これは、ヤテンとキバの
分離の儀式までの空白の14日の間に
起きた出来事である――
数分後
ドライブ「何事だ、騒々しい」
セイメイ「オムニが大変なんです!」
ドライブ「オムニがどうした、また不良にでも絡まれたのか」
セイメイ「食中毒です!!」
ドライブ「は?」
セイメイ「ご覧の有り様です……」
ドライブ「ヴァンパイアが食中毒など聞いたこともない、何があったんだ」
セイメイ「原因はこれです、エバーグリーン・ハーバー産の魚のブラッドパック。あのワールド、また環境汚染されてしまったみたいで……魚もその影響を受けて、ヴァンパイアクラッシュ菌という新種のウィルスが血液に含まれていたらしいんです。これがまたヴァンパイアにのみ影響があるというクセモノでして」
ドライブ「なんだ、そのピンポイントなウィルスは」
セイメイ「いや、それが放置していたら命に関わるらしく……」
ドライブ「………………治療法は?」
セイメイ「セルヴァドラータにあるオミスカ寺院の最深部にあるという秘宝……それしか特効薬が無いと聞きます」
ドライブ「そうか……面倒な話だ」
セイメイ「と、とりあえず手が空いている兵士達にセルヴァドラータへ行かせ」
ドライブ「バカ言え、ただでさえ人手不足だというのにオムニの為に人員を割けるか」
セイメイ「えっ……ま、まさか見殺しにするおつもりで?」
オムニ「うえぇぇ?オレのヴァンパイア生、儚い……」
セイメイ&オムニ「!?」
ヤテン「仕方ないだろう……ヴァンパイアクラッシュ菌の特効薬となる秘宝……それをドライブさん自ら取りに行くと言って……オムニから彼が心配だから付き添ってやってくれと頼まれたのだから」
キバ『組織のボス自ら軽率に動きやがって……てかドライブだってヴァンパイアなんだから1人でも大丈夫だろ』
ヤテン「オムニ曰く、ドライブさんは思ったよりアホだから心配だそうだ」
キバ『マジかよ……』
タスク「セイメイさんから、頼まれマシタ!ヤテンさん、シンパイだから、付き添ってヤレッテ!!」
キバ『どいつもこいつも過保護だな……』
キバ『ケッ、偉そうに』
タスク「ハジメマシテ、タスク デス!お兄さんカッコいいデスネ、タスクをダッチワイフにしない?」
キバ『そいつヤンデレだからやめとけ』
ヤテン「ダッチワイフとは何だ?」
キバ『知らなくていい』
ドライブ「ヤンデレ……ふん。病んではいない、私はただ愛の歯止めが効かないだけだ」
キバ『ヤンデレの素質大アリだよ』
ヤテン(このメンバー……不安しかない……)
ドライブ「道具?ヴァンパイアパワーで全て解決するだろう」
ヤテン「しません」
キバ『やべー、脳筋だコイツ』
キバ『こういうの、何に使うんだ?』
ヤテン「マシェットはツタを切り、道を開くのに使うのだ。ツタは素手でも退けられるが……時間がかかるうえに怪我の恐れもある。花は蜘蛛避けになるぞ」
キバ『うげー蜘蛛いんのかよ……俺様、節足動物苦手なんだよなぁ……』
売り子「あら!?あらあらまあまあ、貴方伝説の冒険家に瓜二つねえ」
ドライブ「……私ですか」
ドライブ「………………いいえ、他人の空似です」
売り子「あらまあ、そうなの……凄い似てるわぁ」
タスク「ヤテンさん、ドライブさんには、どうやって振り向いてもらえマスカ?」
ヤテン「タスクはドライブさんが気に入ったのか?」
タスク「ハイ!タスクの知り合いのナカで、比較的カオがマシ!」
ヤテン「そ、そうか……しかしドライブさんは……あまり推奨出来ないな……」
キバ『タスクよぉ、顔が良いから好きだって言うなら俺様の体が戻った時、俺様に惚れるなよ?』
ドライブさん、ハンドルから嫌われてるやんけ。
