奴は猫を被り、人を騙すのが得意だった。
過去の私が愚直だったのもあるが……簡単に心を許し、私は良いように使われてしまった。


ニヴ「重ね重ね、助けてくれて ありがとうごぜえやす!こんな廃屋にまさか人がいるとは思いやせんでした……駄目もとでドアを叩いて良かった〜」
ドライブ「……ああ……」


ドライブ「……ところで、お前はどうして追われていたんだ……?敵だとか殺すだとか、穏やかではない状況だったが」
ニヴ「あー、やっぱ気になりますよねぇ……えっと……その前に1つ質問。ドライブさんはシムを襲うのが好きですかい?」
ドライブ「……好きではない。私も元はシムだ……それに……他者を傷つけるのは……好ましくない……」

ニヴ「おおお……それなら良かった、わーとドライブさんは仲間でさあ!」
ドライブ「……なかま?」


ニヴ「そうでさぁ、実は わーはシムを襲うのが好きじゃないし……なんならシム好きなんでさあ。種族は違えど同じ人の形をした命ある存在……そんな奴らを襲いまわるのは嫌だし、襲われて命を落とすシムを見るのも嫌で……だから わー、キングの支配下エリアを抜けて、シムの街に行こうと考えてるんでさ」
ドライブ「……シムの街に行って、何をするつもりなんだ?」

ニヴ「勿論シムを守るんですよ。本当はシムと一緒に生きていきたいけど……アイツらはヴァンパイアを怖がるだろうし、きっと共存は無理な話……でも、わーはそれで良いんでさぁ。シムをヴァンパイアの脅威から守れればそれで……」
ドライブ「……優しいんだな」
ニヴ「恐れ入りやす」


ニヴ「……でも わーは……いずれはキングとクイーンを倒して、本当の意味で平和をもたらしたいんでさあ」
ドライブ「……キングとクイーンを、倒す……?」

ニヴ「へい!悪いのは世界を力で支配しようとするキングとクイーンでさあ!同族ですら従わなければ殺す……そんなやり方が まかり通っているせいで、本当は争いが嫌いなヴァンパイアも無理やり従わされ、嫌々シムを襲う羽目になる……キングとクイーンさえいなければ、シムにもヴァンパイアにも……平穏な日々がやってくる筈でさぁ」
ドライブ「……っ」


ニヴ「……でも、そう息巻いたところで わー1人では何も出来やしねえ……さっき追いかけてきた奴らもそうでさぁ。アイツらはキングの配下で、このエリアを抜け出そうとした わーに気づいて抹殺しに来た。ここにドライブさんがいなければ、わーは もう おっちんじまってたぜ……わーにも……志を同じくする仲間がいれば……」
ドライブ「…………私も……」
ニヴ「ん?」

ドライブ「私も……クイーンを倒すのが……目的なんだ」
ニヴ「えっ、マジっすか!?」

ドライブ「ああ……でも、私1人では……クイーンを守るキングや配下達には敵わない……だから……仲間が欲しいと思ってた……」
ニヴ「おおお」


ニヴ「じゃあ、手を組みましょうよ!目的も倒すべき相手も同じですし……それに……きっと他にも わー達と同じ気持ちのヴァンパイアがいる筈!ソイツらも仲間に引き入れましょう!とはいえ、まずはこのエリアを出ることを目標としましょう!」
ドライブ「……本当に、私と一緒に来てくれるのか?」

ニヴ「当たり前じゃないっすかい!まあ、わーは力が弱くて頼りないかもしれやせんが……でも、わーも鍛えて強くなってみせやすから!任せてくだせえ!」
ドライブ「……ああ。じゃあ、これから宜しく頼む……」


ドライブ(……キングでない私にも ついてきてくれる人はいるんだな。仲間が……出来た。独りじゃないんだ……私は……)

 


 現代 トマラン



アリステラ「……ミッチちゃんとライトちゃん、なかなか帰ってこないねぇ……」
オムニ「おん……」

アリステラ「やっぱり私達も探しに行きましょう?」
オムニ「んんん、でもライトが皆で行ってもミッチが意固地になるだけだから任せろって行ってたし……行き違いになってもアレだし……」
アリステラ「でも心配だわ……私だけでも探しに」
ピリリリ


オムニ「んあ、ブレーキさんから電話だ!ちょっと待ってろアリス!へい、オムニです!!」
ブレーキ『オムニくん、ライトくんはどうしてるんだ?』
オムニ「んあ?今 出かけてていないから分かんねーですけど……なんかありました?」

