バリー・ギブ-Greenfields: The Gibb Brothers’ Songbook | Music and others

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 ザ・ギブ・ブラザーズ(The Gibb Brothers)とは一体何者なのか? このアルバムは、ビージーズ(The Bee Gees)の3兄弟の中で唯一存命しているバリー・ギブ(Barry Gibb)が長年暖めて来た企画アルバムになります。 2021年1月にリリースされたバリーの3枚目のソロ・アルバムであり、タイトルが『Greenfields: The Gibb Brothers Songbook, Vol. 1』となっています。
 
Vol. 1』とナンバリングされていることから、今後趣向を変えた続編が制作されることは想像に難くありません。
 
コンセプトは、往年のビージーズの名曲をバリー・ギブが日ごろ愛聴してるカントリー系アーティストをデュエット・パートナーに迎えて、リメイクするという趣旨です。
 
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バリー、ロビン(Robin Gibb)、モーリス(Maurice Gibb)の3兄弟により結成されたポップ・グループがビージーズであり、不動の地位を確立したのは、一般的には『サタデー・ナイト・フィーバー』のモンスター・ヒットだと思います。 
 
しかしながら、彼らの本質は、美しいメロディーラインに兄弟ならではの完璧なコーラスワークにあると思います。 私にとっては、彼らのシングル、『マサチューセッツ』(Massachusetts)が初めての洋楽購入曲(アナログ45回転シングル盤)でした。 実はこの曲、日本のチャートで1位を獲得しています(とてもシンプルな歌詞のフラワー・ムーヴメントを表現した楽曲です)。
 
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1963年のレコード・デヴューから、兄弟3人でのグループとして長く活動をして来ましたが、途中ではロビンがソロ活動のため脱退して2人になったり、兄弟喧嘩が元で空中分解したりと紆余曲折がありました。 3歳離れた二卵性双生児である二人の弟の内、モーリスが2003年に急逝し、更には2012年にロビンが亡くなり、グループとしての活動は停止しました。 
 
3兄弟でのグループによる音楽活動、素晴らしい楽曲を数多く産み出し、そして、長兄だけが存命であると言えば誰しも連想するのはビーチボーイズ(The Beach Boys)、そして、天才、ブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)ですね。 そういう意味では、本アルバムは96年リリースの『Stars and Stripes Vol. 1』と相似形をなすような気がしないでもありません??
 
 
□ Tracking List *****;
All tracks written by Barry, Robin & Maurice Gibb. 
Except tracks 9 and 10 written by Barry & Robin Gibb, and tracks 2, 11 and 13 written by Barry Gibb.
 
1. "I've Gotta Get a Message to You"(獄中の手紙)     Keith Urban     3:15
2. "Words of a Fool"     Jason Isbell     3:48
3. "Run to Me"     Brandi Carlile     3:22
4. "Too Much Heaven"(失われた愛の世界)     Alison Krauss     3:40
5. "Lonely Days"     Little Big Town     3:44
6. "Words"     Dolly Parton     3:12
7. "Jive Talkin'"     Miranda Lambert and Jay Buchanan     3:58
8. "How Deep Is Your Love" (愛はきらめきの中に)    Little Big Town and Tommy Emmanuel     4:26
9. "How Can You Mend a Broken Heart" (傷心の日々)    Sheryl Crow     3:26
10. "To Love Somebody"     Jay Buchanan      3:55
11. "Rest Your Love on Me"     Olivia Newton-John     4:02
12. "Butterfly"     David Rawlings and Gillian Welch     3:43
 
Personnel;
  Jay Landers     Executive Producer
  Dave Cobb     Producer
  Stephen Gibb     Associate Producer
Musicians; 
  Dave Cobb     Guitar (12 String Acoustic), Guitar (Acoustic), Guitar (Electric), Mellotron, Percussion
  Leroy Powell     Guitar (Electric), Handclapping
  Toby Hulbert     Guitar, Handclapping
  Tommy Emmanuel     Guitar (Acoustic)
  Elizabeth Lamb     Guitar (12 String Acoustic), Viola
  Paul Franklin     Pedal Steel
  Robby Turner     Pedal Steel
  Phillip Towns     Hammond B3, Mellotron, Organ (Hammond), Piano, Wurlitzer Piano
  Brian Allen     Bass
  Phil Hanseroth     Bass
  Chris Powell     Drums, Handclapping, Percussion
  Danny Goodstein     Drums
  Samuel Levine     Saxophone
  Roy Agee     Trombone
  Michael Haynes     Trumpet
  Steve Patrick     Trumpet
  Stephen Lamb     Orchestra
 
