”Sportify”で聴くーその壱 Hot Tuna | Music and others

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生きる伝説、これがこのユニットに相応しい形容詞なのか、それは何とも言えませんが…。 69年9月に初めてのライヴをスタートさせてから、すでに46年が過ぎ今なお現役で活動している彼ら、ホット・ツナHot Tuna)です。

Hot-Tuna-07
 
丁度、スポーティファイSportify)をプレミアムにアップグレードしたのを契機に、最初にダウンロードしたアーティストになります。 第1号に選んだのは、CDを買い直そうと思っていたのですが、生産数限定のリマスター盤の値段が2700円もすることが判り、数タイトルを買うのは高額すぎる値段だと考えて断念していたからです。
 
さて、このホット・ツナですが、サンフランシスコの伝説なロックバンド、ジェファーソン・エアプレインJefferson Airplane)のオリジナル・メンバー2人、ヨーマ・コーコネンJorma Kaukonen)とジャック・キャサディJack Casady)によるデュオです。 何と!、1997年と2014年に来日しているのです(渋谷CLUB QUATTROでしたが、見逃しました!)
 
彼らはこの夏もテデスキ・トラックス・バンドTedeschi Trucks Band)のライヴ・ツアーである“Wheels of SoulTour 2017に同行します。 他には、アメリカーナの兄弟バンド、ウッド・ブラザーズThe Wood Brothers)が参加しているようです。 このパッケージでそのまま日本公演をして欲しいと思います。
 
 
私は、彼等の創り出すある種の"緩さ"(間)がある音楽が大好きです。 当時と違って、現在では懐かしい飛行船Jefferson Airplane のヒット・チューンまでライヴで演奏しており、この当時の雰囲気とはかなり変わりました。
 
 
彼らの記念すべき最初のアルバム、『Hot Tuna』は、ライヴ録音されたアコースティック・セットによるフォーク・ブルースで、今で言うところのアンプラグド作品ですね。でも、ただのブルーズとは言えない、アメリカの持つ色々な土着性が滲み出ている内容です。69年の9月に地元とも言えるバークリーのコーヒー・ハウス(the New Orleans House in Berkeley)でレコーディングされました。
 
そして、2年を経て1971年4月には、バンド形式で2枚目のライヴ・アルバムをレコーディングしています。 『First Pull Up Then Pull Down』と云うアルバム・タイトルが付いていますが、通称は”エレクトリック・ホット・ツナ”です。 こちらでは、ヴァイオリニストのパパ・ジョン・クリーチPapa John Creach)とドラマーのサミー・ピアッツア(Sammy Piazza)を加えたバンド形式になりました。このアルバムも大好きです!
 
その後、本隊のジェファースン・エアプレイン(Jefferson Airplane)としては苦渋の末に、自身のレーベル、グラント・レコーズ(Grunt Records)から、6枚目のアルバム『Barkをようやく発表しました。 しかしながら、バンドとしては空中分解しかかっており、メンバーの脱退やグレース・スリックGrace Slick)の出産により、停滞した時期になります。そのフラストレーションを解消する意味合いもあり、このサイド・プロジェクトであった筈のホット・ツナの活動がより活発になりました。

Hot Tuna(Burgers)01


 
そして、彼等にとっての3枚目Burgers 、初めてのスタジオ・レコーディング・アルバムになります。 リリースは、1972年2月です。彼等にとっては重要な変遷となりました。今まで、このホット・ツナは二人の欲求不満を発散させる為のサイド・プロジェクトとみなされていました。 ヨーマ・コーコネンは、グループの中での得意分野であったフォークブルース・スタイルのものではなく、多くのヴェリエーションに富んだ楽曲を書いています。
 
 
全体的には、以前の2枚のアルバムよりも抑制されて、自由度は少し下がりました。自由奔放さは、パパ・ジョン・クリーチのバイオリンには感じられます。基本的なブルースの枠の中で、相変わらずの自由な演奏をしています。一方、私の大好きなリード・ベース的だったジャック・キャサディのベースはかなり抑えられています。驚くことではないですが、3枚目のアルバムをレコーディングする過程で、ホット・ツナは旅立つことに”踏ん切り”が付いたのだろうと思います。
 
