CDなどのメディアを通して音楽を聴くことをほぼ止めて、ストリーミング利用に変えたのはいいのですが、聴きたい新規リリースのアルバムが増えすぎて困っています。 リストアップして、ダウンロードまでしている作品は常時10数作品になります。
このジミー・ヴォーン(Jimmie Vaughann)のアルバムのリリースを知ったのは、5月27日のことです。
ジミー・ヴォーンと言えば、すぐに思い出すのはファビュラス・サンダーバーズ(The Fabulous Thunderbirds)になります。 74年結成後から90年までリードギタリストとして在籍して、テキサス・ブルーズにスワンプ・ブルーズがミックスされた独特のサウンドを追求していましたね。 いなたいリズムにダーティーな感覚、キム・ウィルソン(Kim Wilson)のパワフルで渋いボーカルとハープ、そして、ジミーのソリッドだけど泥臭い粘りのあるギター・プレイ。
そりゃ、弟のスティーヴィー・レイ・ヴォーン(Stephen Ray Vaughan)の豪快で圧倒的なテクニックとセンスに裏打ちされた切れ味鋭いプレイ・スタイルの方が多くの人に認知され、未だに多くのフォロワーがいますけれど。
それでも、ジミーが貫いてきたであろう頑固一徹なブルーズ・センスには惹かれるものがあります。 だからこそ、未だにエリック・クラプトン(Eric Clapton)には何度となく請われてゲスト出演したり、クロスローズ・ギター・フェスティヴァル(Crossroads Guitar Festival)には必ず名前を連ねているのです。
ソロ名義では7枚目のスタジオ・アルバムになりますが、前作は2011年リリースされた『Plays More Blues, Ballads & Favorites』と随分間が空いてしまっています。
とにかく、カヴァー曲ばかりですが、一筋縄では行かないような激シブの曲が並んでいます。
まだ、前作に比べれば知っている曲が数曲並んでいるので、少しだけ安心感はありますが、やはり前面に決して出てこないギター・フレーズが最高ですネ!
そして、ブルーズ仲間とも言えるお馴染みのバンド・メンバー、リズム隊の2人がスウィングしそうでしない感じ、そして、ファンキーなハモンドにホーン部隊と何とも言えないバランスを保っています。そこに、控え目すぎるくらいのジミー・ヴォーンのフレージング、いい味わいを出しています。
□ Track-listing *****;
1.Baby, Please Come Home <Lloyd Price> 2:54
2.Just a Game <Huey P. Meaux> 2:57
3.No One to Talk to (But the Blues) <Lefty Frizzell> 2:41
4.Be My Lovey <Dovey Richard Berry> 3:14
5.What's Your Name? <Chuck Willis> 2:48
6.Hold It <Billy Butler / Clifford Scott> 3:01
7.I'm Still in Love with You <T-Bone Walker> 3:02
8.It's Love Baby (24 Hours a Day) <Ted Jarrett> 3:36
9.So Glad <Dave Bartholomew / Fats Domino> 4:01
10.Midnight Hour <Clarence "Gatemouth" Brown> 3:18
11. Baby, What's Wrong <Jimmy Reed> 3:47
□ Personnel;
Jimmie Vaughan ; Guitar, Vocals
Billy Pitman ; Guitar (Rhythm)
T. Jarrod Bonta ; Piano
Mike Flanigin ; Organ (Hammond B3)
George Rains ; Drums
Billy Horton,Ronnie James ; Bass
Al Gomez,Jimmy Shortell ;Trumpet
Doug James,John Mills ;Sax (Baritone)
Greg Piccolo, Kaz Kazanoff ;Sax (Tenor)
Randy Zimmerman ;Trombone
Emily Gimble ,Georgia Bramhall ;Vocals
初っ端のタイトル・トラックは、ファッツ・ドミノ(Fats Domino)と並ぶ、50年代を代表するニューオーリンズ出身のR&Bスターであるロイド・プライス(Lloyd Price)の名曲の一つです。シャッフル・ビートに乗せて、ホーン・セクションが絡み、ジミーによるここぞという処でのギター・ソロがいい味わいを醸しだしています。
□ ”Baby, Please Come Home” by Jimmie Vaughan;
2曲目”Just a Game”は、スワンプ・ポップの仕掛人、ヒューイ・モー(Huey P. Meaux)作曲、ジミー・ドンリー( Jimmy Donley)によりヒットした曲である。全くノーマークの曲であり、あらためて懐の深さを知りました。
続いて、カントリー・シンガーのレフティ・フリーゼル(Lefty Frizzell
)の57年のカントリー・クラシック、”No One to Talk To (But the Blues)”を大胆にブルージーにアレンジしなおしています。
そして、エタ・ジェイムス(Etta James)の”Be My Lovey”、チャック・ウィリス(Chuck Willis)の53年リリースの”What's Your Name?”と続きます。 このあたりの楽曲は正直良く知らないので、オリジナルをSPORTIFYで検索してプレイリストを作成して聴き比べています。
”Be My Lovey”では、切れ味鋭いギター・ソロにバッキング・コーラスで参加している二人のスウィングするコーラスが絶妙に絡んできます。
□ ”Be My Lovey” by Jimmie Vaughan;
次の”Hold It”も58年にビル・ドゲット(Bill Doggett)によりリリースされたR&Bのダンス・チューンですね。
そして、7曲目でようやくホッとできるTボーン・ウォーカー(T-Bone Walker)のスローなジャズ・ブルーズの”I'm Still in Love with You”が飛び出します。 ミュートを効かせたトランペット、ハモンドB3、アップライト・ベースと絶妙なサウンドが展開し、ジミーのヴォーカルも少し自信に満ち溢れているように聴こえます。
□ ”I'm Still in Love with You” by Jimmie Vaughan;
この曲がベスト・トラックではないでしょうか? ここでのヴォーカルはなかなかいい味を出していると思います。 テックス・メックスの怪人、ダク・サーム(Doug Sahm)みたいな明るさの中に哀愁を帯びたような雰囲気です。
1曲おいて、”So Glad”は、これまたファッツ・ドミノ(Fats Domino)とデイヴ・バーソロミュー(Dave Bartholomew)による隠れた名曲です。 ジミーはここではアコギによる短いソロを聴かせてくれます。
□ ”So Glad” by Jimmie Vaughan;
そして、テキサス・ブルーズの最も大きな影響力をもつ存在である、ゲイトマス・ブラウン(Clarence "Gatemouth" Brown)による54年リリースの有名な曲、”Midnight Hour”を取り上げています。
□ ”Midnight Hour” by Jimmie Vaughan;
最後を締めるのは、シカゴ・ブルーズの代表的なアーティストの一人、ジミー・リード(Jimmy Reed)による61年リリースの曲ですね。 後年になり多くのアーティストがカヴァーしている楽曲です。 私的には、”Baby What You Want Me To Do”の方が好みですね。 でも、どれも同じ曲に聴こえるという意見もありますね。
□ ”Baby, What's Wrong” by Jimmie Vaughan;