  Barry Gibb     Guitar (Acoustic)
  Keith Urban     Guitar (Electric)
  Jason Isbell     Guitar (Acoustic), Guitar (Electric), Slide Guitar
  David Rawlings     Guitar (Acoustic)
  Gillian Welch     Guitar (Acoustic)
 
本アルバムは、鉄壁の布陣で製作されています。
プロデュースには、6度に亘りグラミー賞を受賞したデイヴ・コブ(Dave Cobb)が座り、スタジオはナシュビルの伝説的なRCAスタジオを使用しています。
 
ジェイ・ランダース(Jay Landers)の協力によって実現したもので、ギブ・ブラザーズの12曲を、アリソン・クラウス、ブランディ・カーライル、デヴィッド・ローリングス、ドリー・パートン、ギリアン・ウェルチ、ジェイソン・イズベル、ジェイ・ブキャナン、キース・アーバン、リトル・ビッグ・タウン、ミランダ・ランバート、オリビア・ニュートン・ジョン、シェリル・クロウ、トミー・エマニュエルとのコラボレーションによりレコーディングされています。
 
二人のアーティストを除いては、実際にRCAスタジオに入り実際に顔を合わせてリアルタイムでレコーディングを行ったそうです。
 
この時の経験について、バリー・ギブ曰く、
  「ナッシュビルのRCAスタジオに初めて入った日から、このアルバムは独りでに命を持ち始めた。デイヴ・コブを初め、スタジオに立ち寄ってくれたすべてのアーティスト達と共に仕事をする機会を得られたことに、これ以上ないほど感謝している。 誰もが自分の時間と才能を本当に惜しみなく発揮してくれた。 言葉では言い表せないほどの刺激を与えてもらった。モーリスとロビンも、それぞれ別の観点からこのアルバムを気に入ってくれるだろうと心の底から感じている。 3人で一緒にこのアルバムを作れたらよかったのだが……それでも、心の中では一緒だったと思っている。」
 
確かに少し演奏面では過剰な面も感じられるし、流麗なストリングスを加えずにシンプルな方が個人的には好みと言えなくもありません。 楽曲の良さはそのまま生きており、豪華なゲスト陣による”驚き”と言うのものはさほどありません。 また、アレンジの妙を感じられない曲も中にはあります。 それでも、バリー・ギブの独特なファルセット・ヴォイスに寄り添うゲストのハーモニー・ヴォーカルは素晴らしいものがあります。
 
まあ、色々と説明するよりも、黙って聴くことが一番効果的な気もしますが・・・・・・。全体的に、甘めのポップ・カントリー寄りテイストに統一されていると思います。
 
まずは冒頭の"I've Gotta Get a Message to You"(獄中の手紙)ですが、邦題が表すような悲しい内容の歌ですね。 三角関係の果てに相手を殺した男が、死刑執行を前に愛する人に向けたメッセージが綴られているグループ初期のヒット曲です。 ここでは、意外にも(私が個人的に抱いているキース・アーバンへの偏見?、カントリー系のミュージシャンらしからぬ風貌とギターワーク)キース・アーバン(Keith Urban)が持ち味を出し切っています。
□ ”I've Gotta Get a Message to You(獄中の手紙)” by Barry Gibb featuring  Keith Urban ;

 

 

 
 
続く2曲目の”Words of a Fool”は本アルバムのリード・シングルとしてリリースされましたが、バリー・ギブの86年のソロ・プロジェクト、『Moonlight Madness』にてレコーディングされ、結局お蔵入りした楽曲です。 ルーツ・ロックの現在形とも言えるジェイソン・イズベル(Jason Isbell)との共演ですが、いい味わいに仕上がっています。
□ ”Words of a Foolby Barry Gibb featuring  Jason Isbell ;

 

 

 
そして、続く3曲目の”Run to Me”は、アメリカーナを見事に具現化している、注目すべき女性シンガー&ソングライターであるブランディ・カーライル(Brandi Carlile)が存在感を見せています。
□ ”Run to Meby Barry Gibb featuring  Brandi Carlile ;

 

 

 
 
次に来るのは78年のNo.1ヒット曲である”Too Much Heaven"(失われた愛の世界)”、3声のハーモニー・ヴォーカルを9層にも重ねてレコーディングした楽曲です。これを歌うのは、もうワン・アンド・オンリーの声の持ち主であるアリソン・クラウス(Alison Krauss)その人です。 もう聴き惚れるしかない位に美しい楽曲に仕上がっています。
□ ”Too Much Heaven(失われた愛の世界)by Barry Gibb featuring  Alison Krauss ;

 

 

