbell;
後半には、懐かしいビートルズ(The Beatles)のカヴァーである”I've Got a Feeling”が収録されています、70年の『Let it be』収録でしたね。 いつ聴いても、このR&Bフィーリング溢れる楽曲、多くのアーティストにカヴァーされている隠れた名曲です。
そして、最後を飾る”King Bee”は、スリム・ハーポ(Slim Harpo)ことジェームス・ムーア(James Moore)によって書かれた1957年リリースのスワンプ・ブルースの名曲です。 ハープ抜きのシンプルなアコギだけによる弾き語りヴァージョンでの演奏で、静かに終わります。 マディー・ウォーターズ(Muddy Waters)のカヴァーが一番有名かもしれません。
□ “King Bee" by Buddy Guy;
80歳を過ぎてもなお熱くブルーズに生きるこの人、過去のブログを再掲しておきます。7月で87歳になりますが、いつまでもこのヴァイタリティを持ち続けて欲しいですね!
□ “Stay Around A Little Longer” (Official Video) ft. B.B. King by Buddy Guy;
2018年7月 バディ・ガイ、ここにあり(ここ↓↑)