キバ『しかも相当古い飛行機だぜ、これ』
キバ『トラフィック・ドライブって……さっき売り子の婆さんが話してた名前だよな。220年前の伝説の冒険家で、しかもドライブに似てるって』
ヤテン「ファミリーネームが一致しているうえ、この話題が出た時のドライブさんは少し妙だった……ドライブさんがヴァンパイアになったのは211年前と聞くし、血縁関係があるのかもしれぬな……」
キバ『だな……まぁ、本人から話さないなら俺様達が聞き出すことでもねえけど』
ヤテン「うむ」
ヤテン「ドライブさん、1人で進んでいくのは良くありません。足並みを揃えねば」
キバ『そうだぞ……それにこの寺院って大量のトラップがあるって聞くしよ』
ドライブ「こうしている間にもオムニは苦しんでいるのだぞ、悠長にしていられるか!」
キバ『ったく、いつからオムニ大好きマンになったんだよテメーは!』
タスク「分析完了。どうやら、謎のバリアが貼られているヨウデス」
ヤテン「バリア……このまま突き進むのは危険だな」
ヤテン「なるほど……これらの謎を解きながら進んでいけば良いのだな」
キバ『バカお前、無闇に突っ込むな!!』
キバ『いや問題だろ、それ!!』
キバ『大丈夫じゃねーんだよ、さっさと引き返せダボ!!』
キバ『オメーは1万歳以下だろうがよ……』
ヤテン「オムニが心配していた理由がわかった……」
ドライブ「ふん、何だこんなもの。適当に動かせばいずれは当たるだろう」
ヤテン・キバ・タスク「えっ」
タスク「……ナニも起きなくて、良かったデスネ」
ドライブ「よし、先を急ぐぞ!」
キバ『しかもめっちゃ燃えてる』
ヤテン「1つ1つ調べていかねばな……」
キバ『は!?』
キバ『おいヤテン、あいつ燃えてんぞ』
ヤテン「私はもう知らぬ……あそこまで凄い人とは思わなかった……」
ドライブ「……その声は………………何者だ」
ドライブ「……理解した。この寺院から漂っていた嫌な気配は貴様の魂か。太古の呪いに囚われて成仏も叶わんか……哀れな」
トラフィック『そういうなよぉ……お前、オレの子孫か何かだろ?同じ身の匂いがするからなぁ……ひひひ、どのガキの子孫かな?ガキなんて女とっかえひっかえ遊んで作って、ボンボンに売り飛ばして、セルヴァドラータ探検費用の足しにしてたからなぁ……どいつの子孫かわかんねぇなぁ……ひひひ……』
ドライブ「……消え失せろ。貴様の声を聞くと反吐が出る」
トラフィック『おお、怖い怖い……ひひひ……』
ドライブ「……私の父親だ。どうやらこの遺跡で死んだようだな……そして魂が呪われ、成仏も叶わぬ悪霊と化したようだ」
キバ『お前の親父か……さっきの口ぶりだと ろくでもないし、ろくな死に方もしてないみてぇだな』
ヤテン「……言葉に出来ないほど醜悪な話だ」
ドライブ「……奴隷として売り飛ばされた私は、貴族の夫婦から動物以下の扱いをされた。空気が汚れるからと口を開くことも声を発することも許されず、ただ黙って言われるがままに仕事をこなし、栄養補給は点滴のみ……」
ドライブ「死んでしまった方が楽だと何度も思った……部屋には凶器になる物もないし、首吊りできる道具もない、舌を噛み切ろうにも常に轡をハメられていて叶わない……足りない頭で一生懸命考えた結果、頭を壁にぶつけ続けるという自死を思いついたのだ」
ドライブ「……その時、私が頭を打ちつける音を……たまたま廊下を歩いていたウィンカーが聞きつけ、部屋に飛び込んできて私を止めた。彼は私がシムではなくロボットなのだと両親から言われていたらしく、それを本気で信じていたらしい。だが頭から血を流す私を見て、生きているシムだと初めて気づいた」
