岡鹿之助作『雪の発電所』

 

開運!なんでも鑑定団に

岡鹿之助の油彩が

出て来ました。

 

予告の段階で

モチーフが

“三色菫”の絵である事に

触れられていましたので

直ぐに

『岡鹿だぁ!』と推測。

 

絵が出た瞬間

本物である事は

一目で判りましたが

あとは印刷かどうかだけ。

 

キャンバスの裏まで

見せて欲しかったと言うのが

ホンネです。

岡鹿之助作『三色菫』

開運!なんでも鑑定団に出品された作品

 

岡鹿之助の絵を持てる人間は

ほんの一握りで

国内有数のオークションでも

滅多に出て来ません。

それ位に寡作な画家でした。

私自身も過去に

ペン書きの自筆書簡は

持っていましたが

本画は当然の事

実は版画も持っていません。

 

でも岡鹿之助は

私にとっては

日本人油彩画家の頂点でも

有りましたので

回顧展は必ず見に行っていましたし

会場では絵に近付きすぎて

警備員に注意された事も有る(笑)。

 

岡鹿之助の作品は

本人が完成後に

加筆修正する事は

滅多に無いのですが

実は

加筆修正された代表作が有るって

知ってますか?

 

『遊蝶花』の事では

有りませんよ。

 

回顧展で

絵の端っこの方のソレに

気付いた時は

少しだけ嬉しくなってしまった。

それ位のマニアです。

 

今では語られる事も

無いのですが

岡鹿之助の描き方は独特で

一部分から始まって

その部分を完成させてから

その完成を周りに広げて行く

描き方。

余白が無くなった所で終筆するという

そういう画家でした。

 

頭の中で

完成が出来上がっている。

部分から描き始めるとは

そういう事なんです。

 

でも失敗も有って

だから失敗作って言うのは

部分から描き始めて

部分を描いたままで

筆が止まってしまう。

 

一部は完成してるのに

余白だらけ。

 

そんな描きかけの失敗作が

アトリエの部屋の隅に並んでいたと

友人の述懐に有りました。

 

それが岡鹿之助なんです。

 

完成後に

加筆修正された作品が

どれだけ珍しいか

判ってもらえたでしょうか。

 

生涯作品数は

自分の記憶では

本画で600点有ったかどうか。

6000点では無かった筈。

 

6を超えなかったと覚えていますので

600点で良かったと思いますが

間違っていたら

そこは御容赦。

 

それ位に寡作なんです。

 

画集を見ている人は

判ると思いいますが

回顧展では

画集で見た代表作が

ずらりと並ぶのですが

それ以外の新発見の絵は

存外少ない。

 

それもこれも

寡作だったからで

仕方の無い事かも知れません。

岡鹿之助作『遊蝶花』

ふんわりと積もった雪が印象的な作品ですが

御本人は、実はカチッとした白を

キャンバスに乗せたかったと後述されています。

 

テレビを見ていて

嬉しかった事と言えば

思いの外

色んな美術館が

三食菫の絵を所蔵していた事。

 

しかも質が高い。

 

それは収穫でした。

美術館が持つには

それなりの質が無いと

意味が無い。

 

回顧展で

絶筆の『段丘』を

自分の目で見た時

最後まで探究者だった事が

確認出来て

やはり岡鹿之助は

凄いなって感じたのは

私だけでしょうか。

 

著書である

『油絵のマティエール』は

名著ですが

そこから更に

御本人は進化していた。

 

絶筆の

『段丘』のマティエールは

光沢を帯びていました。

 

最後まで探究された証しが

そこに有りました。

 

画家に由る

材料学研究の先駆でもあります。