絵画にしても、陶芸にしても

真贋の判断が簡単な作品も有れば

確証の持てない作品も有ります。

 

シール付きで有っても。

共箱作品であっても。

 

確証の持てない作品の方が

場合によっては

多いのかも知れません。

 

ニセモノ師の贋作は

上手く人の心の隙を付いて来る。

 

いわば詐欺の世界。

 

その詐欺師の思考を

知っていなければ

ニセモノを判断する事は

時に難しかったりする。

 

例えば万引き犯の話し。

 

あるリサイクルショップで

万引きされた時

その万引き犯は

モノを盗んだ後で

その足で堂々と

店の奥の店主の近くまで

グルって回って

それからゆっくりと出て行った。

 

防犯カメラの映像です。

 

この映像が

テレビの番組で流された時

出演者の人達は

 

“万引き犯は何故盗んだ後に

奥の店主の方まで

向かって行ったのかなぁ。

すぐに逃げればいいのに”

 

そうコメントをしていましたが

自分は

“慣れた人なら、そうするだろうなぁ”

そう思って見てました。

 

この万引き犯は、常習犯です。

人の心理を上手く付いて来る。

 

盗みをする人間は、人目を避ける筈だ。

 

大抵の人は、そう思ってる。

でもこれって、空き巣犯の思考。

 

慣れた万引き犯は

いかにして堂々としていられるか。

 

これが心情です。

 

店主のいる店では

店主に怪しまれてはならない。

その為には

逆に店主に近付いて行って

店主の自分に対する関心の目を

背けさせていく。

 

近くに来る客を

じろじろとは見ませんから。

 

客にはゆっくりと見て貰おうとする

心理が働く。

 

その客への安心感を

逆に持ってしまう訳です。

 

万引きは

店主の目から遠い所で行われる。

 

これは正しくも有りますが

絶対では有りません。

犯罪は心理戦でも有りますから。

盗んだ後に堂々と近付いて行くのは

自分への意識を

消して貰う為です。

 

話しを戻しますが

真贋の判定に於いて

鑑定する人達は

誰しも自分の判断基準を持っています。

 

自分もそうです。

 

でもその判断基準が該当しない場合も

当然有ります。

 

それが箱書きの真贋。

悩ませモノの箱書きが、実は存在します。

 

以下の箱書きは、本物でしょうか?

河井寛次郎作『呉洲皿』共箱、箱書の真贋は・・・!?

 

この箱書きの真贋を判断出来ますか?

 

では中身はどうでしょうか。

河井寛次郎作『呉洲皿』

河井寛次郎作『呉洲皿』

河井寛次郎作『呉洲皿』

河井寛次郎作『呉洲皿』

河井寛次郎作『呉洲皿』

 

自分はこの作品の類例を知りませんので

作品での真贋の判断が出来ません。

 

箱書きの文字を見ても

真贋の判断が出来ません。

 

でも

この箱書きの書かれている

蓋裏には

疑問を持たせる

一つの特徴が見えます。

 

それに気付きましたか?

 

文字が書かれている地の部分が

サンドペーパーで

擦り削られているんです。

 

これが疑問点。

 

箱の蓋裏を

サンドペーパーで擦る時は

どういう場合が考えられるのか。

 

★一つは記念の文字を消す時。

 

記念品の文字は

売る時に邪魔になりますので。

それでサンドペーパーで文字を消します。

 

★一つはホンモノの作家の名前を消し

別の作家の名前を入れる時。

 

でもその前に

何故この箱裏に

サンドペーパーが掛けられているのが

判るのかと言うと

それは蓋裏の変色具合。

 

箱と言うのは

経年変化を起こしますので

古箱は光の当たらない部分でも

古色を帯びて行きます。

 

でもサンドペーパーで削ると

削った部分は

若々しく明るい色調になる。

 

でも蓋裏には

削り難い部分があって

それが桟の周り。

特に桟の外側部分は

削り難いので

面倒臭がる人が多く

削られず残されているケースは

実は多い。

 

削るのに

その分手間が掛かりますから。

 

ですから丁寧な削りをするならば

桟の周りもきちんと時間を掛け

綺麗に削らなければならない。

 

判らない様に。

 

自分は記念の文字を消す時

時間を掛けて違和感の無い様に

丁寧に削っています。

 

文字が有った事を気付かれない様に。

その上で、軽くヨゴシも入れます。

時代感を損なわない様に。

 

贋箱は作りませんよ。

書が下手ですので(笑)。

 

疑問は有っても

この作品の真贋は

自分には判りませんでした。

 

もしかしたら

箱裏のサンドペーパーも

 

墨が滲まない様にする為に

掛けられていた・・・

 

かもしれませんし

箱書きによっては

滲まない様にする為に

チョークが擦ってあるケースも

有ります。

 

でもこの蓋裏自体は

古箱の状態の時

削られているんですよね。

 

この作品の場合

同手の問題の無い共箱の真作か

信頼の置ける

掲載図録でも出てくれば

この箱書きの真贋も

自ずと判る事でしょう。

 

もしくは別作家の共箱作品が

出てくれば

それで違うって判断出来る。

 

真贋の判断と言うのは

先ず間違いの無い伝世作品が

最優先で

珍品ほどその判断が

難しくなって行きます。

 

当時の図録や掲載本など

作家が生きていた時代の物ほど

確かなものは有りません。