ポール・キャラック『These Days』 | Music and others

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ポール・キャラックPaul Carrack)、1951年4月生まれの68歳、日本ではあまり知名度のない英国出身の多才なミュージシャンです。 シンガーとしては、ヴェルベットの様な滑らかで、且つ、ソウルフルな声の持ち主であり、しかも、異なるグループで優れたヒット・チューンを創り上げてきました。
 
 
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  ”How Long”   エース(Ace)     1975年全米3位(全栄20位)
  ”Tempted”  スクイーズ(Squeeze)   1981年全米49位
  ”Silent Running”  マイク&ザ・メカニックス(Mike + The Mechanics)  1985年全米6位
  ”The Living Years”  マイク&ザ・メカニックス  1985年全米1位
 
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80年代は、メジャーなアーティストのサポート・メンバーとして、ライヴ・ステージとレコーディングにおいてキーボードとヴォーカルで多才な貢献をして来ました。 ロキシー・ミュージック(Roxy Music)、スクィーズ(Squeeze)、マイク+ザ・メカニックス(Mike + The Mechanics)、ロジャー・ウォータース(Roger Waters)と精力的な活動をすると共に、並行して、ソロ・アーティストとして、アルバム制作とツアーを行って来ました。
 
個人的に最も印象に残っているのは、メガヒットとなったマイク+ザ・メカニックスではなくて、いかにもイギリスらしい捻りの入った超個性派バンドのスクィーズでのヒット曲、”Tempted”ですね。
リード・ヴォーカルを担当したのは、この1曲のみですから奇跡的なヒットでしょうね。
 
ソロ・アルバムは現在までに17枚を数える程に、枯れる事を知らない創作意欲と情熱を維持しています。
 
モンスター・ヒットと言う訳には行きませんが、全米トップ40に入るヒットをコンスタントに生み出してきました。
 
  ”I Need You” 『Suburban Voodoo』         1982年 全米37位
  ”Don’t Shed A Tear”  『One Good Reason』     1988年 全米9位
  ”Live By The Groove”   『Groove Approved』   1989年 全米31位
 
90年代に入っても、ソロ活動を継続しながら、セッション・ミュージシャンとしていくつかのレコーディングに参加したり、新しいバンドを結成しようと試みたりしてきました。
その中では、やはり、あのイーグルスの再結成アルバム、『Hell Freezez Over』に楽曲、”Love Will Keep Us Alive”(Jim Capaldi, Paul Carrack, and Peter Valeによる共作)を提供したことがエポック・メイキングな出来事でしょうか! 最初のシングル・カット曲にも拘らず、アルバムには何故か収録されていません。
 
2015年3月からは、エリック・クラプトン(Eric Clapton)のツアー・バンドのメンバーとなり、時にはソロ演奏のシーンを用意されて、”How Long”や”Tempted”を披露してくれました。 この4月の来日公演、武道館5Daysでは定番化しているアンコールの” Hi Time We Went”でヴォーカルを任されていましたね。 是非、ソロ・アーティストとして来日して欲しいものです。
 
 
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さて、そんな才人、ポール・キャラックの最新ソロ・アルバム、2018年9月リリースの『These Days』です。 2000年に設立した自らのインデペンデント・レーベル(Carrack-UK)からのリリースになっています。 楽曲は単独で書上げるか、あるいは、長年の友人であるスクィーズのクリス・ディフォード(Chris Difford)との共作となっています。
 
 
□ Track-listing *****;
1.Amazing    (Paul Carrack)
2.Life in a Bubble    (Paul Carrack)
3.Cold Light of Day    (Paul Carrack,Chris Difford)
4.Dig Deep    (Paul Carrack,Chris Difford)
5.These Days    (Paul Carrack,Chris Difford)
6.You Make Me Feel Good    (Paul Carrack)
7.Tell Somebody Who Cares    (Paul Carrack)
8.Where Does the Time Go?    (Paul Carrack,Chris Difford)
9.Talk to Me    (Paul Carrack)
10.Perfect Storm    (Paul Carrack)
11.The Best I Could    (Paul Carrack,Chris Difford)
 
□ Personnel
  Paul Carrack – lead vocals, keyboards, guitars
  Steve Gadd – drums
  Robbie McIntosh – guitars
  Jeremy Meek – bass
  Pee Wee Ellis – tenor sax, horn arrangements
  Steve Beighton – baritone sax
  Dennis Hobson – trombone
  Gary Winters – trumpet
  Frank Ricotti – percussion
  Peter Van Hooke – percussion
 
□ Production team
  Paul Carrack – producer
  Peter Van Hooke – producer
  Geoff Foster – engineer
 
また、レコーディング・メンバーはいつもの不動のライン・アップから少し変わり、強力なメンバーが加わっています。
 
特に、ドラムスがスティーヴ・ガッド(Steve Gadd)と云うことで、よりタイトで硬質なリズムになっています。 エリック・クラプトンのバンド繋がりですが、たまたまチック・コリア()のヨーロッパ・ツアーの終了後、USA帰途の合間にロンドンに立ち寄ったそうです。 僅か3日間でこのセッション・ワークを仕上げたのですから流石!!です。
 
後は、リード・ギターに元プリンテンダーズのロビー・マッキントッシュ(Robbie McIntosh)が加わり、いい味わいのスライド・ギターやドブロ、また小気味良いオブリガートを弾いています。
 
ホーンには、元JB'sで現在は英国在住でヴァン・モリスン(Van Morrison)のバンドに籍を置く、ピー・ウィー・エリス(Pee Wee Ellis)が参加してソウルフルなブロー聴かせています。
 
全11曲、オーソドックスなブルー・アイド・ソウルであり、特別目新しいものはありませんがいいんですね!
 
