「たっ、頼む!もう魔法を悪いことに使ったりなんかしない!だから命だけは……」
「あー、悪いな……1人特例を認めたら秩序が乱れちまうし……後々面倒くさいし……」


「お前はやりすぎたんだわ……これは因果応報って事で諦めてくれ」


物心ついた頃から、オレは人を殺す為だけのマシーンとして育てられてきた。
人っつっても魔法使いだけだがな。

魔法使いはオカルトシムの中でも特に強力な力があって、力の使い方次第では世界のパワーバランスって奴が簡単に崩れちまうんだわ。
悪の魔法使いってのが現れたら、それこそ この世は混沌に呑み込まれちまう。


だから処刑人ってのが必要なんだ。
悪の根を摘む為の……な。

オレは魔法を悪用するバカどもを消してまわる処刑人として育てられた。
親の顔なんざ知らねえ、名前だって知らねえ。
教官に聞いても「くだらない事を聞くな」と一蹴されたもんだ。


「兄ちゃん、今日はスリフティー寄って帰ろうぜ!」
「ん……」


「しかたねーなー、付き合ってやるよ」
「やりぃ!今日はボクがタピオカ奢ってやるよー!」


(……家族、か)


オレには何もない。
家族も、友人と呼べる相手も何もいない。
指令を受けて魔法使いを殺してきて、指令が無い時には自己鍛錬や他の処刑人の訓練をする──それしかやる事がねえし、やってきてねえ。


今さら他の生き方や趣味を探す気にもなれなかった。
何事にも熱意が持てねえんだ。
生きることすら億劫に感じてきた。

何の為に殺しを続けてるのかも分からなくなってきた。
世界の平和の為?
別にオレ以外にも処刑人はいる、オレが頑張る必要もない。

それに世界にはオレの守りたいものなんざありやしねえ……どうでもいい奴らが生きてる世界なんざ どうでもいい。


いつしか世界が灰色に見えるようになってきて、オレは死んでるように生きていた。
生きる理由も無いが死ぬ理由も無い。
仕事を続ける中で自然に終わりが来る日を待ち続けていた。

そして、終わりが来そうな時が来た。


仕事を終えたが力を使い果たし、オレの体は限界を迎えていた。
オレは食いもので魔力と生命力をチャージする特異体質だ。

力を使い切ったらすぐに食いものを摂取しなくちゃならねえ。
だが、オレは指先一つ動かすことも出来ないほど弱りきっていた。


(…………あーあ……いつ死んでもいいとか、思ってたけどよ……いざとなったら……惜しいもんだな…………死にたく、ねえなぁ……)

本当に笑えるぜ。
死んでもいいと思ってたのに、いざ死が目の前に来たら怖気づいて生を望むなんてな。
その時だった。

「おい、アンタ大丈夫か!?」


灰色だった世界に、鮮やかで優しい緑色の光が差してきた。

 


ジール「……い!!おい、いつまで寝てるつもりだ!!さっさと起きろ、このヒモが!!」


リイヴ「あふぅ……朝っぱらから何だよジールちゃーん、まだ7時じゃんかよ」
ジール「もう7時だろ。アンタ、9時から死神の仕事だろうが。さっさとシャワー浴びて着替えて朝食を摂らないと間に合わないぞ」
リイヴ「あー、うん……ふわぁ、ねみい……」

ジール「夜ふかししてるからだぞ」
リイヴ「幽霊が視えるようになってパニクって寝れなかったんだわ……あー、最悪……」


ジール「ほら、おにぎりをしっかり食べて しっかり出勤して来い」
リイヴ「へいへい……つーかジールちゃん、さっきまたヒモって言ったよな?お兄ちゃん、もう働いてるからヒモじゃなくね?」

ジール「心意気がヒモだからな」
リイヴ「ひっでえなあ、オイ……やる気無くしちまうよぉ……」


ジール「まあ、そう不貞腐れるな。ちゃんと弁当も作っておいてやったから」
リイヴ「えっ、マジで?」

ジール「ああ……休憩時間の時にでも食べてくれ」
リイヴ「お、おう!ありがとよジールちゃん」


リイヴ(……弁当を用意してくれる家族、兄弟……か。やっぱり、いいもんだな……独りじゃないってのは……)


9時になったので、リイヴおじの死神の仕事が始まりました!
死神キャリアはプレイヤーもついていく事が出来るタイプのお仕事です。
勿論ついていきますよ!


やってきたぜ、死神局。
リイヴおじはまだまだ新人のペーペーですが、任務が入れば死神の仕事として刈り取りにもいけるとか。

とりあえず最初はタスクをこなしていきましょうね。


リイヴおじの死神衣装。
意外と似合ってますね。
なんか胡散臭い行商人みたいで。


リイヴ「はいはい、期待の新人リイヴ様のご出勤ですよー……っと。やれやれ、死神局ってのは相変わらず辛気臭いねえ」


リイヴ(確か、出勤したら まずは上司に挨拶しろってナナイに言われてたな……めんどいけど行くかぁ)


リイヴ「ふいー、どっこらせっと。よおアンタが上司かい?今日から世話になるリイヴ・アンドだ、まあ宜しく頼むわ……」
青年「……………」
リイヴ「人の話聞いてんのかぁ?」

青年「……お前がリイヴか」
リイヴ「だからそう言ってんだろ」


青年「お前が処刑人だった頃の話はよく知っている……力も強く、優秀だったのに……ある日突然全てを投げ出して飛び出していったんだとな。才能の無駄遣いというやつだな」
リイヴ「……お前、魔法の国のもんか?」
青年「俺も元処刑人だ」