このアルバムからは現在でも数曲がレパートリーになっており、ステージで普通に演奏されています。
 
 
□ Track-listing
1. "True Religion"   (Jorma Kaukonen)
2. "Highway Song"   (Kaukonen)
3. "99 Year Blues"   (Julius Daniels)
4. "Sea Child"   (Kaukonen)
5. "Keep On Truckin'"   (Bob Carleton)
6. "Water Song" <instrumental>   (Kaukonen)
7. "Ode for Billy Dean"   (Kaukonen)
8. "Let Us Get Together Right Down Here"    (Rev. Gary Davis)
9. "Sunny Day Strut" <instrumental>   (Kaukonen)
 
 
□ Personnel;
     Jorma Kaukonen – guitars, lead vocals
     Jack Casady – bass, vocals, eyebrow
     Papa Jo"hn Creach – violin, vocals
     Sammy Piazza – drums, tympani, other percussion, vocals
 
■ Additional personnel;
     Nick Buck – organ, piano on "True Religion" and "Keep On Truckin'"
     Richmond Talbott – vocals, slide guitar on "99 Year Blues"
     David Crosby – vocals on "Highway Song"
 
 
全編に亘り、ヨーマ・コーコネンの十八番のフィンガー・ピッキングと彼の独特な爬虫類系のねっとりとしたヴォーカルが楽しめます。
 
1曲目のフォーク・ブルーズの"True Religion"から、パパ・ジョンのフィドルが突っ込んでくると世界が一変します。この当時ですでに50歳後半だったファンキーなオジサンの一撃で世界が一変します。 後半からは、もろエレクトリック・ツナが全開になります。

 

 

 
2曲目の美しいハーモニーの印象的な"Highway Song"をですが、お友達だったデヴィッド・クロスビー(David Crosby )がハーモニー・ヴォーカルで参加しており、いい仕事をしています。

 

 


 
3曲目、"99 Year Blues"は1900年代前半のラグタイム・ブルーズですが、こんな曲を引っ張り出してくる時点でルーツにある世界観が窺い知れますね。この曲も1曲目同様に現在のライヴでも演奏されています。
 
 
4曲目”Sea Child は、お家芸のアシッド・ロックなのですが、普通に飛行船本隊、ジェファースン・エアプレインのアルバムに何の違和感もなく収まる様な曲調です。ここでの分散コードの使い方とワウワウの効いたギターはあの時代に一瞬で引き戻されます。

 

 

 
 
5曲目、”"Keep On Truckin'" は原題が”Ja-Da (Ja Da, Ja Da, Jing, Jing, Jing!)”と言う1918年のポピュラー・ソングです。この懐の深さは何なんでしょうか?
 
そして、寄せるさざ波を思わせるアコースティック・ギターのピッキングから産まれる透明感のあるサウンド、”Water Song”です。 数多いヨーマ・コーコネンのインストゥルメンタルの中でも、最良のものだと言えます。

 

 



 
8曲目の"Let Us Get Together Right Down Here" は、1960年頃の説教師でもあったシンガーのブラインド・ガリー・ディヴィス( Blind Gary Davis)による黒人霊歌がオリジナルです。
彼らの創り出すサウンドは、当時のイギリスあたりから出てきたブルース・ロックとは大きく異なっていました。 それは、アメリカの伝統的なゴスペルやフォーク・ブルース、あるいは、日常的に耳にしていた古いポピュラー・ミュージックを積極的に持ち出してきたこと、そこが、ジョン・メイオールJohn Mayall)やフリートウッド・マックFleetwood Mac)、あるいは、ポール・バターフィールド・ブルーズ・バンドPaul Butterfield Blues Band)とは一線を画している点だと思います。 
 
ある部分、ライ・クーダーRy Cooder)の進んできた唯一無二のサウンド・プロダクションに相通じる面があると言えます。アメリカの様々な人種の中で伝承されてきた伝統的な大衆音楽を掘り起こしてきたライ・クーダー、その先達と言えるのではないでしょうか?


Hot Tuna(Burgers)02