バディ・ガイ、ここにあり | Music and others

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 バディ・ガイBuddy Guy)81歳にして、この活力未だに衰えず、驚きました。 1936年7月30日生まれですから、間もなく82歳になる訳ですが・・・・・。 
 
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3年前にリリースされた前作、『Born to Play Guitar』も快作でしたが、今回の『The Blues is Alive and Well』も枯れたなんて言わせないヴァイタルに満ち溢れています。
 
リリースは6月14日で、今回も前作以上に驚きのゲスト陣が客演しております。 ブルーズ・カヴァーのアルバム、『Blues and Lonesome』で格の違いを見せ付けたローリング・ストーンズThe Rolling Stones)から、グリマー・トゥィンズGrimmer Twins)の2人が別々に参加しています。(アルバム紹介したブログはこちら↑↓
 
 
そして、永遠のギター小僧、ジェフ・ベックJeff Beck)に、若手のジェームス・ベイJames Bay)と、前作のヴァン・モリスン(Van Morrison)やビリー・ギボンズ(Billy Gibbons)も中々でしたが、更にスケール・アップしたミュージシャンの登場となりました。
 
 
バディ・ガイには、「老いて、なお盛ん!」と、言う言葉は失礼かもしれません。 レジェンドとなった今でも、常にオープン・マインドであり、過去には、ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)やスティーヴ・レイ・ヴォーン(Stevie Ray Vaughan)の創り出すサウンドに刺激を受けて来ました。 模倣ではなく、それを消化して自分のものにする姿勢には敬意を払う以外にありません。
 
 
全15曲の内、カヴァーは1曲のみで後は全てオリジナルとなっています。
 
ジャケットに写っているギターは、彼の代名詞とも言えるストラトキャスター(Polka dot Stratocaster)かと思いきや、テレキャスターの方でした(笑)。 
 
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ライヴ・ステージで活躍する、あの水玉のストラトキャスターは、フェンダー・カスタムショップ製ですが、原型は57年製のヴィンテージのストラトです(エリック・クラプトンも羨んだと言う名器です)。
 
レプリカと言うことで、完全なる再現は出来ていない様で、プリアンプやイコライザー・サーキットが搭載されており、原型はエリック・クラプトンのストラトキャスター・シグニチュア・モデルだそうです。 エフェクターもクライ・ベイビーしか使わないので、エリック・クラプトンEric Clapton)に近いセッティングですね。
 
□ Track Listing *****
1 . A Few Good Years     (Richard Fleming / Tom Hambridge)     4:47
2. Guilty as Charged     (Richard Fleming / Tom Hambridge)     3:20
3. Cognac     (Richard Fleming / Buddy Guy / Tom Hambridge)     5:22
4. The Blues Is Alive and Well     (Tom Hambridge / Gary Nicholson)    5:13
5. Bad Day     (Mac Davis / Tom Hambridge)     3:48
6. Blue No More     (Tom Hambridge / Jamey Johnson)     3:39   
7. Whiskey for Sale     (Tom Hambridge)     4:02
8. You Did the Crime     (Richard Fleming / Tom Hambridge)     6:53
9. Old Fashioned     (Buddy Guy / Tom Hambridge)      3:57
10. When My Day Comes     (Tom Hambridge / Bill Sweeney)     4:38
11. Nine Below Zero     (Sonny Boy Williamson II)     6:19
12. Ooh Daddy     (Richard Fleming / Tom Hambridge)     3:17        
13. Somebody Up There     (Richard Fleming / Tom Hambridge)     4:27
14. End of the Line     (Richard Fleming / Tom Hambridge)     3:25
15. Milking Muther for Ya     (Buddy Guy / Red Nelson)     0:57
 
さて、楽曲ですが15曲ありますが、決して冗長ではなく飽きさせるようなことはありません。 非常にヴァリエーションに富んでおり、ゴリ押しするような面はありません。
 
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幕開けの1曲目は、自分自身の人生を振り返るようなスロー・ブルーズ、“A Few Good Years”で幕を開けます。張りのあるヴォーカル、そして、長3度まで達することの出来る鋭いチョーキング、イイですね。
 
続いての2曲目、”Guilty as Charged”は、シャッフル・ビートの跳ねるような曲です。 リズム隊は、このところずっとプロデューサー、コンポーザー兼ドラムスでバディを支える右腕、トム・ハンブリッジTom Hambridge)と、お馴染みのグルーヴ・マスター、ウィリー・ウィークスWillie Weeks)です。
 
 
 
□ Musicians
    Buddy Guy - Guitars &Vocals
    Tom Hambridge - Drums on 1 to 14, drum loop on 7, Percussion on 10, backing vocals on 7
    Rob McNelley - Guitar on 1, 2, 4, 5, 6, 7, 9, 14, Slide guitar on 8
    Tommy MacDonald - Bass on 6
    Willie Weeks - Bass (Except for 6)
    Kevin McKendree - Mellotron, Hammond B3, Wurlitzer, Upright Piano, Clavinet on 7
    Muscle Shoals Horns - Horns  on 4, 9, 14
    The McCrary Sisters (Ann McCrary, Regina McCrary) - Backing vocals on 7
    Rachel Hambridge - Backing vocals on 7
 