ブレーキ『先程ライトくんから着信があったんだが……私が応じた瞬間に通話が切れてしまってな。かけ直しても繋がらないものだから気になって』
オムニ「んええ……マジっすか……ちょ、ちょっとオレ、ライト探してきやす!」

ブレーキ『ああ、何かあったとしたらサザンクロスに連絡してくれ。ボスは今おとり捜査中だしな』
オムニ「へい!!」


オムニ「アリス、ライトが」
アリステラ「ライトちゃん、電話が繋がらない状態なんでしょう?早く探しに行きましょう!」
オムニ「んあ、聴こえてたのか……そっか、ウェアウルフだから耳が良いんだっけ」


アリステラ「オムニちゃん、ライトちゃんの気を探って見つけられないの?」
オムニ「んんん、オレのセンサーあんまり当てにならないんだよ……この間飛び出していったミッチを見つけられたのが ある意味奇跡っていうか……」

 


ニヴ「あー、そっちに当たりましたかぃ……まあ戦力削れたから良いか」
ミッチ「な、なんだテメェは!!」
ニヴ「どうも、わーはニヴ・ヴェルメリオって言いやす。お見知りおきを」


ミッチ「テメーの名前なんざ どうだっていいんだよ!!ライトを戻せ、早く!!」
ニヴ「なんだテメェはと聞いてきた舌の根も乾かぬうちに その言い草ですかい。躾がなってねえな〜、流石ドライブさんが育ててるガキだぁ」
ミッチ「……っ、ドライブを知ってるのか!」


ニヴ「おうおう、よーく知ってるぜ。古くからの付き合いでなぁ……わーはアイツのこと、追い詰めて追い詰めて痛めつけて泣かせて……精神崩壊寸前まで追いやったことあるぜ」
ミッチ「あぁ!?う、嘘つくなよ!ドライブがテメーみたいな奴にそこまでやられる訳ねえ!」

ニヴ「ところがどっこい、嘘じゃないんでさあコレが。ドライブさんって根はガキンチョだからさぁ、脆“もろ”いとこばっかりなんでさ。お前そういうとこ見たことねーの?」
ミッチ「……脆いとこ……」

ミッチ「た、確かに記憶無くなった時は めっちゃ弱々しかったけどよ……でも今のドライブは強くて頼もしくて、1人で何でも出来ちまうような奴なんだ!テメーなんか簡単にぶっ倒すぜ!!」
ニヴ「ふーん」

ニヴ「じゃあ、お前達を使って確かめてみましょうかねえ」
ミッチ「えっ」




ニヴ「連れて行くのはコイツらだけでいいか。凍った奴は放置プレイでいきますかねーっと」


マゼンタ「……今のがニヴか。人形を1人連れて行ったようだが……まあいい。しかし本物の側にニヴがいるのは厄介だな……本物と話がしたくとも、ニヴがいると……」
アンドロイド「…………………」

マゼンタ「おい、聞いているのか」
アンドロイド「あの凍ってる子、助けないと」


マゼンタ「バカを言うな、ソイツは敵だぞ!助ける必要などない!」
アンドロイド「でも、このままだと凍え死んでしまうよ。この子もドライブの大切な存在なんだ……この子が死んだらドライブが悲しんでしまう、僕がそれがイヤだ!止めるというなら、僕は君にはもう協力出来ないよ」
マゼンタ「………………」


マゼンタ(……いや、待てよ……黄色い方の人形が連れて行かれたんだ……この赤い人形を言いくるめれば……利用出来るかもしれない)

 

 レイブンウッド



ドライブ「貴様が連続殺人事件に関わっている事はわかっている。無駄な抵抗は辞めて大人しく捕まることだな」

マゼンタ「…………いや、駄目だ……受け入れては……主義に反する……ずっと信じていたものが崩れ落ちてしまう……だが…………
ドライブ「……何をブツブツ言っている、気でも触れたか」

マゼンタ「…………………………………美しい
ドライブ「…………?」


マゼンタ「美しい!!お前のような者をずっとずっと探していたんだ!!」
ドライブ「……………………は?」


マゼンタ「真の美というのは漆黒の髪を持つ女性にしか備わっていないと信じてきたが……理想の美しさを持つ者が現れた、この喜びに勝るものはない。それに美しき者に己のシャツを着用されると、こうも興奮するとは……私は新たな扉を開いた!!」
ドライブ「……おい?」


