日曜日 ドライブ邸



セイメイ「お邪魔します、ボス」
ドライブ「ああ、よく来てくれた。とりあえず座りなさい」


ミッチ「………………」


ミッチ(例の黒髪女連続殺人についての話かもしれねぇ……オレがドライブ達より先にロックに解決する為にも、話を聞いておかないとな!)


ドライブ「それで、お前達が考えた作戦というのは?」
ブレーキ「はい……何も複雑な話ではありません。おとり捜査です」
オムニ「んあ!?おとり捜査!?
ドライブ「……続けろ」


ブレーキ「狙われているのは黒髪の若者の女性であり、例外は無い。そして現状、犯人の目星は付いていない……犯人へ辿り着く証拠が足りておらず後手に回っています。これを打破するには おとりを使い、わざと狙われることで情報を得る、あわよくばそのまま捕まえるのが最適と我々は考えました」
オムニ「おおっ、流石ブレーキさん!副業が警察本部長なだけある!」
ブレーキ「それは副業ではない」


オムニ「でも、おとりを使ったからって絶対狙われる訳じゃないんですよね?」
セイメイ「それはそうだが、何もしなければ進展はないんだ。1%でも成功する確率があるならやった方が良いに決まっている」
オムニ「んん……確かにぃ」


ドライブ「……おとり捜査に異議はないが、問題点がいくつかある。まず、誰をおとりに使うかだ。髪は……ウィッグで何とでもなるとはいえ……サザンクロスに女性かつ若者のハンターはいないだろう」
オムニ「んあ……一般人に協力してもらうとか?」

ドライブ「バカ言え、一般人を危険に晒せるか」
オムニ「おとりになってくれてる人をサザンクロス総出で見守れば大丈夫でしょ!」

ドライブ「犯人はヴァンパイアの可能性が高い……相手がどれほどの知能やパワーの持ち主かは未知数だが、もし周囲にいる者の気配を探られて警戒されたら意味がない。変に刺激してしまう可能性もあるしな。それに護衛がいるからと言って絶対に大丈夫とは限らない」
オムニ「んんん……なるほど……」


セイメイ「……確かにサザンクロスには若者女性のハンターはいません…………でも、女性でなければ……います」
ドライブ「……どういう事だ?」

セイメイ「若者男性を使うんですよ」
オムニ「いやいやいや、男だとダメじゃねーの!?犯人が狙ってんのは女なんだろ?男なんか眼中に無いだろ」

セイメイ「だから……男を女に見せかけるという訳さ」
オムニ「それって、つまり……女装ってこと!?」
ブレーキ「その通り」


ドライブ「ふむ……確かにヴァンパイアには気配を探る力はあれど、相手の性を判別する力は無い……それに中性的な顔立ちや細身の男性ならば、それらしいメイクを施せば女性のように見せかける事は可能だ」
オムニ「男の娘ってのも流行ってますしねー!」

ドライブ「しかし……ウチのハンター達に中性的な顔立ちで細身の男はいただろうか……全員ハンターだけあってなかなか厳つい奴らばかりだが……」
オムニ「厳つい女って事にすりゃ良いじゃないですか」
ドライブ「いや……男の厳つさと女性の厳つさは結構違うからな……ちょっと無理がある…………誰が適任だ……?」


セイメイ「………………」
ブレーキ「………………」
ドライブ「……なんだ?何故2人して黙って私の方を見る、言いたいことがあるなら言え」

セイメイ「じゃあ言います。適任は他ならぬ貴方です、ボス」
ドライブ「……………………………は?」


セイメイ「鍛えてる割に筋肉もなく、それなりの痩躯“そうく”!頑張れば女性と言い張ることが出来そうな、それなりに中性的な顔立ち!それにボスだったら襲われても自力で何とか出来そうですし、サザンクロスの中では貴方が一番女装に向いていそうなんですよ!!」
ドライブ「いや……どう見ても私は顔も体も男だろう!!無理がある!!」

セイメイ「いえいえ、頑張れば女性になれますよ!鏡を見てきてください!」
ドライブ「鏡を見たって映らんだろうが!!」


ドライブ「……こ、声!見た目は誤魔化せても声はどうする!私の声は低いぞ!どう足掻いても男の低音ボイスだ!」
オムニ「黙ってりゃいいんじゃないスか?」
セイメイ「見た目で釣り上げる事が出来れば十分ですから」

ブレーキ「カラオケで喉を痛めて声が出ない設定にしましょう」
ドライブ「なんだその取ってつけたような設定は!」
オムニ「ドライブさんは黙ってればイケメンなんですし、黙ってれば美女になれますって!多分!!


