奴と初めて出会ったのは……新たなキングによって体を滅ぼされ、ウィンカーの体で逃げおおせて分離の儀式を終えた後だった。




ドライブ(体は取り戻した……ウィンカーの遺体にも術をかけたし、腐敗することはない……)


ドライブ(……でも……これからどうすれば……クイーンに復讐したい、ウィンカーの仇討ちをしたい……だが……無策で戦いを挑んでは無駄死にしてしまう……今のキングは私を倒した者より ずっとずっと強い……それに配下のヴァンパイアも増えてるだろう……私、一人では……)


ドライブ(…………一人じゃダメなら……仲間が、いれば……でも私のような者についてきてくれる人がいるわけがない……キングではなくなった私には、もう……誰も……)
ドンドンドンドンッ


ドライブ(ひっ…………だ、誰……まさか、クイーンの部下に……ここがバレた……?)

「だ、誰か!誰かいないんスか!!いるなら開けてくれ、助けてくれ!!」
ドライブ(……助けを求めている……?)


男性「誰もいないのかよぉ!このままじゃ、わー……わー……!!」


ドライブ「…………何者だ」
男性「あっ……!良かった、人がいた……た、頼む!助けてくれ!わー、悪いヴァンパイアに追われてるんでさぁ!」
ドライブ「悪いヴァンパイア……?」


男性「そうなんです!悪いヴァンパイアってのは……」
「見つけたぞ!」


男性「ヒィィィ、来たあぁ、お助けぇ!!」

ヴァンパイアの女「……あなた、誰?そいつの仲間?」
ドライブ「……仲間……ではない……」

ヴァンパイアの男「そうか、じゃあそいつを渡せ」
男性「わ、渡さないでくだせえ!わー殺されちゃう!」


ドライブ「……渡したら、殺すのか」
ヴァンパイアの男「ああ、殺すとも!そいつは敵だからな!!」
ヴァンパイアの女「仲間じゃないなら、そこを退いて!あなたには関係ない話よ!」

ドライブ「……助けを求めてる人を放ってはおけない……それに……1人相手に2人で寄ってたかって……ますます見過ごせない……」
ヴァンパイアの男「チッ、面倒な!」


ヴァンパイアの男「だったら お前を倒してから そいつを始末してやる!」
ヴァンパイアの女「頑張って!」
男性「ひいー!




ヴァンパイアの男「だ、だめだ……強すぎる……!!」
ヴァンパイアの女「きゃあああ!大丈夫!?」


ヴァンパイアの女「こうなったら、私も一緒に……!」
ヴァンパイアの男「いや……パワーが違いすぎるんだ……俺達に勝ち目はない……一旦引くぞ!」
ヴァンパイアの女「ええ……!」


ドライブ(……逃げていったか……体、戻ったばかりだが……パワーも何とか使いこなせてる……)


男性「あの、助けてくれてありがとうごぜえやす!アンタ、見かけによらず強いんスね!」
ドライブ「ん……ケガとか、してないか?」
男性「はい、お陰様で!」


男性「あっ……申し遅れやした!わーはニヴ……ニヴ・ヴェルメリオって言いやす!お見知りおきを!」



 



 現代 レイブンウッド


どっしええぇぇぇぇーー!!


短髪の男「首輪つけるついでに胸を触ってみたら……コイツ、男じゃねーか!!」
長髪の男「お、お前なぁ!何が可愛いだよ、ふざけんな!」
短髪の男「お前だって女だと思ってたじゃんか!」


長髪の男「ど……どうしよう……男なんて連れてきたってバレたら……」
短髪の男「幸いニヴ様もマゼンタもいないし……見なかったことにして、コッソリ逃げようぜ!」
長髪の男「そ、そうだな!」


