『The Breeze』Eric Clapton & Friends その弐 | Music and others

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an Appreciation of J.J. Cale; Vol.2





さて、このアルバムですが、プロデュースは右腕とも云えるサイモン・クライミー(Simon Climie)との共同で行われています。 このアルバムのアイデア自体は、エリックが昨年8月に J.J. ケールの葬儀に参列する移動中、ロンドンからロスへのフライト中に考えついたようです。 そのアイデアを直接、30数年間公私ともに連れ添って来たクリスティン・レイクランド(Christine Lakeland)とマネージャーであるマイク・カッパス(Mike Kappus)に話して、賛同を得たのです。 それからのアクションは素早くて、奥方の出身地であるオハイオ州コロンバスに簡易スタジオを造り、そこでサイモンと共同で選曲を行い、2週間で24曲のベーシックトラックを制作しました。


オーヴァーダビングは、ロス・アンジェルスのスタジオに移動して行ったそうです。 リズムセクションの主な部分は、お馴染みの二人、ジム・ケルトナー(Jim Keltner)とネーザン・イースト(Nethan East)が担当しました。 ゲスト・アーティストについては、それぞれのスタジオでレコーディングされたようです。 当然、様々な組み合わせでいくつかのヴァージョンが録られました。 どの位の曲がボツになったのか、?年後にデラックス・エディションでリリースされるのか、今から期待?出来ますね。


長年のバンド・メイトであるネーザン・イーストによれば、今回のプロジェクトに対するエリック(Eric Clapton)の言動を見ていると、まさに”癒しの時間”を過ごしているようだったと、丁度91年の息子コナーの突然の死を乗り越える為に”Tears In Heaven”を書き上げた時のように。 余り多くを語らないエリックであるが、クリスティンに敬意を払い、どんな些細なことにおいても同意を求め、そして、レコーディングへの参加も望んだ。
おそらく、クリスティンだけではなく、このプロジェクトに関わったそれぞれがJ. J. ケールの死の哀しみを乗り越える何らかの役割を果たしたんだろうと思うと。





◇ Track-list ;

1. "Call Me the Breeze"             Eric Clapton
2. "Rock and Roll Records"            Eric Clapton & Tom Petty
3. "Someday"                  Mark Knopfler
4. "Lies"                     Eric Clapton & John Mayer
5. "Sensitive Kind"                Don White
6. "Cajun Moon"                 Eric Clapton
7. "Magnolia"                  John Mayer
8. "I Got the Same Old Blues"          Tom Petty & Eric Clapton
9. "Songbird"                  Willie Nelson & Eric Clapton
10. "Since You Said Goodbye"          Eric Clapton
11. "I'll Be There (If You Ever Want Me)"      Don White & Eric Clapton
12. "The Old Man and Me"            Tom Petty
13. "Train to Nowhere"              Mark Knopfler, Don White & Eric Clapton
14. "Starbound"                 Willie Nelson
15. "Don't Wait"                 Eric Clapton & John Maye
16. "Crying Eyes"                 Eric Clapton, Christine Lakeland Cale & Derek Trucks




◆ Musicians;
  - Guitars;
   Mark Knopfler     Tracks 3 & 13
   John Mayer      Tracks 4, 7 & 15
   Willie Nelson 'Trigger' Tracks 9 & 14
   Don White       Tracks 3, 5 & 13
   Reggie Young     Tracks 2, 6 & 8
   Derek Trucks     Tracks 14 & 16
   Albert Lee       Tracks 1 & 11
   David Lindley     Tracks 9 & 16
   Don Preston      Tracks 3 & 13
   Christine Lakeland   Tracks 3
   Doyle Bramhall II    Tracks 10
  -  Pedal Steel Guitars;
   Greg Leisz      Tracks 12 & 14
  - Dobro;
   Eric Clapton     Tracks 3 & 13
   
  

レコーディングはプロ・トゥールズ(Pro-Tools)に取り込まれた J. J. Caleのオリジナル曲に、各パートを重ねて差し換えるような方法で進んだが、決してカット&ペーストするようなハイテクな方法は採らなかったと。 ミスを最低限修正するだけに留めたと。 それを裏付けるように、どの楽曲もオリジナルに近い肌合いが残っています。 悪く言えば、J.J. ケールのヴォーカル・トラックを参加アーティストのパートに差し替えただけで、何も個性が感じられないと酷評されると思います。 事実、ウェブ上でも高い評価をしているところは殆どありません。