オムニ「ぎにゃああああああ……」
ミッチ(ドライブ達は おとり捜査か……どうにかオレの方が先手を打てねえかな……)

 

月曜日



ドライブ「アリステラとライトは今日から高校だな。心機一転、しっかり学んでくるんだぞ」
アリステラ「はぁーい」
ライト「学ぶことなんて無さそうですがね」

オムニ「んん〜、ライトは思いやりを学んだ方が良いぞ!それにお前は無駄だとか何とか言ってチャレンジしなさすぎ!たまには友達作ってバカ騒ぎしてこいよ〜」
ライト「バカと つるむのは精神的苦痛になるんですよ」

ミッチ「………………」


ドライブ「……ミ、ミッチも学校しっかりな」
ミッチ「うっせーな、わかってるよ」
アリステラ「ミッチちゃん、そんな言い方は良くないわ」

ライト「まだ反抗期なんですか?だからテメェはいつまで経ってもガキ」
オムニ「んあー、全身が滑ったー!!
ライト(また蹴りやがったなオムニの野郎)


今日はアリステラとライトの初登校日!
勿論ついていきますよ!

 


 カッパーデール高校



アリステラ「ふふ、カッパーデール高校も久しぶりだねぇ」
ライト「……そうですね」

アリステラ「生徒達も前とは違うねぇ」
ライト「……そうですねぇ……」

アリステラ「新しいお友達出来るかなぁ」
ライト「……そうですねっ!」

アリステラ「どうして さっきから“そうですね”しか言わないの?」


ライト「燃えてるんですよ、体!!早く屋内に入らないと!!」
アリステラ「あ、そっかぁ……ライトちゃん、ティーンになったからヴァンパイアの力が目覚めたんだもんねぇ。これからは日傘が必要だねぇ」


ライト「はぁ……まったくヴァンパイアの体というのは不便な……」

先生「おお、お前が新入生のフランマか!私が担任のウィルソン・ストーンだ!!しっかり学ぶようにな!!」
ニア「私はニア・ドリーマーズですわ!!テメーからは いけすかない香りが漂ってますが、せっかく知り合いましたし仲良くしましょうですわ!!」

ライト「は、はぁ……宜しくお願いします」
ライト(うるせえ奴しかいねえのか ここは)


そして授業の時間となりました。
いつメン達と同じクラスだぜ!


さらに隣のクラスにいるリオニアは自主的に隣り合って座ってました!
萌え!!


アレクシス「うっ、ううぅ……授業の内容が難しくてついていけない……」
先生「アームストロング兄、座りなさい。わからないなら先生が教えるから……」

アレクシス「大丈夫、テストの時にガーランドからカンニングするから」
先生「コリャアアアアァ!!

ライト(い、今までで一番濃いクラスだ……最悪じゃねえか……)




 放課後


ガーランド「はぁ……兄様は最近ますます電波だ……あんなんで将来大丈夫なのか……?」
ライト「ああ、貴方アレの弟ですか。心中お察しします」
ガーランド「人の兄をアレ呼ばわりしないでいただけますか」

ライト「良かったらアレの未来を占いましょうか?30シムオリオンで」
ガーランド「金取んのかよ」


ライト「貴方のお兄さんの将来は……ほう」
ガーランド「どうなりました?」

ライト「正位置の星、明るい未来が待ち受けています」
ガーランド「そ、そうですか……」

ライト「ただまあ、明るい未来に辿り着くまでにバチェクシスとして沢山の人を嫉妬させていますが」
ガーランド「なんですかバチェクシスって!!」

 