冒頭の1曲目、モータウン・ビートの”Amazing”はアル・グリーン(Al Green)のヴァイブレーションを感じさせる佳曲です。軽くハネるシャッフル・ビートに印象的なフックのあるメロディー、掴みの曲としては最高ではないでしょうか?
歌詞の中に繰り返し出てくる、”It's amazing what love can do sometimes”のフレーズから曲名が付けられています。
 
□ ”Amazingby Paul Carrack

 

 

 

 

 
 
続いての”Life In A Bubble”は何処かで聴いたことのあるようなメロディー・ラインのミディアム・テンポの曲です。 そうですね、エリック・クラプトンがカヴァーして大ヒットとなった、あの”Change The World”を彷彿とさせる曲です、エリック御大がカヴァーしても不思議ではありませんが・・・・・。 ロビー・マッキントッシュ(Robbie McIntosh)による、間奏でのスライド・ギターが絶妙な加減で飛び込んできます。音色を含めてフレージングがそっくりすぎるのが玉にキズですが・・・・。
 
歌詞におけるライム(韻)の踏み方が如何にも英国人と言った感じです。 
          ”Living life in a bubble
          ”There's trouble in paradise again
 
 
□ ”Life In A Bubbleby Paul Carrack

 

 

 
 
 
そして、3曲目は”Cold Light of Day”はクリス・ディフォード(Chris Difford)との共作曲(歌詞をクリスが書いているようですね!)です。 全部で5曲をいつものように共作しています。 パブ・ロックと言うか、あのデイヴ・エドモンズ(Dave Edmunds)かニック・ロウ(Nick Lowe)によるロカビリー・サウンドの流れを汲んだ曲で、思わずニンマリとしてしまいます。 確か、80年代のある一時期ですが、ニック・ロウと一緒にバンドを結成していましたね。
 
 
 
 
続く”Dig Deep”はしんみりとしたメンフィス・ソウル風味のあるカントリー・ロックです。 個人的には結構心に刺さる良い曲です。間奏のドブロ・ギター、ロビー・マッキントッシュがいい味を出しています。
 
□ ”Dig Deepby Paul Carrack

 

 

 

 

 
 
そして、折り返しの曲、”These Days”はアルバムのタイトル・トラックになります。 初期の頃のUB40を思い起こさせるようなレゲエ・ビートの楽曲です。 このアルバムからの最初のシングル・カットになります。
 
□ ”These Daysby Paul Carrack

 

 

 

 

 
You Make Me Feel Good”はしなやかなグルーヴのバラッドで、シンプルなラヴ・ソングです。 ボニー・レイト(Bonnie Raitt)が演奏すればしっくり来るような展開のソウルフルなメロディーラインに、ブルージーなボトルネック・ギターが絡んで小気味よい曲に仕上がっています。彼女のアルバム、『Luck of The Draw』あたりを想い出させますね。
 
続く”Tell Somebody Who Cares”はカリプソ風味の曲で、ルーツ・ミュージックを探訪し続けているライ・クーダー(Ry Cooder)の『Chicken Skin Music』あたりを連想させてくれます。
 
ジェントルなバラッドの”Where Does the Time Go?”を挟んで”Talk to Me”へ続きます。
 
それから、終盤の”Perfect Storm”へとタイトルは仰々しいですが、これも愛が全てを救うほどの力を持っていると言う比喩的な表現です。 ミディアム・テンポのバラッドで、正にブルー・アイド・ソウルの真骨頂である艶のあるヴォーカルを聴かせてくれる楽曲です。 絶妙なホーン・セクションの間奏が効いていると思います。
 
 
最後の曲、”The Best I Could”はしみじみとした曲調で、子供を持つ親の心境を綴った内容です。 子供が成長して家を離れて(巣立って行く様に)空っぽになった部屋を歩き回りながら、振り返る様は少しばかり切ない気持ちにさせます。 子供を持つ親と言う共通の立場からの視点での歌ですが、こればかりは世界共通なんですね。
 
     If I can't say I did my best
     I worked so hard and saved to live just like the rest (of my life)
     The simple things in that life made us feel good
     As long as I can say I did the best I could 
 
サビの部分の歌詞のように、
「自分達が本当に出来うること、最大限のベストを尽くして来たのか、疑念が生じるのが当たり前なんですね! 結局。自分達を信じてベストを尽くしたのだと納得させる以外にはないんだ!」と云う、何か諦観めいた感情、判るような気がしませんか?? 人生ってそんなもんですよね!?
 
□ ”The Best I Couldby Paul Carrack

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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