洋画家、富岡惣一郎氏の作品が

なんでも鑑定団に出品されました。

 

ただ、問題も多かった。

 

その事を少し

書きたいと思います。

 

富岡惣一郎氏の作品には

基本的に贋作は存在しません。

 

これは技法的な問題。

描き方が特殊だから。

そして

贋作が出て来る程の

高い評価を得ている訳では

有りませんし。

 

或る意味、特殊作家の一人です。

 

ミノーの『トミオカホワイト』

 

この画家の生命線は

何と言っても“白”

 

『トミオカホワイト』と

命名された絵の具は

顔料の公表はされてはいませんが・・・。

 

多分『ジンクホワイト』

亜鉛華が主顔料でしょう。

 

亀裂と黄変は

亜鉛華の特徴ですから。

 

シルバーホワイトは

頑強なマチエールを作りますが

青みがかっていて寒色系。

チタニウムホワイトは

まだ顔料としての評価は

当時はそれ程有りませんでしたし

チョーキングする、と言った

マイナス評価も有りましたので。

 

消去法で

亜鉛華が主成分の可能性が高い。

 

現代では

ジンクホワイトに関して

かなりの研究が進んでいる訳ですが

鉄則としては

 

ジンクにジンクを重ねない。

 

ジンクホワイトの場合

下層に少しでも

ジンクホワイトが有ると

その上に塗られた絵の具には

必ず亀裂が入ると言われています。

 

固着力も弱い白ですしね。

 

欠点の多い白なんです。

 

でも暖色系の白だから

湿気の多い日本人好みの

白でも有る。

 

パステルカラーも

綺麗に出来ますし。

 

絵の具の話しは

まあここまでにして

出品されていた絵の問題。

 

購入価格7万円は

本当に格安なのか。

 

業者の大多数の意見は

おそらく

妥当

でしょう。

 

自分もそう思っています。

 

富岡惣一郎氏は

白のマチエールに心血を注いだ。

 

黄変、亀裂を嫌った。

だからこその

『トミオカホワイト』

です。

 

下層に地色を塗り

その上に

『トミオカホワイト』を

薄く均一に塗って行く。

 

薄く、薄く、です。

乾いても亀裂が入らない様に。

 

そして

掻き落としで風景を

浮かび上がらせる。

 

手法は角浩氏と同じです。

絵の具の厚みは異なりますが。

角浩作『レダと白鳥』

 

油絵の具の特徴として

薄塗りで有れば有る程

亀裂の不安は無くなります。

 

代表例としては

東郷青児氏の作品でしょうか。

東郷青児氏のマチエール

 

この作品の絵の表面に

亀裂が有ったらどう思いますか。

 

女性の顔に深い亀裂が有ったら

どんな印象を受けるでしょうか。

 

マチエールに拘りを持つ

画家にとっては

亀裂一つで残念な気持ちになる。

 

それは見る側にとっても

同じなんです。

藤田嗣治氏の作品も

乳白色のマチエールとして有名なので

亀裂を嫌います。

 

 

 

 

 

アートの世界では

マチエールに拘りを持つ画家の

作品では

少しの亀裂も

かなりのマイナス要素となります。

 

亀裂って

キズモノ扱いになるんです。

 

欠けた陶磁器と同じ。

 

そしてそれは

金額にして

一桁分にも相当したりする。

 

亀裂は

修復出来ませんし

常に剥落の危険性を

伴います。

 

だから絵の扱いには

慎重の上にも

慎重を期さなくてはならない。

 

額の入れ替えには

特に注意が必要です。

 

それ位に

難しい状態でも有ります。

 

亀裂は作品に

後戻り出来ない

危害しか与えません。

 

だからこそ

絵描きは絵の具に

拘り続けるんです。

 

完璧な状態で

後世に残す為に。

 

ちなみに余談ですが

富岡惣一郎氏の作品には

贋作が一点存在します。

 

ある人のリビングにひっそりと。

その作者は・・・

 

皆まで言うまい・・・です(笑)。