リイヴ「ほーん……お前さんも処刑人をやめて、こんな辺境の冥界で死神の仕事してるんだから おいたんと一緒じゃん?偉そうに無駄遣いとか言えた義理かよ」
青年「……俺は好きこのんで ここに来たわけじゃない。処刑人としての自分に誇りがあった……お前と一緒にするな」

リイヴ「手厳しいねえ、若僧の分際で」
青年「若僧だろうが ここでは俺がお前の上司だ……命令には従ってもらうぞ」


青年「……ここの局長を任されているツキカゲ・クロトだ。さっさと力を付けて一人前の死神になることだな……」


リイヴ「……んで、オレはまず何をすりゃいいわけよ?訓練か?」
クロト「お前ほどの魔力の持ち主に訓練など必要ない……最初から本番だ。1階にある予言の器を使え、そうすれば間もなく命を落とす者の情報が手に入る。まずはそいつの魂を刈り取ってこい」
リイヴ「へいへい……」


リイヴ(はあ……これから死ぬ奴らの情報か……まったく気が滅入るぜ……)


リイヴ(けど……オレが死神として力を付けなきゃジールちゃんまで死んじまうんだ……アイツがいなくなったら、それこそ生きている意味がない……それにアイツと心中する趣味もねえ……オレはジールちゃんには長く長く、生きてほしいのよ……その為にも、やらねえとな……)

 


リイヴ(ここか……死の現場は)


リイヴ(で、死んでるのはコイツかぁ……過労死ってとこかね。まったく……生きる為に働いて働いて、それが原因で死んじまったら本末転倒だっての……)


リイヴ「んじゃ、仕事なんでな……その魂貰うぜ」
『……連れて行かないでくれ……見逃してくれ……』
リイヴ「あぁ?」


『私が死んだら、家族を養うものがいなくなる……頼む、連れて行かないでくれ……!』
リイヴ「……………」


リイヴ「……アンタは死んだんだよ、おいたんが ここで刈り取らず見逃しても、霊になって彷徨い続けるだけだ」


リイヴ「一度失った命はもう戻りゃしねえ!!今ここで刈り取られるのはアンタが自分の限界を見誤った結果だ!!みっともなく足掻くな!!」


『ああぁ、やめっ、やめて』


リイヴ「……ああ、クソッ……後味が悪い……だから嫌いなんだよ……命のやり取りをする仕事はよぉ……!!」

 


 死神局



リイヴ「ウゲッ、ゲエエェ……!!」
死神A「あの新人のオッサン、めっちゃ吐いてんなぁ」
死神B「慣れるまでは仕方ないよー、オレも最初は吐きまくってたし!死人の魂ってこっちの情緒壊してくるもんね。刈り取る度に強い感情ぶつけられて、うきゃーって感じ!」


リイヴ「はー、はー……」

リイヴ(クソ……生きてる奴を殺すよりマシかと思ったら……こっちはこっちで最悪だ……!しかも久々なもんだから……余計に“キタ”)


リイヴ(これから毎日……こんな事を続けなきゃならないってワケかよ…………イヤだ……もう疲れたんだよ、こういう事をしたくないからオレは飛び出してきたんだよ……なのに、また……また、こんな……)


リイヴ(…………いや……弱音なんざ吐くな……ジールの為なんだ……オレがやらなきゃジールもオレも死ぬ……ジールの為ならやるって決めただろうが……)


リイヴ(オレにはアイツしかいない……一度は手離しちまったのに、アイツはまた戻ってきて家族になってくれた。今度はもう絶対に離さない。オレの弟……オレの光……)




リイヴ「ふぅ……」
クロト「戻ってきたのか、意外と遅かったな」

リイヴ「うるせえ……てか、なんで仕事着脱いでんだよ。サボりか?」
クロト「やることはやったのだから今日はもう退勤だ。お前も刈り取りが終わっただろう、帰って良いぞ」
リイヴ「……死神の仕事ってのは随分ヌルいんだな」


クロト「……死を扱う仕事というのは精神を強く蝕む。お前も実際に1回の刈り取りだけで“あてられて”しまっただろう」
リイヴ「…………まあな」

クロト「だからウチではタスクを終え次第、帰って良いことにしているんだ。精神的安寧の為にな。毎日毎日長時間 死に触れ続けるのは……危険だからな」
リイヴ「……お優しいこった。そんじゃ、お言葉に甘えて帰るとしますかね……」

 


 スラニ



リイヴ「ジールちゃん、ただいまー」
ジール「ああ、おかえり……というか早かったな。17時まで仕事じゃなかったのか?」

リイヴ「あー、やることやったら帰っていいっていうアットホームな職場だったわ」
ジール「死神って意外と緩いな……」


ジール「まさか昼時に帰るなんてな……弁当が無駄になったか」
リイヴ「無駄じゃねーだろ、今から昼飯として食えば良い話だ」

ジール「まあ確かに……俺もずっと執筆してたし、休憩がてら一緒に昼食を摂るか」
リイヴ「おう」


リイヴ「なあ、ジールちゃん……ちょっとハグしてもいいか?」
ジール「は?なんで?」

リイヴ「兄弟がハグするのに理由がいるのか?」
ジール「いや、まあ、いらないが……急にどうしたというか何というか……」


リイヴ「ああもう、ゴチャゴチャうっせえなあ!たまには お兄ちゃんに甘えたらどうだよ、ん!?」
ジール「うわっ……わかったわかった、というか力入れすぎだろ!痛いんだが!?」


ジール「……職場で何かあったのか?」
リイヴ「いんや、なーんもない。ただクッソ生意気な年下の上司にイライラしただけだわ」
ジール「そうか……」


リイヴ(帰ったら家族が出迎えてくれて、他愛もない話をする……この日常と家族を守る為だ……オレは……やってやんよ)