日本と言うのは

とても便利な国で

沢山のキャンバスが

普通に売られている。

 

でも海外へ渡った画家が

しょっぱなで面喰うのは

キャンバスが売られていない事や

絵の具を売っている店を

見つけられない事。

 

そんな笑い話の記事を

しょっちゅう目にして来ました。

 

海外では帆布を買って来て

キャンバスを自作するのは当たり前。

絵の具は画材屋さんでは無く

雑貨屋さんで買う物。

もしくは自分で手作りする。

 

近年までこんな感じだった様です。

現在がどうかは判りませんが。

 

そんなキャンバスと絵の具の関係について

少し触れます。

 

洋画家は

裏書を入れる人と、入れない人がいます。

何故でしょうか。

そして

何を使って裏書をするのでしょうか。

 

これが実は

真贋を判断する為の

一つの手掛かりなのですが

その点から少し解説して行きます。

 

簡単に言うと

最も最悪なのは

油絵の具を使って

キャンバスに直に裏書をする事なのですが

その一方で

一番確かなのも

画家自身の手で

消す事の出来ない方法で

(絵の具に拘らず)

裏書された作品が

一番真贋判定をし易い。

 

油絵の具と言うのは

酸化重合によって固まります。

つまり酸性。

キャンバスとの相性は悪い。

だから生の帆布(キャンバス)に

直接油絵の具で絵を描くと

完成された絵は

酸化によっていつかは

キャンバス自体がボロボロになって

崩れ落ちて行く。

 

ですから生のキャンバスを使う場合

一度膠を表面に引いてから

その上に絵の具で描く。

これがオーソドックスな考え方。

 

最低限必要な

描いた絵を守るための下地仕事です。

最近はアクリル系のジェッソとかを使えば

簡単に出来ますが。

 

これが油絵の具で裏書をする事を

嫌う人がいる理由。

裏は生の状態ですから

キャンバスの裏に直接描く事は

その部分が酸化する事を意味する。

 

もう一つは油絵の具の病気の事。

油絵の具と言うのは

土系色等、色によっては

浸透して絵を汚す色が有ります。

だから油絵の具での裏書は

実は好ましくない。

 

この二つの点で

薄描きの画家や

絵肌を大切にする画家は

油絵の具でなくとも

キャンバスに直接裏書する事を嫌います。

 

これがキャンバスに直接裏書をしない

洋画家達の考え方。

 

画家の性格なんです。

奥龍之介氏の贋作の裏書

奥龍之介氏の場合

キャンバスに直接裏書をする事は絶対に有りません。

ですから、この裏書だけで贋作と判ります。

古沢岩美氏の贋作の裏書

油彩で描かれています。

では本物は、何処に何でどう描かれているのでしょうか?

田崎広助氏の、贋作風にされた作品の裏書。

キャンバスに直接書かれていますが

真作はどうでしょうか?

 

裏書をどこに描くのか

それとも描かないのか

それはその画家の

ルールでも有ります。

木下孝則作『薔薇』

木下孝則氏は、裏書をしません。

それは弟子である、泉治彦氏にも受け継がれていました。

 

違う場所に描かれていたら

それはもの凄い珍品か

贋作か

贋作にされた作品か。

 

先ず後者を疑って見る事が

真贋に関しては

最初の仕事になります。