検査結果まで眠らない日々が続くと思った。
携帯を握りしめている間は本当にロクな事は検索しないし、
画面に映し出される文字列は私のことではない。
なのに私は夜になると現実逃避をするように熟睡した。
そして目が覚めたら検索、検索、検索・・・
今まで多くの人の症状や治療方法を元に現在進行形で作られるエビデンス。
そこに当てはまるものを私はネットで見つけたかったかもしれないし、
“あぁやっぱり私とは違う”
と自分とは違う乳がんの症状を知り安心したかったのかもしれない。
どんなワードもそこに表示される文字列も私を安心させたりはしないのに私は検索を止めれなかった。
グーグルを、現代のネット環境を憎んだ。
でも検索をやめることはできない。
だってあの時の私はそれ以外考えられなかった。
そんな時主人が私に写真を送ってくれた花がある。
その花は私が気に入って買った小さな苗だった。
植えた時には掌に収まるほどのサイズだったのに、
初夏を感じる陽気と、
梅雨時期の豊富な水分のおかげで大きく育ったサンパチェンスの写真。
写真もラインもネットも苦手な主人が私のために撮影し送ってくれたサンパチェンスの写真は、決して上手に撮影されてはいない。
でもそこに主人を感じる。
あの温かくて、優しくて、強くて、大きな彼を。
大きな瞳を縁取る長い睫毛と、目じりに寄せる笑い皺。
私はそのラインの
“たくさん咲いてるよ”
に
“可愛い”
と返信する。
口下手な彼の発する言葉たちはいつも、繕われずに優しい。
心配と安心を“たくさん咲いてるよ”に感じた。
同じ携帯から見えるその文字列はグーグル先生とは違う文字に見えた。
まだ答えも出ていないのに落ち込んでてはいけないと思うのに、
どうしたらいいのか分からなかった私は主人に何もしてあげれてないと気が付いた。