「あー、悪いな……1人特例を認めたら秩序が乱れちまうし……後々面倒くさいし……」
人っつっても魔法使いだけだがな。
魔法使いはオカルトシムの中でも特に強力な力があって、力の使い方次第では世界のパワーバランスって奴が簡単に崩れちまうんだわ。
悪の魔法使いってのが現れたら、それこそ この世は混沌に呑み込まれちまう。
悪の根を摘む為の……な。
オレは魔法を悪用するバカどもを消してまわる処刑人として育てられた。
親の顔なんざ知らねえ、名前だって知らねえ。
教官に聞いても「くだらない事を聞くな」と一蹴されたもんだ。
「ん……」
「やりぃ!今日はボクがタピオカ奢ってやるよー!」
家族も、友人と呼べる相手も何もいない。
指令を受けて魔法使いを殺してきて、指令が無い時には自己鍛錬や他の処刑人の訓練をする──それしかやる事がねえし、やってきてねえ。
何事にも熱意が持てねえんだ。
生きることすら億劫に感じてきた。
何の為に殺しを続けてるのかも分からなくなってきた。
世界の平和の為?
別にオレ以外にも処刑人はいる、オレが頑張る必要もない。
それに世界にはオレの守りたいものなんざありやしねえ……どうでもいい奴らが生きてる世界なんざ どうでもいい。
生きる理由も無いが死ぬ理由も無い。
仕事を続ける中で自然に終わりが来る日を待ち続けていた。
そして、終わりが来そうな時が来た。
オレは食いもので魔力と生命力をチャージする特異体質だ。
力を使い切ったらすぐに食いものを摂取しなくちゃならねえ。
だが、オレは指先一つ動かすことも出来ないほど弱りきっていた。
本当に笑えるぜ。
死んでもいいと思ってたのに、いざ死が目の前に来たら怖気づいて生を望むなんてな。
その時だった。
「おい、アンタ大丈夫か!?」
ジール「もう7時だろ。アンタ、9時から死神の仕事だろうが。さっさとシャワー浴びて着替えて朝食を摂らないと間に合わないぞ」
リイヴ「あー、うん……ふわぁ、ねみい……」
ジール「夜ふかししてるからだぞ」
リイヴ「幽霊が視えるようになってパニクって寝れなかったんだわ……あー、最悪……」
リイヴ「へいへい……つーかジールちゃん、さっきまたヒモって言ったよな?お兄ちゃん、もう働いてるからヒモじゃなくね?」
ジール「心意気がヒモだからな」
リイヴ「ひっでえなあ、オイ……やる気無くしちまうよぉ……」
リイヴ「えっ、マジで?」
ジール「ああ……休憩時間の時にでも食べてくれ」
リイヴ「お、おう!ありがとよジールちゃん」
死神キャリアはプレイヤーもついていく事が出来るタイプのお仕事です。
勿論ついていきますよ!
リイヴおじはまだまだ新人のペーペーですが、任務が入れば死神の仕事として刈り取りにもいけるとか。
とりあえず最初はタスクをこなしていきましょうね。
意外と似合ってますね。
青年「……………」
リイヴ「人の話聞いてんのかぁ?」
青年「……お前がリイヴか」
リイヴ「だからそう言ってんだろ」
リイヴ「……お前、魔法の国のもんか?」
青年「俺も元処刑人だ」
リイヴ「ほーん……お前さんも処刑人をやめて、こんな辺境の冥界で死神の仕事してるんだから おいたんと一緒じゃん?偉そうに無駄遣いとか言えた義理かよ」
青年「……俺は好きこのんで ここに来たわけじゃない。処刑人としての自分に誇りがあった……お前と一緒にするな」
リイヴ「手厳しいねえ、若僧の分際で」
青年「若僧だろうが ここでは俺がお前の上司だ……命令には従ってもらうぞ」
クロト「お前ほどの魔力の持ち主に訓練など必要ない……最初から本番だ。1階にある予言の器を使え、そうすれば間もなく命を落とす者の情報が手に入る。まずはそいつの魂を刈り取ってこい」
リイヴ「へいへい……」

リイヴ(けど……オレが死神として力を付けなきゃジールちゃんまで死んじまうんだ……アイツがいなくなったら、それこそ生きている意味がない……それにアイツと心中する趣味もねえ……オレはジールちゃんには長く長く、生きてほしいのよ……その為にも、やらねえとな……)
『……連れて行かないでくれ……見逃してくれ……』
リイヴ「あぁ?」
リイヴ「……………」
死神A「あの新人のオッサン、めっちゃ吐いてんなぁ」
死神B「慣れるまでは仕方ないよー、オレも最初は吐きまくってたし!死人の魂ってこっちの情緒壊してくるもんね。刈り取る度に強い感情ぶつけられて、うきゃーって感じ!」
リイヴ(クソ……生きてる奴を殺すよりマシかと思ったら……こっちはこっちで最悪だ……!しかも久々なもんだから……余計に“キタ”)
クロト「戻ってきたのか、意外と遅かったな」
リイヴ「うるせえ……てか、なんで仕事着脱いでんだよ。サボりか?」
クロト「やることはやったのだから今日はもう退勤だ。お前も刈り取りが終わっただろう、帰って良いぞ」
リイヴ「……死神の仕事ってのは随分ヌルいんだな」
リイヴ「…………まあな」
クロト「だからウチではタスクを終え次第、帰って良いことにしているんだ。精神的安寧の為にな。毎日毎日長時間 死に触れ続けるのは……危険だからな」
リイヴ「……お優しいこった。そんじゃ、お言葉に甘えて帰るとしますかね……」
ジール「ああ、おかえり……というか早かったな。17時まで仕事じゃなかったのか?」
リイヴ「あー、やることやったら帰っていいっていうアットホームな職場だったわ」
ジール「死神って意外と緩いな……」
リイヴ「無駄じゃねーだろ、今から昼飯として食えば良い話だ」
ジール「まあ確かに……俺もずっと執筆してたし、休憩がてら一緒に昼食を摂るか」
リイヴ「おう」
ジール「は?なんで?」
リイヴ「兄弟がハグするのに理由がいるのか?」
ジール「いや、まあ、いらないが……急にどうしたというか何というか……」
ジール「うわっ……わかったわかった、というか力入れすぎだろ!痛いんだが!?」
リイヴ「いんや、なーんもない。ただクッソ生意気な年下の上司にイライラしただけだわ」
ジール「そうか……」