ドライブ「逃さん」
男性達「へあっ」




男性達「きゅうぅ……」
ドライブ「……はぁ、まったく……酷い目にあった。まさか胸部を触られるとはな……危うく手が出るところだった」

『でも触られるまで女の子って思われてたよ、良かったね』
ドライブ「良かったけど良くはない」


ドライブ「まあいい……幸い ここに男物のシャツが置いてある……これに着替えて女装とは おさらばだ」
『似合ってたのに……勿体ないなぁ』
ドライブ「嬉しくない褒め言葉だ」


ドライブ「ふう、やっと体が軽くなった……しかし……」



ドライブ「……ここの家主は随分な趣味を持っているようだな……棺に美の追求と刻まれている」
『あの中……誰か入ってるのかな』

ドライブ「……入っているだろうな、遺体が。そして この漂ってくる香り……恐らく棺の中は血の海だ……文字通りの」
『ひ……』


ドライブ「……屋敷に他の者の気配はない。ニヴ様やマゼンタとやらが戻ってくるまで、コイツらの記憶でも読み取るとするか……」

 


 一方その頃 トマラン



ミッチ「はぁ……つっかれたぁ……なんか黒髪の女を見かける度に暫く見張ってるけど、全然犯人らしいやつ来ねぇ!今日は大人しくしてんのかぁ〜?」
エンジン「ガウ?」
ミッチ「ん、どうしたエンジン」


エンジン「ガル!!」
ミッチ「お、おい何処に行くんだよ!待てって!!」



女性「なっ、なんなのよ貴方!あっちに行って!」
男「悪いがな……こっちもやられたくないんだわ、来てもらうぞ」


ミッチ「あー!!なんか黒髪の女が襲われてるじゃねえか!!アイツが犯人なのか……よしエンジン、ロックに捕まえんぞ!」
エンジン「ガオ!」


ミッチ「悪さはそこまでだぜ、おっさん!」
男「何だお前は!?」

ミッチ「オレはミッチ……今からロックにお前を捕まえる男だ!」
男「はぁ……?」


女性「な、なんだか よくわからないけど今のうちに逃げよっと!」
ミッチ「おー、逃げろ逃げろ!」
男「あっ……ま、待て!」


ミッチ「おっと、行かせないぜ!このオレのロックでスペシャルな魔法……」


ミッチ「トニト・スラッシュを喰らいやがれ!!」
男「うわああぁ!!


男「……って、あれ……?ちょっとビリッとしただけで全然大したことないぞ……」
ミッチ「え……マジ……?」
エンジン「……クゥン……」


男「脅かしやがって!!小僧、よくも邪魔をしたな!貴様のブラッドを吸ってやる!」
ミッチ「う、うわー!!


「まったく、意気揚々と飛び出していったかと思えば このザマですか」
ミッチ「あっ……」


ライト「世話の焼けるリーダー様ですねえ」
ミッチ「ライトー!!」


男「また子供か!夜中に子供がフラフラと、どうなってるんだ この街は!」
ライト「夜中に黒髪の女性を狙って徘徊している人が何を言っているんですか」

男「うるさい!とにかく邪魔立てはさせない!」
ライト「はぁ……」


ライト「貴方の方がうるさいんで、寝ててください」




ライト「ふぅ……一体何をやってるんですか、ミッチ」
ミッチ「おう、わりいなライト!今回ばかりは助かったわ!」

ライト「会話成立してませんけど?聞きたいのは礼ではなく、何をやっているのかという質問に対する答えだバカ」
ミッチ「バカって言うな!!」


ミッチ「……か、活躍したかったんだよ……オレ1人だけ小学生のまま成長出来てね〜のは……オレが……弱くて何も取り柄がねえからだと思って……だから、サザンクロス……ドライブが今追ってる事件をオレが先に解決すれば、成長出来るし皆も見返せるかなって……」
ライト「事件……黒髪の女性を狙った連続殺人事件か」

ミッチ「なんだよ知ってんのかよ」
ライト「俺はバカのお前と違って毎日ニュース見てるからな」
ミッチ「だからバカって言うんじゃね〜よ!!」


ライト「バカはバカでしょ?バカじゃないならアホとでも言いましょうか?ろくに魔法も使えない、戦う力も無いくせに息巻いて出て来て……トニト・スラッシュ……ぷっ……」
ミッチ「み、見てたのかよ!!」