 ドライブ邸



アリステラ「ただいまぁ」
オムニ「おかえりー!」

ライト「おや、ドライブがいませんね」
オムニ「んん……ドライブさん、今日は仕事が長引くから帰れないんだ!お前らも1日くらいドライブさんと離れても大丈夫だろ?」
ライト「まあ……そうですね。特に私とアリステラはティーンになったぶん力も増しましたし」

ミッチ「………………」


オムニ「んあ、ミッチどこ行くんだ?」
ミッチ「部屋に戻って宿題すんだよ!」

オムニ「んー、そっか!手伝おうか?」
ミッチ「手伝いはいらねえ!オレは1人でロックに宿題を制してやる!」
アリステラ「偉いねえミッチちゃん」


ライト(……どうも態度が妙だ。バカのくせに何か企んでるな、アイツ)


エンジン「ガウ!」
ミッチ「ふふん、わかってるぜエンジン。ドライブの帰りが遅いのは おとり捜査の為……だろ?」


ミッチ「オレは おとりなんて まだるっこしい事はしねえ!狙われそうな黒髪の女にくっついて護衛して、怪しい奴が来たらぶっ倒せば良いんだ!」
エンジン「ガオォ……」


ミッチ「オムニ、エンジンの散歩に行ってくるぜ!」
オムニ「あいよー、暗くなる前に帰ってこいよー」
ミッチ「わかってるぜ!」


ミッチ「よっしゃー、行くぜエンジン!オレもやれば出来るってロックに証明してやんぜ!」
エンジン「ガウゥ!」


ライト「……やれやれ……」

 


 サンマイシューノ



セイメイ『本当に護衛無しでも大丈夫ですか?』
ドライブ「ああ……気配を探られて警戒されたら元も子もない。人員は街の警備にまわせ、いいな」
セイメイ『はい……』

ドライブ「何かあったら発信機のスイッチを入れる、その時には頼むぞ」
セイメイ『了解しました……では、女らしくお願いしますね』
ドライブ「やかましい」


ドライブ「クソ……何が女らしく、だ!一生の屈辱だ!!」
『でも、すごく似合ってるよ』
ドライブ「似合ってたまるか!!」


ドライブ(ご丁寧にカラーコンタクトとやらまで入れおって……目がムズムズする……)


ドライブ(とりあえずヴァンパイアである事が気づかれぬように、力を抑えておかねば……というか、まず女性として見られない自信しかない…………ああクソ、なんだ このハイヒールという靴は……歩きづらいにも程がある!)


男性達「………………」


男性「おーい、そこの結婚式の空想にふけってそうな黒髪の姉ちゃーん!」
ドライブ(……っ、アイツら目が腐ってるのか!?)


長髪の男「悪いねー、ちょっと顔見せてくんなーい?」
ドライブ(……ヴァンパイアだな……しかし、ランクはどちらもレッサー程度……私が力を隠しているのにも気づいていない様子だ。しかし……事件に関わっているのか、ただのナンパなのか……判断がつかないな……)

短髪の男「うーん……どうだ?」
長髪の男「ちょっと目つき悪いかなぁ……あと、なんかちょっとゴツい」

ドライブ(ほら見ろ、厳ついって言われてるじゃないか!!)
『うーん、でも男にしては細い方だよ……もう少し食べて体重増やしたら?』
ドライブ(太らない体質なんだ、仕方ないだろう!)


短髪の男「いやー、でもよく見ろよ!目がパッチリしてる時は可愛いぞ!」
『良かったね、可愛いだって』
ドライブ(何も良くないわ)

短髪の男「あの人の美しいの基準よくわかんないしさ……とりあえずニヴ様の家に連れてこうぜ!」
ドライブ(……ニヴ……!?)
長髪の男「オッケー!!」


長髪の男「悪いな姉ちゃん!ちょいと眠っててくれや!!」
ドライブ(……何処かに連れて行くつもりか……術にかかって寝たフリを決め込むか)


短髪の男「よーし、寝たな。じゃ……早いとこ連れて行こうや」
長髪の男「まあ……どうせコイツも美しくないって殺されるだろうけど」
ドライブ(……先程コイツらが口にした“ニヴ様”……)



ドライブ(……まさか……な)