古沢岩美作『なぐさめもだえ』・・・真作なのかぁ?

 

古沢岩美には

思い入れが有って

有る意味何故か

作品の方がこっちに

寄って来てしまう

そんな洋画家です。

 

ですから

水彩や陶作品は

何点か所持していました。

 

元々は

シュルレアリスムの画家で

でも

エロスの表現に

その評価が高く

現在でも人気が有る。

 

それ故

ニセモノが多い画家でも有ります。

 

上の作品が

ネットオークションに出て来た時には

驚かされましたが

(代表作でも有りますので)

よくよく見ると

何かがおかしい。

 

洋画家が

同じ絵を何枚も描く事は

別に不思議な事では

有りませんが

その筆致に違和感を

いきなり感じてしまった。

古沢岩美作『なぐさめもだえ』画集より

 

シュルレアリスムの

この作品は

当然の事ながら

細部にまで拘りが有る。

 

その拘りが

描けていなければ

作品に

その意味が無くなってしまう。

 

ポイントになるのは

赤い糸巻と滴り落ちる血。

 

これが描けていなかった。

画集の部分、腕を伝わり滴り落ちる血

同上、足に絡まる赤い糸

同上、大地をうごめく人、その横には骨が・・・

 

では

出品されていた絵は

どうでしょうか?

滴り落ちる血は有りません。

赤い糸は絡まってはいません。

足に届いてもいない。

何が描かれているのか、意味不明。

上記の画像から推測出来る事は

参考にした原画が小さくて

多分細部が見えなかったのかな。

 

何より決定的だったのは

実は裏書。

ネット出品作品の裏書。

問題なのは、岩美の文字の一部が

木枠に隠れている事。

 

この裏書を見た時

古沢岩美本人の手で無い事は

一目で判りました。

 

筆跡が違います。

持っている真作の裏書の資料と

全く異なる。

 

そして美の文字が

木枠に半分隠れている。

 

その事の

何が問題なのか?

 

話しは簡単で

裏書した後に

木枠にキャンバスが張られたって事。

 

オリジナルの木枠は

何処に行ったの?

 

勿論、巻かれて保存されていて

別の木枠に

張り替えられたって事も

当然有り得るのですが・・・。

 

一度描かれた絵を

パンパンの状態にして

張り直すと

絵の具が剥がれ落ちる

危険性が有る。

 

無理に引っ張りを加えた

張り直しは

決してしません。

 

だから裏書も

元の状態で見えるのが普通。

 

横のタック(釘)の部分も、

最初に張られた時の

釘跡が残っている筈。

(その部分の写真は

有りませんでしたので

未確認です)

 

さて、出品された絵は

真作でしょうか?

どう思いますか?

 

で、ここから先は

現実的な話しです。

 

この絵は贋作だ、と

決めつけ

キャンセルする事は

不可能でしょう。

 

古沢岩美に

所定鑑定人はいません。

真贋を鑑定出来る人が

いないんです。

 

贋作だって思っても

それをどんなに説明し

力説しても

それは個人的な感想だって

一蹴されてしまう。

 

公の機関でないから。

認知された鑑定人で無いから。

 

御家族を見つけ

証明して貰えば

まだ、何とかなるのですが。

それが出来なかったら

一切の証明は不可能です。

 

この作品の

真作保証は

実は

全くの無意味。

 

同様の出来事が有ったら

出品者に

こう尋ねて見れば

判ります。

誰が贋作と判断したら

贋作と認めてくれるのでしょうか、と。

 

おそらく、建前を繰り返すばかりで

明確な事は

一切言えない筈ですから。

 

だって

いないんですから。

そちらで見つけて下さいって

成ってしまう。

 

過去人気作家であっても

物故になってしまえば

良く知っている近親者、

知人、友人の画家を

見つけられない限り

疑問の有る絵の真贋は

永遠に不確定と成ってしまいます。

 

古沢岩美の真贋の鑑定

誰が一番の適任でしょうか。

世間一般は

その鑑定を信じてくれるでしょうか?

 

今後

鑑定する人が

見つかるのかな?