『美しいって、良かったね』
ドライブ「何も良くない!!ええい、その手を離さんか気色悪い!!」
マゼンタ「ほう……嫌悪をあらわに歪める表情……なかなか そそられるな。理想通りだ」


マゼンタ「肉欲も性欲も無く、凛とした立ち振る舞い、敵陣であっても動揺や恐れをあらわにせず こちらを睨みつける強気さ……だが、そういった強さの中に酷く脆い一面が隠されている。その脆い一面を無数のガラスで覆い隠して なんとか真っ直ぐ立つことが出来ている気丈夫……お前はそういう男だ、目を見れば分かる」
ドライブ「何を勝手に私を分かったつもりになっているんだ、気持ち悪い」

マゼンタ「動揺を全く見せない その態度、良い……美しい……ああ……嗜虐心“しぎゃくしん”を掻き立てられる!!屈服させたい!!」
ドライブ「…………」

『震えてるけど大丈夫?』
ドライブ(大丈夫ではない、未だかつてないほどの鳥肌が立っている)


マゼンタ「その綺麗に整った顔を苦痛で歪ませたい……真の美というのは苦痛、苦悶、悶絶、そして命が尽き果てるその瞬間に宿るのだ!!だが、生に執着して みっともなく命乞いや泣き喚くばかりの者では意味がない!そいつらの苦悶は美しさではなく醜さだ!!だが お前は違う……お前のように弱くも強き者ならば、苦悶の先に美しさがある……」
ドライブ「どこに美しさを見出しているんだ貴様は……!気持ち悪い!」
マゼンタ「喋るな!!喋ると解釈違いだ、お前が漏らすのは苦痛に呻く声だけでいい!!」

ドライブ「……極まっているな…………苦痛の先に美しさがある、つまりお前が黒髪の女性を殺していたのは……そんな理由か……?」
マゼンタ「ふん、今までに死んできた女共は全員ハズレだ。どいつもこいつもみっともなかった、美しさなど無かった。だから適当に始末させたんだ」


マゼンタ「数少ない美しき者達は……大事に保管しているさ。だが、今までの誰よりも お前は美しい……男など醜さの権化と思っていたが……捨てたもんじゃないな……」


マゼンタ「さあ、お前をどう苦しませて描こうか……ゾクゾクする……ハァハァ……」
ドライブ(……とんだ嗜虐趣味の輩がいたものだ……まあ、幸いコイツはオカルト種族ではない……まずはコイツを捕まえてニヴの情報を聞き出すとしよう)

「マゼンタさーん、ソイツを痛めつけたいなら わーが良い舞台を用意しますぜ〜」
ドライブ「っ!」


ニヴ「あーらよっと……ドライブさん、おひさ〜。何十年ぶりですかねえ」
ドライブ「ニヴ……!!」


ミッチ「ド……ドライブ……」
ドライブ「ミッチ、エンジン!?何故お前達が……!」

ニヴ「ちゃんと躾してますかい、ドライブさん。コイツ、自分が殺人事件を解決するんだって息巻いて外をブラブラ出歩いてたんですぜ〜。ほんとバーカ」
ドライブ「なっ……」


ドライブ「貴様……2人から離れろ!!」
ニヴ「状況わかってやす?わーは今この坊主と虎の命を握ってるんでさあ。わーがその気になりゃあ、コイツらの首なんて軽く飛びますぜ」
ドライブ「くっ……」


ニヴ「まあ、そうピリピリしなさんな……コイツらは大事な人質でさぁ…………ガキと虎を助けたかったら……明日の21時、グラニット・フォールズの森まで来てくだせえ……1人でな。もし仲間なんて連れてきやがったら、コイツらには二度と会えねえと思ってくだせえ」


マゼンタ「ほう、グラニット・フォールズか……私のアトリエだな」
ニヴ「おー、いえーす。そこで わーがコイツをボッコボコにしてやるんで……アンタは好きなだけ描いてくだせえ」
マゼンタ「ふふ……楽しみだ」

ニヴ「じゃ、そういう事なんで……また明日〜」
ミッチ「ド、ドライブー!!」


ドライブ「ミッチ!エンジン!!


ドライブ「……助けに、行かねば……」
『危ないよ……きっと罠だよ、行ったら何をされるか……!』

ドライブ「だが このままではミッチとエンジンの命が危うい!アイツらは……何があっても守ると決めたんだ……行かなくては……!」
『……ドライブ……』