□ Guest Musicians;
    Jeff Beck – Guitar on "Cognac"
    Keith Richards – Guitar on "Cognac"
    James Bay – Guitar, Vocals on "Blue No More"
    Mick Jagger – Harmonica on "You Did the Crime"
 
□ Production;
 Tom Hambridge – producer
 Recorded at Blackbird Studio, Power Station, No. 1 Baltic Place, Germano Studios, River Hall Mill
 
 
そして、このアルバムの白眉とも言える3曲目、“Cognac”(コニャック;ブランデーの中の王様!)です。左チャネルにジェフ・ベックJeff Beck)、右チャンネルがキース・リチャーズKeith Richards)が控えています。
 
おそらく、スタジオ・ライヴ?ではないかと思える様な臨場感が伝わってきます。 バディが「How about you, Beck?」と言い放った瞬間に、一聴して分かる鋭いフレージングで独特なソロが始まります。 ギター小僧、そのまんまですね(笑)。
 
続いて、「Come on, Keith!」で、とても控え目なフレーズが響きます、いつものテレキャスターではなくセミアコ系を引いているようですね。キースのらしさが伝わるような演奏で、微笑ましくなります。
 
□ Buddy Guy  - “Cognac” fromThe Blues Is Alive and Well』 ; 
 

 

 

曲の内容はタイトルにある様に、コニャック(バディのお気に入りのお酒の様ですね)について言及しています。
 
歌詞の一節には、
  ”If the late Muddy Waters was here drinking with us, that bottle would be ten times gone!
なんて言うフレーズもありますが、マディ・ウォータースって大酒吞みってことなんでしょうか?!
 
 
タイトル曲である”The Blues Is Alive and Well”では、マッスルショールズ・ホーンズ(Muscle Shoals Horns)が登場し、彩を添えています。
 
歌詞の内容は、お決まりの不貞な女性に対する悲痛な叫びとでも言えばいいんでしょうかね・・・・。 ここでのギター・フレーズは、ウェストサイド・シカゴ・ブルーズ(West Side Chicago blues)の立役者であるオーティス・ラッシュOtis Rush)を模したものだと思います。
 
□ Buddy Guy  - “The Blues Is Alive and Well” fromThe Blues Is Alive and Well』 ; 

 

 

 
 
 
6曲目の”Blue No More”では、若手の英国SSWであるジェイムス・ベイJames Bay)が登場して、息の合ったデュエットを聴かせます。 少しハスキーなジェイムスのヴォーカルが良いアクセントになっています。 ここでは、B.B.キング・スタイルのマイナー・ペンタトニック・スケールでのソロを織り交ぜて、お家芸の”スクィーズ・チョーキング”を繰り出しています。
 
□ Buddy Guy  - “Blue No More” fromThe Blues Is Alive and Well』 ; 

 

 

 

 
 
次の曲、”Whiskey for Sale”は少しブルーズのラインから外れて、よりファンキーなアプローチを執っています。女性コーラスが良い雰囲気を醸し出しており、サウンドの肝は、ウィリー・ウィークスのベースですね。そして、クライ・ベイビーを通したリズム・カッティングにクラヴィネットと完璧です。
 
 
7曲目、”You Did the Crime”には最後のゲストが登場します、決して歌わないミック・ジャガーMick Jagger)が『Blues and Lonesome』の時と同様に、このスロー・ブルーズの端々でハープのブローを散りばめてくれます。 バックのスライド・ギターは、ロブ・マクネリー(Rob McNelley)で、バディはギルドのセミアコ(Guild Starfire 4S)に持ち替えています。
 
□ Buddy Guy  - “You Did the Crime” fromThe Blues Is Alive and Well』 ; 

 

 

 
 
ひとつ置いての9曲目、“Old Fashioned”においても、オーティス・ラッシュを彷彿とさせるリフが再三登場します。
 
そして、11曲目の“Nine Below Zero”はアルバム中唯一のカヴァー曲で、ソニー・ボーイ・ウィリアムスン(Sonny Boy Williamson II)のオリジナルです。 本アルバム中の白眉とも言える出来で、全ての要素が注ぎ込まれた仕上がりです。
 
□ Buddy Guy  - “Nine Below Zero” fromThe Blues Is Alive and Well』 ; 

 

 

次の”Ooh Daddy”は、バディとロブ・マクネリーとのギターソロの掛け合いが聴き物のブギー調の曲。
 
続いての”Somebody Up There”は、ジョン・リー・フッカー(John Lee Hooker)が蘇ったかの様なヴォーカルで、ギターとの掛け合いが小気味良い曲です。
 
そして、最後を飾るのは、”Milking Muther for Ya”は1分に満たない弾き語り調の曲で静かに幕を閉じます。 いいエピローグになっています。
 
 
このアルバムを聴いて思うのは、同じ世代のシカゴ・ウェスト・ブルーズの立役者であり、脳梗塞に倒れてしまい、療養に努めているオーティス・ラッシュOtis Rush)のことです。 後遺症による麻痺により、ギターをかつてのようには弾くことは出来なくなりました。
 
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オーティス・ラッシュの分もバディ・ガイには奮闘して欲しいと切に願うばかりです。