サザン・ロック界を代表するオールマン・ブラザーズ・バンドのヴォーカリスト、故グレッグ・オールマン(Gregg Allman)の遺作となる『Southern Blood』が8日にリリースされました。 アルバムとしては、2011年リリースの『Low Country Blues』以来6年振りになります。
グレッグは、今年の5月27日に69歳で旅立ちました。(その時のブログはこちら↓↑) 肝臓癌が転移した中で、体調と相談しながら毎日5時間程度を割いて、あのマッスルショールズ(Muscle Shoals)にある伝説のフェイム・スタジオ(at Fame Studios)でレコーディングしたそうです。
この場所を選んだ意図は、オールマンズ(Allmans Brothers Band)に詳しい方であればすぐにお分かりだと思います。 オールマンズの前身である、アワー・グラス(Hour Glass)が初めてレコーディングを行ったスタジオがフェイム・スタジオであり、天才と呼ばれた実兄のスカイドッグ(Sky Dog)こと、デュエイン・オールマン(Duane Allman)がスタジオ・ミュージシャンとして数々の素晴らしいボトルネックによる名演を遺したエポック・メイキングな場所なのです。
正直、いい歳になった私ですが、聴きながら泪が滲んできます(と云うか、このアルバムに関する経緯を語るマネージャーのマイケル・リーマン(Michael Lehman )や、プロデューサーに指名されたドン・ウォズ(Don Was)のインターヴュー記事を目にした瞬間から、もう涙腺が緩んでいます・・・・・お恥ずかしい)。
ドン・ウォズがプロデューサーに指名された経緯ですが、2014年に開催されたグレッグ・オールマンのトリビュート・ライヴ(his 2014 tribute concert, ”All My Friends”)の音楽監督をしたことがきっかけとなっています。ライヴ盤としてリリースされていますので、こちらも聴いて欲しいと思います、切に!
アマゾンで予約したCDの方は、6日遅れでの発送となったので、先にSPORTIFYでダウンロードしてプレイリストを作って聴き続けています。 一音一音を噛みしめて、きちんと聴きたいと想っています。
アルバム・タイトルは、正にグレッグ・オールマンを表すかのように、ずばり『Southern Blood』です。 体調が万全ではない分、ヴォーカルには力強さと、あのドスの効いたアクは余り感じられません。 全10曲中8曲が様々アーティストのカヴァーで占められていますが、全てがグレッグのオリジナルのように聴こえます。
中でも、この1曲と言われれば、若かりし頃に出会った盟友、ジャクスン・ブラウン(Jackson Browne)の”Song for Adam ”に尽きると思います。 普通であれば、1stソロアルバムでカヴァーした”These Days”(邦題は、青春の日々)を想像しますが、ジャクスンの1stアルバムの中にある、弾き語りの地味目な”Song for Adam ”を選んでいるのです。 最初はその経緯が分からず全くピンとは来なかったのです。
届いたCDに同封されていたライナー・ノーツには、グレッグの家族、妻のシャノン・オールマン(Shannon Allman)、そして、息子のデヴォン(Devon Allman)、娘のレイラ(Layla Allman)のそれぞれの想いが寄せられています。 併せて、今回のプロデューサーであるドン・ウォズ(Don Was)のコメントが記されています。
その中で、この曲に対するグレッグの想い入れについて、この様に書かれています。
「ジャクスン・ブラウンの美しくて、一度聴くと忘れられない”Song For Adam ”のエンディングに差し掛かる度に、グレッグは愛する兄であるデュエイン・オールマンのことを想い出していました。 そして、コーラス部分のこのヴァースを唄う時に、グレッグが感極まって声が詰まり、口ごもってしまう瞬間を聴くことができると思います。
だから、その日はレコーディングを止めたのです。 しかし、グレッグにそのヴァースを録り直すチャンスが巡ってくることはありませんでした。 そのままにして死を迎えることは、とても痛切なことではあるが、詩的なことでもあると思います。」
あらためて、グレッグの歌ったヴァージョンを何度も聴き返すと、ドン・ウォズが述べている通りでした。4番目の歌詞のところにグレッグの感情の昂りが感じられます。
Though Adam was a friend of mine, I did not know him long
And when I stood myself beside him, I never though I was as strong
Still it seems he stopped his singing in the middle of his song
演技ではなくて、自然に感情が昂り以下の部分の歌詞を歌うことが出来ず、ギターソロに代わっています。
Well I'm not the one to say I know, but I'm hoping he was wrong
そして、この後に続くコーラス部分もオリジナルの歌詞とは異なり、2番目と1番目との歌詞が交じり合っています。
I sit before my only candle, like a pilgrim sits beside the way
Now this story unfolds before my candle
(Now this journey appears before my candle)
As a song that's growing fainter the harder that I play
But I feel just like a candle in the way
(But I fear before I end I'll fade away)
But I guess I'll get there, though I wouldn't say for sure
勝手な想像かもしれませんが、感情を抑えきれずにそうなったのではないかと思います。 自身へのレクイエムなのか、まるでゴスペルのように聴こえてしまい、勝手に泪が溢れてきました。
是非、皆さんに直接聴いてその感想を教えて欲しいです。
また、ジャクスン・ブラウンは自身のFACEBOOKでグレッグに対する追悼のコメントを寄せています。
「グレッグが亡くなった週に、彼と話す機会があった。
彼の音楽や友情が僕にとってどれだけ意味があるか、彼に伝えた。
彼は最近、僕の初期の曲の1つ”Song For Adam”をレコーディングしていた。
彼とドン・ウォズは、僕に歌うよう、それを送ってきた。僕はそうしたよ。
この曲、彼の歌い方、どんな状況で歌ったのか――人生の最期に――彼は曲を完成し、曲に彼にしかできない奥深さと厳粛さを与えた。」
また、ローリング・ストーンのインターヴューに際しては、以下の言葉を最後に述べています。
「彼がいなくなって寂しいよ。 彼の家族、バンドメンバー、そして、クルー、それから、彼を愛する多くの人たちに深い弔意を送りたい。」
□ Gregg Allman met with Jackson Browne;
このヴィデオの中で、ジャクスン・ブラウンがグレッグ・オールマンとの出会いと、”These Days”をカヴァーした時のことについて言及しています。
この日、同じステージでこの曲を演奏したのが初めてだそうです。 リハーサルのシーンからとてもそんな感じには見えませんね。
今年後半に来日しますが、その時にこの曲を歌って欲しいですね、グレッグのためにも・・・・。
この曲をアルバムの最後に配した意図をきちんと受け止めて、繰り返し聴いていこうと思います。
□ ”Song For Adam ” by Jackson Browne ;