 
 
5曲目の”Lonely Days”は、グループを離れてソロ活動をしていたロビン・ギブが復帰し、再結成された直後にレコーディングされた楽曲になります。69年にリリースされたビートルズ(The Beatles)の『Abbey Road』のB面のメドレーとなっている楽曲群の影響を強く受けている曲で、それらの断片をうまく忍ばせています。 終盤に至っては、リードシンガーのヴォイスはフィルターが掛けられ、まるでジョン・レノン(John Lennon)そっくりに聴こえて思わず”ニヤリ”となります。
 
この楽曲のゲストは、リトル・ビッグタウン(Little Big Town)、カントリー系の男女2名ずつの混成ヴォーカル・グループで、正に適材適所と言った感じです。 但し、アリソン・クラウス(Alison Krauss)とドリー・パートン(Dolly Parton)とに挟まれた中での歌唱は少し見劣りするのは仕方ないでしょうね?!
 
□ ”Lonely Daysby Barry Gibb featuring  Little Big Town ;

 

 

 
個性際立つ容姿のみならず、卓越した作曲の能力に歌心溢れるその表現力、カントリー・ミュージックの殿堂入りを果たした天才、ドリー・パートン(Dolly Parton)とのデュエット曲は””になります。この曲での歌心溢れる声を聴けば、もうただ心を揺さぶられるのみです。
□ ”Wordsby Barry Gibb featuring  Dolly Parton

 

 

日本ではあまりにも知名度は低いのですが、私のブログでは、リンダ・ロンシュタット、エミルー・ハリスとの『トリオ』を取り上げています。 
 
        2017年8月 完璧な3人組とは? 『Trio』 ブログはこの辺りです(↓↑) 
 
 
次は”Stayin' Alive”ではなくて”Jive Talkin'”と来る肩透かしな選曲ですが、正直あまり効果的なカヴァーとはなっていません。『Saturday Night Fever』からの楽曲は外すわけにはいかないのでしょうが、やはり違和感は拭えませんネ?! 更に、直球ど真ん中な”How Deep Is Your Love” (愛はきらめきの中に)”が続くと、少しテンションが下がるのは私だけでしょうか?? それでも、オリジナルのフェンダー・ローズ(Fender Rhodes Electric Piano)による揺らぐイントロをアコギに置き換えたところは、流石に拍手したいと思います。
 
 
そして、やはり愛着を感じる70年代初頭の楽曲、9枚目のアルバム『Trafalgar』に収録された”How Can You Mend a Broken Heart" (傷心の日々) ”は良いですネ、彼等にとって初めての全米No.1ヒット曲です。 この曲は元はアンディ・ウィルアムス(Andy Williams)に提供するために書かれた曲だったのですが、却下されてしまい自分たちでレコーディングしました。 少しソウルフルなフォーク・ロック調に仕上げています。
 
この曲の最高とも言えるカヴァーは、アル・グリーン(Al Green)によって71年に制作されたアルバム、『Let's Stay Together』に収録されていますので、一度お聴きください。 最高とも言える極上のメンフィス・ソウル(Memphis soul)です! ここでは、シェリル・クロウ(Sheryl Crow)の声質がとてもフィットしています。
□ ”How Can You Mend a Broken Heart" (傷心の日々) by Barry Gibb featuring  Sheryl Crow

 

 

 
 
そして、終盤の”Rest Your Love on Me”は”How Deep Is Your Love” (愛はきらめきの中に)”のB面に収録された渋めの楽曲です。デュエットの相手はオージー繋がりのオリビア・ニュートン・ジョン(Olivia Newton-John)で、ポップ・カントリー調のバラッドに仕上げており、いい出来だと思います。でも、ここではとてもえぐいバリーの”ヴィブラート”が炸裂しています、オリビアはかないませんネ。
□ ”Rest Your Love on Meby Barry Gibb featuring  Olivia Newton-John

 

 

 
 
そして、ラストの楽曲はまだオーストラリアで活動していた初期の未発表曲である”Butterfly”で、ギリアン・ウェルチ&デイヴ・ローリングス(David Rawlings and Gillian Welch)が素晴らしいパフォーマンスを見せてくれます、個人的にはこれがベスト・テイクですね!
□ ”Butterflyby Barry Gibb featuring  David Rawlings and Gillian Welch

 

 

 
 
必ず制作されるであろう2作目では、是非ともに”I Started a Joke”と”Massachusetts”の2曲を演って欲しいと切に願います。あの特徴的なロビン・ギブ(Robin Gibb)のリード・ヴォーカルを誰がカヴァーするのか、とても楽しみにしています。