ライト「ええ、貴方が飛び出していってから ずっと後をつけていましたから。即座に連れ戻そうとしても“オレはロックにやれんだよ!”とか言って聞かないことは容易に想像できたので、魔法が効かずに情けなくも縮こまって現実を思い知らせたところで助けに入ったんです」
ミッチ「相変わらず性格わりいな……!」
ライト「そういう風にプログラムされていますので」


ライト「まあ、これで分かったでしょう?貴方には事件の解決能力などないと。さっさと帰りますよ、オムニも心配しています。貴方を追いかける時、事前にミッチのことは私に任せてくださいと言ったので家で大人しく待っている筈ですよ」
ミッチ「なんでオムニも連れて来なかったんだよ」

ライト「アイツがいたら話がややこしくなるし、騒いでうるさいだけだろ」
ミッチ「あ~」


ライト「……と、帰る前にこの男を何とかしないと。ブレーキに連絡するから ちょっと待ってろ」
ミッチ「おう」


ミッチ「…………………」


ミッチ(オレじゃ事件を解決できない……でも……だったらどうすりゃいいんだ?どうすればオレは成長できるんだよ……強くなれるんだよ……こんなに成長が遅れたのは初めてだ……今のオレには……何が足りないんだ……?)


「……………」


エンジン「ガオオォ!!
ライト「どうしました、エンジン…………っ!」


ライト「ミッチ!!今すぐその像から離れろ!!」
ミッチ「あ?」
ライト(反応鈍い、あのバカ!!こうなったら……)


ライト(こっちの方が確実だ!!)
ミッチ「うわっ、なんだよライト!!」


  




エンジン「ガウッ!ガウウゥ!!」
ミッチ「……ぅ……な、何が起きたんだよ……」


ミッチ「えっ…………ラ、ライト!?」


「あー、そっちに当たりましたかぃ……まあ戦力削れたから良いか」
ミッチ「な、なんだテメェは!!」
エンジン「ヴヴヴ……!!」


「どうも、わーはニヴ・ヴェルメリオって言いやす。お見知りおきを」

 

 レイブンウッド



ニヴ「若者で黒髪の女、誰でもいいから連れてこい。あー……なるべく顔整ってるヤツにしてくれぃ。マゼンタさんうるせーからな……じゃ、頼むぜ」


ドライブ「ふぅ……」
『どうだった?彼らの記憶から情報は得られた?』

ドライブ「……大した情報は無かった。コイツらはニヴから黒髪の女性を連れて来いという指示を受けていただけ……ただの下っ端だ」
『そっか……』


ドライブ(……だが……あの男が生きていたというのは私にとっては大きな情報だ。とうに朽ちていたかと思いきや……存外しつこいものだ。ニヴとマゼンタという男……奴らがこの連続殺人事件の黒幕か……)


黒髪の男「む……?新しく誰か連れて来られているかと思ったら……男じゃないか」
ドライブ「!」


ドライブ(コイツがマゼンタか……しかし、この顔……どこかで見たことがあるような……)


マゼンタ「……………男……」
ドライブ「ふん、女性ではなくて残念だったな…………貴様が連続殺人事件に関わっている事はわかっている。無駄な抵抗は辞めて大人しく捕まることだな」

マゼンタ「…………………」
ドライブ「聞いているのか」

マゼンタ「………………ハァ……ハァッ、ハァハァ……!」
ドライブ「……なんだ?」
『なんか様子変だよ……』


マゼンタ「…………いや、駄目だ……受け入れては……主義に反する……ずっと信じていたものが崩れ落ちてしまう……だが…………
ドライブ「……何をブツブツ言っている、気でも触れたか」

マゼンタ「…………………………………美しい
ドライブ「…………?」


マゼンタ「美しい!!お前のような者をずっとずっと探していたんだ!!」
ドライブ「……………………は?」