The Breeze 10




ナッシュビルで出逢い、公私ともに30数年間に亘って連れ添ったクリスティンは、J. J. の楽曲を最も良く理解しているわけである。 実際に、トム・ペティがある曲の歌詞を一部微妙に間違えて歌ったことに気がつき指摘したのは彼女ならではあった。 他には誰も気付いていなかったから。





The Breeze 13




さて、1曲目は『Natually』(ブログでも取り上げました、ここ↓↓)の冒頭を飾る曲で、"Call Me The Breeze"。 一聴すると、オリジナルと寸分違わぬカラオケでヴォーカルがエリックと云う出来映えです。 賛否両論出て当然のアプローチでしょう。 この曲と11曲目の"I'll Be There (If You Ever Want Me)"には、カントリーピッキング全開の控え目ではあるが個性ある、アルバート・リー(Albert Lee)がいい味合いのギター弾いています。


2曲目、"Rock and Roll Records"ではドスの効いたトム・ペティ(Tom Petty)のヴォーカルがぴったりとはまっています。 手数は少ないが渋いギターを聴かせるのは、”The Memphis Boys”のレジー・ヤング(Reggie Young)です。

そして、最初の極め付けの曲は3曲目、"Someday"、独自の世界観と巧みなギターのピッキングとヴォーカル、マーク・ノップラー(Nark Knopler)の登場です。 J. J. ケールの曲なのか、フォロワーであるには違いないのですが、恐れ入りましたと言わざるを得ません。


それから、意外な”はまり具合”を見せてくれるのが、若手のジョン・メイヤー(John Mayer)です。 最新作の『Paradise Valley』では、"Call Me The Breeze"をカヴァーしており、スタジオ作ではシンガー&ソングライター的なアプローチが光ります。4曲目の”Lies”です。
さらには、驚きのはまり加減を見せる7曲目の”Magnolia” に至っては聴き惚れるしかない完成度だと思います。 例のストラトキャスターのトーンと相まって、エリック御大のソロ共々、驚きです。


6曲目の"Cajun Moon"、ダブルトラックで聴こえてくるヴォーカル、片方はJ. J. ケールかと錯覚しそうです。 この曲にもレジー・ヤングが参加していますが、オリジナルにも彼は参加していました、74年の『Okie 』ですね。


エリック御大のソロパートが光るのは、8曲目の"I Got the Same Old Blues"ですね。 いつもの、手グセ満載のオーヴァードライヴの効いたソロ、レジー・ヤングの渋いテレキャスターのソロとの絡み、これからというところであっけなくフェイド・アウトしてしまいます。 この感覚、まさにJ. J. ケールの世界観なんでしょうね。


怪人、デヴィッド・リンドレー(David Lindley)もしっかりと味を出したラップ・スティールやボトル・ネックを聴かせてくれます。



10曲目、"Since You Said Goodbye"ではエリックと共に、エフェクターを効かせたボトルネックを弾くのが、ドイル・ブラムホールⅡ(Doyle Bramhall II)です。



The Breeze 01




未発表曲、3曲の内、2曲を担当しているマーク・ノップラーですが、彼のオリジナルと云っても誰も疑わないような出来ですね。13曲目の"Train to Nowhere"でも、ただのカントリー風味には終わらない独特の世界観が目の前に拡がります。


15曲目、"Don't Wait"でもやはりジョン・メイヤーが輝いていますが、これもギター・ソロに入った直後にばっさりとファイドアウトします。 もう笑うしかありません……。





The Breeze 04



エンディング、16曲目は"Crying Eyes"ですが、この曲にはとても控え目ながらクリスティンが参加しています。この曲順は当初から決まっていたようです。 この曲で聴かれるボトル・ネックのギター、誰なのかはすぐに分かります。 音色を聞けば、デレク・トラックスだと



参加したアーティストのコメントが聴ける、その壱に載せた15分余りのヴィデオを観れば、それぞれのミュージシャンの想いが良く分かります。 ジョン・メイヤーのくだりが一番面白いですね!
エリック御大が彼の類希なその才能と解釈の仕方に、”Gifted"(生まれ持った才能だ!)、そして、ジョン・メイヤーは、 J.J.ケールの楽曲”Magnolia”をレコーディングしたスタジオでの瞬間を、本当に最高の時間だっとと述懐していましたね。 そして、”How cool that's”……と。





ネーザン・イーストが後のインターヴューでこう語っています。
この曲のセッションでは、スタジオの中で間違いなく自然と…涙が溢れたはずだ…と。」