ドライブ「それからウィンカーは両親の目を盗んで、私に食事を与えてくれたり、勉強を教えてくれたり、こっそり外に連れ出してくれたり……優しくしてくれた。私を人として扱ったのは……彼が、生まれて初めてだったんだ……だから私はウィンカーを……愛し、ずっと守り抜くと……そう……思っていたのに、私は…………」
ヤテン「……………………」
ドライブ「……過去の私は大切な人をこの手で守れなかった。だからこそ、また失いたくない。今度こそ自分の手で守りたい、救いたい。誰もが私の敵となった時、唯一私に寄り添ってくれたオムニを……私は死なせたくないのだ」
キバ『…………思ったより激重感情抱いてたんだな。だから自分からジャングル行って、秘宝を取りに行く!他人に任せられるか!!ってイキリたって来たわけか』
ヤテン「……必ず秘宝を見つけて、オムニを救わなくてはな」
キバ『だからって仕掛けを解く前にまた突っ込むなよ!?この調子だとオムニの前にオメーが死ぬからな!?』
ヤテン「貴方には学習能力というものがないのか?」
ヤテン「……ドライブさんの事を知れば知るほど……こう……どうしようもない人だという感想になっていくな……」
キバ『なんつーか、こう……背伸びしてる10歳前後って感じだわ……』
ドライブ「無礼な!!私の心は18歳だ、そこまで幼稚ではない!!」
ヤテン「そして例によってまたバリアがあるな……ドライブさん、もう突っ込むのはやめていただけるようお願いします」
ドライブ「私はそこまで愚鈍ではない。闇雲に進んでも痛い目を見るという事は理解している」
キバ『理解するまで3つのバリアに阻まれてんだよ、理解すんの遅えわ』
タスク「わあドライブさん、地味に賢いデスネ」
ヤテン(嫌な予感がしてならない……)
ヤテン「やはりダメだったか……」
キバ『コイツ、こんなんで今までよくキングだのハンター達のボスだのやれてたな……』
タスク「ドライブさん、顔以外ダメダメなんデスネ。幻滅シマシタ」
キバ『ところで、頑張ったのヤテンとタスクじゃね?ドライブはアホみたいに突っ込んで痛い目にあっただけじゃね?』
ヤテン「た……助けたいという気持ちが大事なのだ」
キバ『なんか格好つかねえなあ』
ヤテン「宝箱があるな……あの中に秘宝があるのだろうか」
トラフィック『ひひひ……この遺跡にあるものは全てオレのもんだ。秘宝は渡さねぇ……ひひひ……』
キバ『テメェ、宝箱が開かないよう封印してやがんのか!』
トラフィック『ひひひ……太古の術を舐めるなよ……そう簡単に開けられるわけがない……ひひひ……』
トラフィック『無理やり こじ開ける気か!そうすりゃお前もただじゃすまねえぞ!!下手すりゃ死ぬぞ!!』
ドライブ「……既に2度死んでいるようなものだ……何の因果かここまで無駄に生き長らえた命、友を救って終わるのならば……悪くない」
ドライブ「治った途端に騒々しい奴だ……手間取らせおって。この借りは倍の働きで返してもらうぞ」
オムニ「へへへ……頑張りまーす。オレぁ、ドライブさんがオレなんかの為にわざわざセルヴァドラータまで行ったことが嬉しくて仕方ねえよぉ」
ドライブ「ふん……」
オムニ「ところでドライブさん……」
オムニ「気になるんスけど」
ドライブ「気にしなくていいことを気にするな!!」
オムニ「はぁ……あっ、じゃあ写真撮ってもいいですかい?ガイコツ姿なんてめっちゃレアだし、貴重だし!!」
ドライブ「もう一回ヴァンパイアクラッシュ菌入りのブラッドを飲ませてやってもいいんだぞ」
オムニ「ひいっ、さーせん!!」
これからの戦いで何が起ころうとも、必ず守ってやる……。