入院期間が短すぎたのと、シャワーの予約をことごとく忘れられ・・・
家でのお風呂で初めて傷と向き合った。
入院中の形成の診察で先生に『傷を見るのが怖い』と伝えたら、
看護師さんが優しく『まだ見なくていいよ』と言ってくれたけれど・・・
いつかは向き合わなくはいけない。
傷に貼られた大きなテープを外して初めて傷を見た時、涙が出た。
これは傷にショックを受けたからではなくて、想像以上に綺麗だったから。
主人が
綺麗だよ!!
みほ凄い綺麗だよ!
と少し興奮気味に私に言ってくれたときには自然と涙が溢れていた。
まだかさぶたが残るその傷は、まっすぐに私の胸を横切っていて、
でも本当に綺麗だった。
退院後の形成外科の受診時の先生の言葉
「もう傷では無く傷跡です」
の意味を私の胸は体現していた。
乳癌の手術は私の命を救ってくれたけど、
形成外科の技術は私の心を救ってくれた。
傷と向き合った翌週の病院の受診で、形成の主治医に傷が綺麗だったことのお礼を伝えた。
先生は
「まだまだこれからが本番ですよ。再建はこれからですからね。」
と言ったけれど、
乳がんで胸を切除した多くの女性が最初に向き合う傷の状態はとても大切だと先生は分かっていると思う。
さらに先生は
「乳腺のK先生が、とても丁寧にメスを入れていたからです。」と続けた。
切り口が綺麗だと治りも早く、より綺麗にすることができるそう。
私は、その先生の言葉がとても嬉しかった。
同日の午後の診察で乳腺の主治医に
「先生が綺麗に切ってくれたから傷が綺麗だって形成の先生が教えてくれました。
ありがとうございます。」
と伝えると
乳腺の先生も形成の先生同様の返答をくれた。
「いやいや。形成の先生がとても丁寧に縫ってくれていたから綺麗なんですよ。
でも、普段傷を綺麗だとはあまり言われないから」
と少しはにかんでいた。
傷には変わりないのだけれど、
想像以上にずっと綺麗だったこと。
傷はよく見ると微かに曲がってる箇所があって、先生がとても丁寧にメスを入れてくれ慎重に縫ってくれたんだなと想像に容易く
自分の傷に愛着すら湧いた。
二人の主治医はお互いをとても尊敬しあっているのだと感じたし、それが嬉しくてやっぱりありがとうって気持ちになった。